last call【最終案内】 そいつは突然目の前に現れた。
「おう、先に始めてんで」
ヴァッシュは部屋に一歩入って、その声の主を目にした途端固まった。一瞬遅れて今自分が開いたドアを背に勢いよく後退る。バン! と強かドアに背中を打ち、その衝撃に見ているものが夢ではないことを知る。
シングルの部屋、簡素なベッドのそばに置かれたテーブルでウイスキーのボトルを空けているのは、かつての友である。長い脚を組み、テーブルに肘をつく黒いスーツ姿。指に挟んだ煙草は紫煙を燻らせ、漂ってくる香りも間違いなく彼が好んでいた銘柄だ。
「なんや、ユウレイでも見たような顔やな」
こちらを見てにやりと笑う。その表情も、彼そのものだけれど。
いやおまえ、
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