午前二時、思案の外3「年々欲求が強くなってくる傾向にありますね。抑制剤のレベルを安易に上げてしまうと抑圧された反動でさらに強くなってしまう恐れも高く、副作用の懸念もある。それよりDomのパートナーを見つけて欲求を満足させた方が落ち着きますよ。どうですか?」
全日本選手権のあと、抑制剤が効きにくくなった司に医師が言った言葉だ。
その頃、司はこれまでに感じたことのない飢餓感のような欲求が湧いてくることに参っていた。
処方箋と一緒に渡されたのはDomやSub向けのマッチングアプリの案内で、「国が運営している安心安全なサービスです、あなたにハッピーな出会いを!」という軽い謳い文句を横目に見ながら財布の中身と天秤にかけた。前よりも強い抑制剤は目玉が飛び出るほど高かった。常用はしないで、どうしてものときに使ってくださいね。などと言われずとも大事に使うほかない。
しかし、やり場のない欲求が心身に影響をきたし、アイスショーのオーディションには落ちまくった。ダイナミクスの所為にはしたくないが、背水の陣であることは確かだった。ついに司はマッチングするDomを探し始めた──のだが。
何が安心安全なものか、得たのはDomなど一生信じないという強い警戒感とパートナー関係を結ぶことなど今後一切ないという決意だった。
ダイナミクスは本能のものだというが、だからといって言いなりになる気はない。
スケートがやりたい、その一心で氷の上に立つ子供たちのことを司は手放しで褒める。心から支えたいし、尊敬もしている。しかし自分が褒められたいとは思わない。
そう、コーチという立場になったことでより強く司は心に誓った。ホルモンなんかに踊らされ、誰かがいないと自分の欲求を解消できないような人間が、未来に瞳を輝かせる子供を導けるはずがない。
──などと言いながら。
夜鷹に闇討ちされたような短い強制プレイのあとから二日目、司は自分自身を信じられなくなっていた。
基本的に体力のある司はトレーニングをすることで心身の健全をギリギリ保っていた。少しでも欲求が上回れば飲み込まれてしまうほどの効果だが、氷の上にいるときやコーチの役割に没頭することができる。それでも最近はコントロールの効かない日が頻発して困っていたのだが──あの夜から体も精神も、すこぶる快調なのだ。
認めたくはないが、これは本能があのプレイに満たされたということなのか。理由のない多幸感と高揚感で、羊や加護に「司くん、何かすっごくいいことあった?」などと聞かれるほどである。
すっごくいいこと、ならよかったんだけどなぁ……。
思い返せば思い返すほどムカつくことしか出てこないが、どうして自分の本能というやつはそれで喜んでいるのだろう。理解しがたい。
ここ二日は深夜の工事現場に夜鷹が現れることもなく、司は半ばホッとしたり、無意識に黒い影を探してしまう自分に喝を入れたりしながら誘導灯をブンブン振っていた。
面白そうだとか、また次はとか言っておいてあの人は結局興味を失ったのかもしれない。なんて自分勝手なひとだろうと思いつつ、実際興味など持たれないほうがいいに決まっている。無意味な見物をやめてくれたのであれば、金メダリストが通報される心配もないのだし。
いつもの二倍の速さで誘導灯を振りながら、司は頭の中の余計なものを丸めてかなぐり捨ててやることにした。
やっぱりあの人だって、司がこれまでに出会ってきたSubを玩具のように扱うDomと変わらないのかもしれない。
不幸な事故に遭ったと思って忘れよう。他にも考えなければならないことはたくさんある。これから足を伸ばしていろいろなクラブを尋ねるつもりだし、己のコーチ力を高めるための研鑽を積まなければならない。そのために貰った時間なのだから、あんな気まぐれ男に関わっている暇はないのである。
鴗鳥慎一郎から連絡があったのは、ちょうど夕食を作り終えたところだった。
腰の低いメダリストの話は最早恒例となった「理凰をお預けした件では……」という丁寧な礼から始まり、「それで、明浦路先生にはご迷惑かもしれないのですが」と戸惑いを見せつつ続いた。
「レオが先生にぜひ会いたいと」
「そんな、迷惑なんかじゃ」
ん? 待て。
レオ……?
