Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    yaguruma_85

    @yaguruma_85

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🌹 🐣 🌱 👑
    POIPOI 14

    yaguruma_85

    ☆quiet follow

    巽さん誕生日サプライズに関するマヨイさん。
    マヨイさんはあのサプライズ賛成だったのかな…という邪推。
    半端に終わる。

    タッツン先輩の誕生日にサプライズをしたいんだけど。
     マヨイの教室まで一彩を引きずってやってきた藍良がそう口火を切ったのは十一月の最後の日──彼の誕生日からわずか三日後のことだった。
    「というと、何かアイデアがあるのですか?」
    「うん、あのねェ」
     ポケットから取り出したホールハンズのロックを外してトンとひとつ画面を叩くと動画が開いた。二人にプレゼンするために準備していたのだろう。
    「これは……巽先輩かい?」
    「ですねえ。でも……」
     そこに映っていたのは見たことがない衣装を身につけた巽だった。いや、確かに巽なのだが少しばかり幼い顔立ちをしている。
    「そう、ソロ時代のタッツン先輩。とりあえず聞いてみて」
     はい、と藍良に渡されたイヤフォンを一彩と分け合って装着する。教室のざわめきに混じってすっかり聞き慣れた、けれど聞いたことがない巽の声が流れてきた。ミディアムテンポの優しい歌だ。心地いい声に耳を委ねながら、マヨイは嫌な予感にぎゅっと口を引き結んだ。ちらりと見上げた藍良はわくわくと目を輝かせている。
    「でね、誕生日パーティーのときにおれたちでこの曲をやりたいなあって」
    「それはいいね!」
     やっぱり。予想通りの展開だけどその対応はすぐには浮かばない。楽しげに盛り上がる藍良と一彩に水を差すこともできず、マヨイは曖昧に笑った。



     藍良に送ってもらった動画を繰り返し流す。歌やダンスのメモをとりながらどうしようか頭の中で組み立てていく。手の動きは止まることなく、次々と浮かぶアイデアを矢継ぎ早に乱れた字で書き留めているが、頭の底の方には冷たいものが重く沈んでいた。
     結局、藍良のアイデアは採用された。マヨイはどちらかというと反対だった。巽は喜ばないかもしれないと、真っ先にそう感じられたから。でもそれはマヨイの憶測でしかなかったのではっきりと言うこともできないまま、一彩は藍良に賛同して、それでそういう流れになってしまった。
     マヨイが新たな振り付けとパート割りを考えて、練習は夢ノ咲学園で。巽だけが学校が違うのが思わぬ形で役に立った。部屋は違うとは言え星奏館内ではいつどこで見られるか分からないが、学園なら絶対に安全だ。長時間の居残りなどしたら気づかれる恐れがあるので個々で練習しつつ、休憩時間に全員で合わせる。そう計画をして、まずは第一段階としてソロのパフォーマンスを三人用に調整している最中だ。
     巽は喜んでくれるだろう。ひとの好意そのものを喜べる清廉なこころの持ち主なのだから、どんな贈り物だって喜びを持って受け取るのだろう。ソロ時代には色々と、なんだか厄介そうなことがあったようだから喜ばないのでは、なんてマヨイの考えすぎに違いない。いやらしい、邪なこころがそう思わせるのだ。
     そう思うのに、不安が喉に引っかかった魚の骨みたいにしつこく存在を主張する。忘れたくて作業に集中しようとしてもその作業自体が原因なのだからどうしようもない。
    (──あ、)
     サビの途中、見せ場というべき部分で一度動画を止めて少し前に戻す。何度か同じことをして、この部分は変えようとメモをして再び動画を再生した。
     他にも同じことをした部分がいくつかある。それは全て足に負担がかかるところだ。今の巽には好ましくない、少なくともマヨイはやってほしくないと思うところ。
     一通りの流れを整理したところで動画を閉じて、マヨイは溜め息をついた。ひどく気が重い。これからこのパフォーマンスの練習をしなければならないのだと思うとますます滅入る。そんなふうに思ってしまうこと自体が自分の矮小さの証拠のようで、どうしようもなかった。
     巽が喜ばないかもしれない、なんてただの卑怯な言い訳だ。巽の気持ちにかかわらず、マヨイが見せたくないだけだ。だから何かと理由をつけて、そういう振り付けは全て変えた。仮に今の巽に振りをつけるならこうはしない、と判断したところは全て問題ないように変えた。
     三人でやるからとか隠れて練習するには難易度が高いとか、藍良と一彩はきっとそれで納得するだろう。でも巽はマヨイの意図に気付くだろう。かつてのダンスと違う部分を並べれば自ずと浮き上がってくるのだから気付かないはずがない。そのうえで優しく笑ってありがとうと言ってくれるのだ。
     何故こんなことをするのか、マヨイは自分でもよく分からなかった。藍良と一彩には気づかれないだろう範囲で、巽には気づかれることを前提にしつつその優しさに期待して、まるで悪事を親に隠す子供みたいなことをしている。
    マヨイはこのころの巽を知らない。どんなアイドルだったのか、巽が何を思っていたのか、何も分からない。ただ見せたくない──今はもう選べないダンスを何の不安もなく踊る巽を。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭💞💞💞💞✨🙏✨💕💕😭👏🌋👏😭🙏❤😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    yaguruma_85

    DONEお題をいただいたngcgです
    プロポーズするngcg うえ、と千切が急に声を上げて、凪はゲームを一旦中断してどうしたのと声をかけた。気分が悪くなったのだろうか、そういう感じとはちょっと違った気がするけど。その予想通り、これ見てくれとスマホの画面をこちらに向けた千切は顔色が悪いこともなくいたって健康そうだ。ただそのきれいな顔を嫌そうに歪めているだけで。
    「なに、動画?」
    「そ、たまたま関連で出てきたから見てみただけなんだけどさ」
     千切が画面をタップして動画が始まる。街角のカフェのテラス席で一組の男女が仲良く話しながらお茶を飲んでいるという何の変哲もない日常の光景だ。これがどうしたんだと思っていたら、男女の他のお客さんたちが一斉に立ち上がった。何事、と女性の方は驚いていたが男性の方は平然としていて、それどころか彼も立ち上がって、そして何故か一斉に踊り出した。何コレ。座ったまま目を白黒させている女性を取り囲んで踊るってホラー? ダンスが終わったところですっとカフェ店員が近寄ってきた。トレーの上にはコーヒーではなく小さな花束と小さな箱。それを受け取った男性が女性の前に跪いて箱をパカッと開けると、そこには輝くダイヤがついた指輪。感極まった女性が涙しながらそれを受け取り二人は抱き合い、踊っていた人たちや店員、さらには通りすがりらしい人たちも拍手喝采……
    4733

    recommended works