【拗ねても可愛い貴方】※同棲
スマホゲームで遊んでると、よく降谷さんが話しかけてくる。
「風見、こういうの良くないか?」
今日は雑誌を片手に近づいてきて、僕の顔とスマホの間に雑誌を割り込ませて来る。狩りをしている僕としてはたまったものじゃない。
「ちょ、降谷さん! 今いいとこなんですから!」
あと少しでモンスターを倒せるという所で割り込んできた雑誌をサッと避けて、僕はまたスマホの画面に目を向ける。
すると降谷さんは決まって
「何だ。僕よりスマホの方が好きなのか?」
とむくれるのでこれもたまったものではない。
「違います。でも今いい所なんです。あと五分したらやめますから」
「……分かった」
何とか降谷さんを納得させてスマホのゲームに集中する。モンスターはもう虫の息。レイさんとの協力プレイで何とか倒した頃には、先程宣言した五分が経とうとしていた。
「降谷さん? 終わりましたよ」
スマホから顔を上げると降谷さんが居ない。トイレかな?と思いつつ声をかけると、台所から甘い匂いがしていることに気がついた。
「降谷さん?」
僕が台所へ向かうと、降谷さんは鍋を火にかけるところだった。何を作ってるんだろう。そう思って近付くと、降谷さんは呆れたような顔をこちらに向けた。
「やっと僕のところに来た。君は料理をしている僕にしか興味が無いのか?」
「そんなことありませんよ。さっきはタイミングが悪かっただけです」
「……どうだか」
降谷さんは少し拗ねてしまったようだ。それでも黙々と僕のためであろうデザート作りをしてくれているのが愛おしい。
火にかけた鍋の中から砂糖が焦げた匂いが漂う。段々と色づいてきたところで降谷さんは火を止めて水を用意する。
「跳ねるから少し離れていろ」
そう言われて一歩離れると降谷さんが鍋に水を入れた。するとジュー!という音と共に水が蒸発していく。これはきっとプリンのカラメルだ。
「おやつを作ってくれてるんですね」
僕がワクワクした声音でそういうと、降谷さんは「そうだよ」と答えて、カラメルを大きめのマグカップに入れていく。
その間に僕は卵と牛乳を取りに冷蔵庫に向かった。何度も降谷さんがプリンを作ってくれているところを見ているから、この後の工程も必要な材料も何となくわかる。
「卵と牛乳ですよね!」
降谷さんに差し出せば「ありがとう」と言って受け取ってくれた。棚からボウルを出して卵を割っていく。牛乳と砂糖と共によく混ぜたら、こしながらマグカップにプリン液を注いでいく。あとはレンジで加熱すればプリンの完成だ。
「プリンを冷している間は僕に構ってもらうからな」
ちょっと拗ねたように唇を尖らせた降谷さんがそう言って突進してくる。そんな降谷さんがやっぱり愛おしくて、僕は笑いながらそれを受止め、そのままソファに雪崩込んだ。