司はつい「リオウ」と聞き間違えたのかと思って返事をしたが、違和感を感じて首を捻った。「レオ」にも聞き覚えがあるからだ。
「鴗鳥先生、レオって──」
「振付師のレオニード・ソロキンです。突然会いに来たと思ったら先生に連絡してくれとせっつかれまして……。でもよかった、ちゃんと面識はあるのですね」
「あ、いえあの、」
全日本ノービスでの悪夢のような一幕が蘇る。かなり一方的なコミュニケーションだったし、面識といえるものではない。正直天才振付師の印象よりも通話画面越しに見た夜鷹の方が記憶に残っている。
「すぐに帰国するようなのですがどうしても会いたいと──お忙しいと思うので、無理なら私から断っておきますから」
ひとのいい慎一郎の手を煩わせるのが申し訳なく、司は明日なら会えると答えた。どことなくほっとしたような声で丁寧に礼を言われる。どうやらよほど迫られたらしい。お互い恐縮し合いながらようやく電話を切る。
司だって夜鷹や狼嵜光のパフォーマンスを一段と際立たせたマジックのような振付に興味がないわけではない。そんな話が聞けるなら自分からぐいぐい食いつくだろう。
でも、何か──引っかかるのは、自分の自信のなさが原因なんだろうか。
少なくとも人柄的にはあまり親しくなりたくないタイプだ。
熱々のシチューを皿に盛り付けながら、司は難しい顔でため息をついた。
*
待ち合わせに指定されたのはホテルのラウンジだった。彼が宿泊しているホテルはさすがの佇まいで、踏み心地のいいカーペットの上を歩きながらいつもの格好で来てしまったのを司はやや後悔した。
ホテルのロビーを進み、中庭を望むドーム状のガラス張りの窓に沿った一画に到着する。入り口で待ち合わせをしていることを伝えたら、窓際のソファ席から手を振る人影が見えた。
「ツカサ!」
ノービスの会場では注目されなくて嘆いていた彼だが、このような場所ではさすがに目立つ。すっきり着こなしている洒落たスーツは均整のとれた長身にとても似合っているし、立ち姿からして美しい。
司はスマートフォンをサッと取り出して翻訳アプリをタップした。挨拶くらいはできるが、込み入った話は聞き取れない。
フレンドリーな笑顔で握手をしたあと、向かいの席を勧められて腰掛ける。午後の陽射しに揺れる木の葉の影がテーブルの上に落ちていた。
〈急に呼び出してすまないね〉
ゆったりと足を組んで座る男は、なんとも言えない優雅な雰囲気を纏っていた。豊かな表情が整った容貌を柔らかく見せていて、所謂「喋らなければいい男」の部類だ。ある意味夜鷹と似ているかもしれない。
「……俺に何か」
言いかける司に、レオニードはにっこりと笑いかけた。
〈そんなに堅苦しくしなくてもいいよツカサ! 単にきみに会いたかっただけさ。何たってきみはこの僕の尊さを理解する教養あるファンだからね〉
流暢な英語で捲し立てられて翻訳が間に合わないが、だいたいこのようなことを言っている。
……と思う。司は「はぁ」としか合槌を打てない。
彼はあのノービスの会場で、「狼嵜光に魔法を授けた」と言った。
彼女の演技は今も尚脳裏に浮かび、心を覆う薄氷に鋭いエッジでその痕跡を刻みつけてくる。美しく繊細で、残酷な魔法をかけた天才振付師は、賞賛の言葉を聞きたくて呼んだのだろうか。
しかし予想に反してレオニードは司に何か聞いてくることはなく、ひたすら自分の素晴らしさを滔々と語り出した。何だこの時間。
気持ちよく自分語りに満足したらしいところで、彼はパッと人懐っこい笑顔を見せて話の矛先を司に向けてきた。
