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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-06-16/今日の空閑汐♂はひとり寝汐見♂の話。この4日いちゃつかせるぞ!って言った割に切なめの仕上がりじゃん……明日いちゃつかせる為に今日はしっとりさせとくんだ……

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:16 暗い部屋の中で、ごろんと寝返りを打つ。苦もなく寝返りを打てるベッドの上で、汐見は一人小さく息を吐き出した。
     学校は冬季休暇、それに伴って寮も休暇開始の数日後には閉鎖すると寮から追い出された汐見は、数日前には学校からは特急で一本――高速鉄道の恩恵により車であれば五時間近い道のりを一時間程度にまで縮め、生まれ育った地元へと戻ってきていた。
     最初の数日間は、前回は宇宙港に併設された空港から帰省したという空閑が汐見について特急へと乗り込み観光を兼ねて遊び歩いた。汐見もその間実家に寄ることもなく、空閑と同じホテルで眠っていた。普段寝ているものよりも広いベッドが一つあるダブルルームで、普段のようにぴったりとくっ付いて。
     そして今日。空閑を隣の市にある空港まで見送り暫しの別れを惜しんだ汐見は、ようやく実家へと足を踏み入れたのだ。
    「……眠れない」
     ポツリと口から溢れた独り言は、誰の耳にも入らず消えていく。寮の固い二段ベッドよりはスプリングがあるマットレスは、寮のそれとさほど変わらない大きさで。寮で空閑と眠るときは寝返りを打つのも一苦労である程に満員御礼となるシングルベッドは、汐見一人だけであれば少しの窮屈さは感じるものの寝返りに苦労する事もない。けれど、心なしかその隙間の分だけ寒く感じていた。
     ――去年はどうだっただろう。
     ふと思い出すのは、昨年の冬。あまりにも実家への帰省というイベントに気乗りせず、気の重さに少しだけ愚痴を吐いた。その言葉を元気いっぱいに拾ったのはフェルマーで、旅費は持つからウチにおいでよと言い出したのだ。そして汐見が気付いた時にはフェルマーが差し出していた彼の手を、渡りに船とばかりに掴んでいた。
     ベルリンの郊外に建てられていたフェルマー邸の客間で、広々として柔らかなベッドが与えられた汐見は久しぶりにベッドを独占出来た事が嬉しくて大の字になって寝ていたような気さえする。それから一年――汐見はもうフェルマー邸のあの柔らかなベッドに包まれたとしても、一人では上手く眠れなくなってしまっているのだろう。
     予感はあった。だから逃げようと――自分は一人で生きていける筈なのだと、汐見は空閑を一週間だけ避けた。その時ですら、久々に一人で眠ったベッドに違和感を抱いていた。鳩尾のあたりが小さく痛んで、内臓の不調も疑った――一応医務室に相談をしたが、健康そのものだと太鼓判を押されただけだったが。
     その痛みの意味が、今になってやっと分かった。ぎゅ、と歪むように痛んだのは、汐見の心臓だ。胸を痛めるという慣用句は、本当にその通りだったのかと彼はその言葉を身を持って知る。
     ――そうか、これは。
    「……俺は、寂しいのか」
     空閑が居ないベッドで眠れないのも、一人寝のベッドが寒く感じるのも全て。寂しさという――汐見が今まで抱いた事のない感情を根源とした感覚なのだろう。そう認識した汐見はしかし、それを素直に誰かに伝える事が出来る程、素直な性格をしてはいなかった。
     ともすれば持て余しそうになる寂しさという感情を堪えるように、汐見は己を抱きしめるように丸くなる。浅くなる呼吸を、意識的に深くして。冬の長い夜をやり過ごす為、汐見はぎゅ、と瞼を強く閉じたのだ。
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