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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマトバレンタイン

    #ガンマト
    cyprinid

    オレの この甘ったるい季節がまたやってきた。マトリフは街を歩きながら、赤やら茶色の飾り付けを見る。並ぶチョコレートとその芳香が、準備は大丈夫かとお節介を焼いてくるように思えた。
     正月がついさっき終わったと思ったら、もうバレンタインだという。そう同僚に溢せば「歳を取ると時間の経過を早く感じるそうですよ」と笑われた。ついでに「今年も楽しみですね」と付け加えられ、バレンタインの話題を振ったことを後悔した。
     楽しみですね、と言われた通り、マトリフは今日を楽しみにしていた。今年はバレンタインが平日であるからお互いに半日休を取るくらいには浮かれている。待ち合わせを街の有名な待ち合わせスポットに指定したのはマトリフだ。
     春の兆しが漂いはじめた街は、バレンタインだからといってお祭り騒ぎにはならない。チョコで飾られた店の前を無関心に通り過ぎる人も多い。「最近は義理チョコも減りましたからね」と言った料理好きの同僚は、それでもマトリフの鞄に手作りチョコを押し込んできた。毎年毎年、マトリフの好みを把握した甘みの少ないチョコレートを丁寧にこさえてくる。
     昼間だからか、昼食を求めに出歩く人が多かった。待ち合わせ場所までもうすぐだ。時間に遅れることは絶対にしない奴だから、もう到着しているだろう。
     角を曲がれば待ち合わせ場所が見えた。その姿は一目でわかる。背が高いと待ち合わせに便利だと苦笑していたが、確かによく目立つ。だが目立つのは体格のせいだけではなかった。
     マトリフはその姿を見て思わず笑みを浮かべる。
     ガンガディアは花束を持って立っていた。
     筋骨隆々で頭を丸め、タトゥーが肌を彩り、金のピアスが耳に光っている。その近寄りがたい見た目の男が花束を持っている。周りの人々も時折りガンガディアへ視線をやっては、いったいどんな人が待ち合わせに現れるのかという好奇心を隠せないでいた。
     マトリフはゆっくりとガンガディアのもとへ向かう。ガンガディアがマトリフに気付いてこちらを向いた。頬に柔らかい笑みが浮かぶ。
    「よ、色男」
     マトリフはガンガディアが持った花束を見る。五本の薔薇は、付き合った年数を表しているらしい。年々買う本数が増えていくそれを、どれほど増やしていけるだろうかとマトリフは思う。
    「これを君に」
    「あんがとよ」
     差し出された花束とチョコレートを受け取る。付き合い始めたときこそ、花束なんて受け取ることに抵抗があったものの、五年もすれば慣れてしまった。それどころか、ガンガディアが花束を持って自分を待つ姿を見るのを楽しみにするほどになっていた。そのためにわざわざ、マトリフは外での待ち合わせを指定している。
    「では行こうか」
     歩き出した途端に、二人に集まっていた視線がパッと散る。マトリフはほくそ笑んでガンガディアに腕を絡ませた。周りの遠慮がない視線がまたこちらを向く。
     こんないい男を独り占め出来るだぜ
     そんな優越感を滲ませながら、マトリフはガンガディアの隣を歩くのだった。




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    なりひさ

    DONEガンマト「時の砂」その後の蛇足。弟子に会いたくて未来へ来ちゃったバルゴート
    なにこれ修羅場じゃん ポップは焼きたてのパイを持ってルーラで降り立った。アバンの料理教室で作った自信作である。折角なのでマトリフと一緒に食べようと温かいうちに持ってきた。
    「師匠ぉ〜ガンガディアのおっさん〜お邪魔するぜ」
     呼びかけながら入り口をくぐる。しかしいつもなら返ってくる返事がなかった。人の気配はするのに返事が無いとは、来るタイミングが悪かったのだろうか。ポップはそろりと奥を覗く。
    「えっと、これどういう状況?」
     ポップは目の前の光景に頭にハテナをいくつも浮かべながら訊ねた。
     まずガンガディアがマトリフの肩を抱いている。優しく、というより、まるで取られまいとするようにきつく掴んでいた。ガンガディアは額に血管を浮かべてガチギレ五秒前といった雰囲気だ。そのガンガディアに肩を抱かれたマトリフは諦念の表情で遠くを見ている。そしてその二人と向かい合うように老人が座っていた。ポップが驚いたのはその姿だ。その老人はマトリフと同じ法衣を着ている。かなりやんちゃな髭を生やしており、片目は布で覆われていた。その老人がポップへと視線をやると立ち上がった。
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