〈聞いたよ、きみのこと。純が珍しく興味を示したんだって? 素晴らしいじゃないか。慎一郎もベタ褒めだったよ!〉
「いや、それは──」
とても大仰に評価してくれるのは有難いが、慎一郎の場合は息子の理凰を預かったことが多分に影響している。贔屓なんてする人ではないが、何しろ人格者なのだ。
夜鷹に至っては、それはもう司にはわからない。というかその話聞きたくない。
〈ツカサはアイスダンスをやっていたんだってね。僕も一度見てみたいよ。きみが──氷の上でどう豹変するのか〉
「……っ!」
レオニードが眉尻を下げてうっそりと微笑む。眸に宿った一瞬の輝きに、びくっと体が硬直する。
グレアだ。
この人──Domだったのか。
『あれ? 失敬、随分敏感なんだね。この間会ったときはそうでもなかったのに』
司の様子を見てレオニードはすぐにグレアを解いたが、背筋が震えて止まらない。ぎゅっと手のひらを握り込んでみるが、全く力が入らなかった。
──ムカムカする。
あの人のときと違う。
夜鷹のときは、もっと、
『大丈夫かい? 顔色が悪いよ』
立ち上がったレオニードが近寄ってきて覗き込んでくる。
「だ、だいじょう……」
長身を見上げれば、心配そうな表情の下に──やはり、さきほど過った光が潜んでいる気がして背中がぞくりとした。
『待ってて』
労わるように司の肩を摩って、彼は近くのスタッフに声を掛けに行った。司は静かに呼吸を繰り返し、込み上げてくる吐き気を落ち着かせる。テーブルの上に木漏れ日がちらちらと騒めいていた。
暫く部屋で休憩していくといい、とレオニードに連れて行かれたのは広めのシングルルーム。ベージュを基調とした内装はシンプルながらも上品で、大きめのベッドとソファがどんと置かれていた。司の知っているシングルルームと規模が違う。こんな広いところで休めと言われても休めるわけがない。
「やっぱり帰ります……」
『ダメだよ。きみをそんな状態で返したら僕が怒られる』
もう翻訳アプリを通していないので司にはぼんやりとしかわからないが、とりあえず帰るのはダメらしい。それでもベッドはどうにか拒否して、ソファで休ませてもらうことにした。
レオニードは備え付けの冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出し、グラスに注いで司の前のローテーブルにことりと置く。
「Thanks……」
彼は司の隣に座り、自分の端末を手にした。司が見えるように画面を向けてくる。
〈きみがSubであることは気づいていたけど、そんなにグレアの影響が出やすいとは思っていなかったんだ。ごめんね。どんな反応をするか見てみたくて〉
どうしてDomという奴はこう、勝手に仕掛けてくるんだろうか。
数日前の怒りをなぞられているようで謝られても釈然としなかった。いや、あの人は謝りすらしなかったが。
〈きみのそれ、拒否反応に見えるね。それじゃあ大変だろう。相性のいいパートナーはいるのかい?〉
司はグッと顔を顰めたが、ゆっくり首を横に振った。グラスを手に取り、ありがたく水を飲ませてもらうことにした。ほのかな甘みがあってミネラルウォーターではないのかとふと思ったが、冷えた喉越しにホッと息をつく。
〈ジュンとはしたの?〉
グラスの水を飲み干したところで飛び出してきた質問に、思わず「げほっ」と咽せそうになった。なんだそのちょっと卑猥な聞き方。
大丈夫? と背中を摩られながら「……ちょっとだけ」と答える。
『ふむ……。"ちょっとだけ"、ね』
レオニードは顎に手を添えて考えるような仕草をした。
