【これから始まる最愛の日常】 プロポーズってどうやってしたらいいんだろう。そんな事をふと考えた。僕も風見ももう長く付き合っているし、そろそろもう一段階進んでもいいんじゃないかな、と考えたのだ。
でも肝心のプロポーズが思いつかない。一般的なものはキレイな夜景のレストランで指輪を渡す感じなんだろうけど、僕も風見も色気より食い気だ。それにそんなキラキラした絵面、僕には似合わないと思った。もっと僕たちらしくてでもいい感じの……なんて、風見に『デリカシーがない』と言われている僕では考えもつかない。
それならいっそ、日常の中に溶け込ませてみてはどうだろう。
例えば仕事帰りに風見を夕食に誘って、家でご飯を食べてる時に『結婚しないか?』と切り出してみるとか。ドライブ中でも良いな。そういう何気ない風景の、何気ない幸せの中にスルッとプロポーズを挟んでみるのもありかもしれない。
ベッドに寝転がりながら考えていた僕は、ベッドに凭れるようにしてスマホを見ている風見を見る。
それか、思い立ったが吉日、とか。
「なあ風見」
「何ですか?」
「僕の一番大切なものってなんだと思う?」
僕の問いかけに、風見はスマホから目を逸らさずに答える。
「日本でしょう」
さも当然と言うようにサラッと答える風見は、これがプロボーズの前振りだと全く気付いていないようだ。
「大枠で言えばそうだけど、一番は風見だよ。凄く大切に思ってるし、これからも大切にしたいと思ってる」
僕がそう続けると、何かを察したのか風見がスマホから顔を上げてこちらを見た。
僕は恥ずかしくて、照れくさくて、枕をギュッと抱きしめながら脚をパタパタとゆっくり動かした。
「どうしたんですか降谷さん」
ちょっと頬を染めた風見が照れくさそうに言う。風見はどうだろう。僕の事を大切に思ってくれているだろうか。
「風見は? 僕のことが大切か?」
「それは……はい。勿論ですよ」
照れて言い淀んだ風見は、けれどしっかりと頷いて僕の言葉に答えてくれた。だから僕は恥も照れも不安も全てかなぐり捨てて、ガバッとベッドから起き上がると風見の目を真剣に見つめた。
「結婚しよう」
「えっ」
「僕と戸籍を一緒にしよう、風見」
僕がそう言ったあと、呆気にとられたような顔をした風見の顔がじわじわと赤く染っていく。「あ、う……」と母音しか発せなくなってしまった風見の可愛い顔を、僕はこの先一生忘れないだろう。