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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ポップとマト

    ボウリング「ボウリングくらい知ってるよ」
     ポップは故郷の村の祭りでやったボウリングを思い出しながら言った。並べたピンに向かってボールを投げて転がし、ピンを多く倒すというゲームだ。
    「今からそれをやるぞ」
     マトリフは言いながら砂浜を歩く。ポップはそのあとに続いた。
    「それが今日の修行なのかい?」
     いつも地獄のような修行ばかりさせられているポップは疑心暗鬼で師の背中を見る。マトリフが楽しいだけの修行なんてするはずがないと確信していた。
    「……おまえ言ったよな。オレが出来ることは何でも覚えるって」
    「え? まあ言ったけど」
    「じゃあやってみせろ」
     マトリフは手にヒャドを作った。それをそっと足元へ置く。マトリフは同じように何個もヒャドを作っては砂浜に置いた。マトリフはそれが終わるとポップを指差す。
    「お前はもっと後ろだ。ああ、そこらでいい。そこからメラを作ってこれに当てろ」
     マトリフは置いたヒャドを指差した。
    「……どういうこと?」
    「ここにあるヒャドと全く同じ威力のメラを作ってぶち当てるんだよ。そうしたらメドローアになる。そうしたら残ったヒャドも消滅する。ボウリングみてえだろ?」
    「そんな物騒なボウリング聞いたことねえよ」
    「オレはこれを思いついて一発で成功させたけどな」
    「な……じゃ、じゃあやってやらあ!」
     ポップはさっそく手にメラを作る。マトリフは離れた位置までいくと腰を下ろした。
    「ってかこれ、どうやって向こうのヒャドの威力を測ればいいんだよ」
     通常のメドローアは両手で呪文を作って合成する。だが既にある呪文の威力は変えられない。しかも呪文は時間と共に少しずつ変化してしまう。
    「見りゃあ大体の威力はわかるだろ」
    「メドローアは大体じゃ合成出来ねえからだろ!」
     威力が違えばどちらかの呪文が消滅するだけだ。ポップは置かれたヒャドを見ながら手のメラの威力を調整する。それは落下する針の穴に糸を通すような難しさだった。
    「よぉし!」
     ポップは納得するまでメラの威力を調整してからヒャドに向かって撃った。だが途中でこれは失敗だとわかる。海風に吹かれてメラの勢いが想像以上に落ちてしまったからだ。
     結果はやはり失敗だった。メラはヒャドにかき消されてしまった。
    「……こんなの出来るかって!」
     ポップはマトリフに向かって吠える。するとマトリフは手にメラを作った。それをヒャドに向かって撃つ。メラは真っ直ぐに飛んで、ヒャドにぶつかった。まばゆい光が生まれる。
     砂浜にぽっかりと穴が生まれた。それを見てポップは目を見開く。
    「まあ、夕方までは待ってやる」
     マトリフはごろんと寝転ぶと大きくあくびをした。まるで期待されていない様子にポップの繊細なプライドは刺激される。
    「……やってやらあ!」
     ポップは腕まくりをして声を上げた。
     それからどれほど時間が経っただろう。夕陽が海の向こうに沈んでいく。ポップは肩で息をしながらメラを手に作っていた。もう何百発撃ったかわからない。しかしそのどれもが失敗だった。
     マトリフはいびきをかきながら昼寝している。ポップは恨みがましそうにその姿を見た。
    「……どうせおれは天才じゃねえよ」
     ポップは垂れた鼻水を啜る。何百回失敗しても出来ないのなら、何千回とやるしかない。天才ではない自分に出来るのは、諦めずに出来るまでやることだけだった。
     ポップはヒャドを睨め付ける。気温や風、飛ばす速度を想定して威力を合わせたメラを作り上げる。
    「いっけぇええ!!」
     ポップはメラを投げつけた。それはヒャドをぶつかって光を放つ。その眩さにポップは目を丸くさせた。
    「え……」
     砂浜にぽっかりと穴が開いた。それはメドローアの成功を意味していた。
    「やったじゃねえか」
     いつの間にか起きたマトリフがニヤリと笑みを浮かべていた。ポップは汗を拭ってマトリフに向き直る。
    「見てたか師匠!」
    「マジでやるとはなあ。ダメもとで言ったんだが」
    「はあ!?」
     マトリフの言葉にポップは口が塞がらない。マトリフはやる気のない様子で立ち上がると法衣についた砂を払った。
    「いやあ、やっぱおめえはすげえよ」
    「ダメもとってなんだよ師匠!」
    「その穴は埋めとけよ」
     マトリフは言って洞窟へと歩いていく。ポップは釈然としない気持ちで砂を蹴った。

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