彼がグレアを引っ込めてから随分経ち、司も楽に呼吸ができるようになった。が、そばにいるとどうしても落ち着かない気持ちになるのは、──これが本能というものだろうか。
〈彼はDomだけれど、超人的なところがあるからね。ダイナミクスなんて彼にとったら取るに足りないものなんだろうと思ってたよ〉
取るに足りないもの。
レオニードの言う通りだ。
自分にそんな欲求はないと思っていた、と夜鷹は言った。面倒だとも。
そう、「思っていた」──と、言ったのだ。
〈きっと、それは違うDomからの支配を体が拒んでいるんだ。ジュンとは相性がいいんだね〉
「そ、んな、ことは──」
相性がいい? まさか。
ふと最近の好調具合が頭を過ぎる。いやいや有り得ないだろう。
急にカッと顔が熱くなってきて、司はレオニードに見られないように顔を背けた。顔だけじゃない。鼓動がとくんと打つたびに身体の熱が上がってくる。
〈でもパートナーじゃないんだろ? きみは、きみのためにいろいろなDomと経験しておいた方がいい〉
「は、」
思わず横を振り向くと、こちらを見つめる目と視線が合った。
にこっと邪気のない笑い方をする。
〈僕もね、決まったパートナーを持たないんだ。そっちの方が楽しいし〉
「え」
〈きみみたいな、堅そうな子にも興味がある。意外とハマったら凄そうだよね〉
…………何の話⁉︎
鈍い司にも、これはやはり直ちに帰った方がいいパターンだと勘が働いた。さすがに二度目だ。学習もする。
「すみませんが、俺はそういうことには興味がないです」
よし、きっぱり言った。
体は何だか変な感じがするけれど、グレアの影響が薄れてきた今なら帰ることができる。
「せっかく呼んでもらったのに申し訳ないですが、今日は失礼し、」
『──"跪け"』
立ち上がろうとしたところで、がくん、と一気に力が抜けた。
「……っ!?」
がくがくと足が震える。
なに……、何だこれ、
体が痺れて言うことを聞かず、レオニードが発したコマンドに何の抵抗もなく従おうとする。その足もとに寄り添う形で絨毯じきの床に膝をついた。
──なんで?
見たところ、彼はグレアを発していない。コマンドだけでSubをどうにかできるなんて、よほど強いDomでなければできないと聞いたことがある。
『ほらね、やっぱりとてもいい。僕がきみの本能を解放してあげる』
褒められている、のかもしれない。でも嬉しいとは感じない。声がどこか遠くに聞こえる。それに体の内側が火照るような気がして、呼吸がどんどん競り上がってくる。酒を飲んだわけもないのに、皮膚の下を通る血液がすごい速さでどくどくと流れていくのを感じる。
『ツカサ、"おいで"』
撫でるような声が聴覚を奪う。どくん、どくんと高鳴る心臓。レオニードの足の間に割って入り、彼の膝に手を伸ばす。
『"もっと"』
「……っ、」
コマンドが重なるたびに、意識がふわりと緩んでくる。
だめだ。ダメだ。
そう思うのに、腹の底から湧き上がるような昂りに抗えない。
彼の背中に両腕を回して抱きつくと、細めた眸で見つめられた。睫毛の影に、鈍い光がちらりと見える。
『そう、きっと僕たちも相性がいい』
「ぁ、……っ」
つい、と長い指が唇を指の肚でなぞっていった。ぞくり、もどかしさが腰に溜まる。
『いい子だ、"舐めて"』
中指で下唇を押し、人差し指を歯列の間に割り入れようとする。
──こんな、
こんなこと、
拒みたいのに、頭がぼうっとして、熱い。明確に興奮している自分に司は涙目になった。少し開いたくちのなかに侵入してきた指を舌で迎える。
「……っ、ふ、……ぁ」
『ああ、すごくあつい……ゾクゾクするよ。きみの口の中、気持ちいいだろうな』
