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    yaguruma_85

    @yaguruma_85

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    yaguruma_85

    DONEお題をいただいたngcgです
    プロポーズするngcg うえ、と千切が急に声を上げて、凪はゲームを一旦中断してどうしたのと声をかけた。気分が悪くなったのだろうか、そういう感じとはちょっと違った気がするけど。その予想通り、これ見てくれとスマホの画面をこちらに向けた千切は顔色が悪いこともなくいたって健康そうだ。ただそのきれいな顔を嫌そうに歪めているだけで。
    「なに、動画?」
    「そ、たまたま関連で出てきたから見てみただけなんだけどさ」
     千切が画面をタップして動画が始まる。街角のカフェのテラス席で一組の男女が仲良く話しながらお茶を飲んでいるという何の変哲もない日常の光景だ。これがどうしたんだと思っていたら、男女の他のお客さんたちが一斉に立ち上がった。何事、と女性の方は驚いていたが男性の方は平然としていて、それどころか彼も立ち上がって、そして何故か一斉に踊り出した。何コレ。座ったまま目を白黒させている女性を取り囲んで踊るってホラー? ダンスが終わったところですっとカフェ店員が近寄ってきた。トレーの上にはコーヒーではなく小さな花束と小さな箱。それを受け取った男性が女性の前に跪いて箱をパカッと開けると、そこには輝くダイヤがついた指輪。感極まった女性が涙しながらそれを受け取り二人は抱き合い、踊っていた人たちや店員、さらには通りすがりらしい人たちも拍手喝采……
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    yaguruma_85

    DONEお題でいただいた🧛kicgの続きです。
    🧛kicg2 ハンター仲間にピアノを弾けるひとがいた。そのひとは千切より縦にも横にもひと回り以上大きくて、大きな背中を丸めて宿にある古びたピアノを弾いてくれた。その風体とは裏腹に奏でる音は優しくて、それがなんだかおかしくて会うたびに千切はピアノを弾いてくれとねだった。レパートリーは少なくて、どれも耳で聞いて覚えたから正しくないかもしれないし曲名も知らないと言っていた。曲名も正しい楽譜もどうでもよかった。ただそのひとのピアノが好きだった。
     千切がねだると少し困ったような、でも嬉しそうな顔をしてピアノを弾いてくれたあのひとはもういない。数年前に吸血鬼に殺されてしまった。



    「──……」
     ピアノの音が聞こえる。目に入ってきた見慣れない天井に、眠っていたのだと遅れて気付いた。普段泊まる宿とは明らかにランクが違う内装の天井、壁、そして寝心地のいいベッド。異常事態であると、それは把握できるのに焦りは生まれない。このままもう一度眠ってしまいたいくらいだったが、ここはどこだろうとゆっくりと視線だけを動かす。室内は薄暗く、小さなランプがいくつか灯っている。窓らしき場所には重厚なカーテンがぴったりと閉じられていて朝か夜かも分からなかったが、なんとなく太陽が出ている時間なような気がした。
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    yaguruma_85

    MOURNING巽さん誕生日サプライズに関するマヨイさん。
    マヨイさんはあのサプライズ賛成だったのかな…という邪推。
    半端に終わる。
    タッツン先輩の誕生日にサプライズをしたいんだけど。
     マヨイの教室まで一彩を引きずってやってきた藍良がそう口火を切ったのは十一月の最後の日──彼の誕生日からわずか三日後のことだった。
    「というと、何かアイデアがあるのですか?」
    「うん、あのねェ」
     ポケットから取り出したホールハンズのロックを外してトンとひとつ画面を叩くと動画が開いた。二人にプレゼンするために準備していたのだろう。
    「これは……巽先輩かい?」
    「ですねえ。でも……」
     そこに映っていたのは見たことがない衣装を身につけた巽だった。いや、確かに巽なのだが少しばかり幼い顔立ちをしている。
    「そう、ソロ時代のタッツン先輩。とりあえず聞いてみて」
     はい、と藍良に渡されたイヤフォンを一彩と分け合って装着する。教室のざわめきに混じってすっかり聞き慣れた、けれど聞いたことがない巽の声が流れてきた。ミディアムテンポの優しい歌だ。心地いい声に耳を委ねながら、マヨイは嫌な予感にぎゅっと口を引き結んだ。ちらりと見上げた藍良はわくわくと目を輝かせている。
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