指はまるで司の口腔内をたしかめるようにゆっくりと動いた。舌を絡ませていると喉の奥に唾液が溜まる。指をしゃぶるように嚥下すると、うっとりとした顔で見つめられた。
『ここも好き?』
歯列をなぞり、上顎をくすぐるように擦る。
そんなところ、ひとに触られたことなんかない。
口の中を好き勝手にされて、嫌な、はず。
なのに、
気持ちよくなんて、なったら、
そんな、おれは。
──ヴヴヴ、ヴヴヴヴ、
突如けたたましく鳴った音にハッとした。テーブルの上に置いた彼のスマートフォンが振動している。レオニードはそれを見て小さく呻いた。
司は彼の手が離れてようやくひと息つき、その場に力なくぺたんと座った。反応から見るといい相手ではないようだが、無視もできないらしく電話に出ている。
チャンスだ。
この隙に、部屋から抜け出せば──
『え、そうだけど……どうしたんだい? きみらしくないな、落ち着いて』
部屋の中をうろつき出したレオニードに背を向け、じりじりと入り口近くまで這っていく。なにしろまだ痺れが抜けなくて、走って逃げるのは無理そうだった。壁に手をつき、ようやく立ち上がる。
ずいぶん焦っている声が聞こえるが、こっちには好都合だ。
あと少し、あと少しで出られる──
『もしかして怒ってるのか? 僕は彼の気持ちを解きほぐそうと……、聞いてるかジュン!?』
──ジュン?
ドアノブを握り、解錠して押し開く。
回転する扉、開けた視界の中。そこに立つ、黒い影に息を飲む。
「……っ、な、んで」
いつもは物憂げな眸が鋭く射抜いてくる。ドアノブを掴んでいなければ、みっともなく座り込んでいたかもしれない。足が震える。
夜鷹の手元から部屋の奥で話している男の声が漏れている。彼は何も言わず無造作に通話を切ると、司の腕をグッと掴んで自分に引き寄せた。
『ジュン!? そこにいたのか!』
通話を切られて気がついたレオニードがバタバタと入り口まで駆け寄ってきた。
腕を夜鷹に掴まれたままの司はどうにも逃げられない。
どういう状況だ、これ……。
『──彼に何を盛ったの』
なんて?
司は彼の剣呑な声に目を瞠る。夜鷹の横顔は冴え冴えとつめたく感じる。
レオニードはハハハ!と眉を八の字にして笑い飛ばした。
『悪いものじゃないよ。Sub用に開発された薬だ。コマンドを受け入れやすくする上に性的欲求が増す優れたラブドラッグさ』
え、ドラッグって言った?
胸がヒヤリとした。
あの甘みのある水──まさか。
『僕が連れて帰る』
短く、しかし強い声に二人の間の空気が凍る。
司にも彼が何と言ったのかはわかったけれど、それどころではなかった。
『…………なるほどね、わかった』
レオニードは大袈裟にため息をつくと、場の雰囲気を無理矢理変えるように邪気なくニコニコ笑って手を振ってくる。
『またねツカサ! 今日はジュンに可愛がってもらいな』
ジュンに……何だって?
嫌な予感しかしないが、自分の腕を掴んだままの男はむっつりと嫌そうな顔で何も言わずにホテルの廊下を歩き始めた。半ば引き摺られてついていくが、司は転ばないようにするのがやっとだ。
「ちょ、……夜鷹さん! おれ、ひとりで帰れますから……」
と言い募っても怜悧な眸にギリッと睨みつけられる。グレアは感じないが、今はこれだけでも気圧される。本能ではなく、薬のせいなのか? コントロールできない自分自身が悔しくて、ぎゅっと下唇を噛む。
押しの強い振付師からは逃げられたけれど、これはこれで助かったとは言えない気もする。
一番の問題は、まだ身体の昂りがおさまっていないことなのだから。