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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-06-26/本日のデイリー後半戦!思った以上に長くなってもう800字デイリーって何????みたいな感じになってる。汐見って割と何も言わずに極端な事するタイプだと思ってる。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:26.2「で、何があったんだよお前ら」
     ギャラリーを押し退け、フェルマーと共に空き教室へと汐見を押し込んだ高師は呆れ混じりの声色で前置きもなくそう切り出した。
    「あ! シュンメ誤解しないでね、これはビジネス浮気みたいなもので」
    「フェルマーお前には訊いてないし、ビジネス浮気って何なんだそれは!」
     あまりにも能天気なフェルマーの言葉へ思わず叫んでしまう高師を追うように「ヴィン、俺をダシにすんな」と不機嫌そうな声色で汐見の声が刺さってくる。
    「汐見、お前は本当に何なんだ。いきなりこっちの教室まで来て」
    「……別に」
     尊大な態度で椅子に座りながら高師の言葉にはふい、と顔を逸らし一言だけを口にする汐見の態度は完全に拗ねた子供の仕草で。そんな汐見の態度にこの短い時間だけで何度吐き出したのかも分からない二酸化炭素を再び口から漏らした高師は、フェルマーへと視線を向ける。
    「フェルマー、お前さっきわかったって言ってたけど、何がわかったって言うんだ」
    「アマネが浮気したいって事かな」
     だめだこっちも話にならん。爽やかな笑みを浮かべて首を傾げるフェルマーの姿と浮気という言葉があまりにもアンマッチで頭が痛くなってきた高師は全てを投げ出したくなりながらも椅子へと腰を下ろす。
    「とりあえず、状況証拠でお前が空閑と喧嘩したって事までは分かるんだが、お前らそんな殴り合いの喧嘩とかそこまでしてなかっただろ」
     ――というよりも、多分空閑が汐見の全てを許していたんだろう。時にはその逆も然り。
     そんな事を思いながら、高師は言葉を紡ぐ。
    「お前らがそんな事になると、一応近くで見ていた人間としては心配になるんだが」
     重ねられた言葉に、ようやく怒りが収まってきたのだろう汐見はバツが悪そうに眉を寄せる。その隙を目敏く見つけたフェルマーは整った相貌に笑みを湛えたままで、小さな子供を言い聞かせるように言葉を繋いだ。
    「ねぇアマネ、ボクらはアマネもヒロミも大事な友達だと思ってるんだ。だからね、いつも仲良しな二人が喧嘩したならその仲直りの手伝いだってしたいんだよ。アマネがボクと浮気したいなら、それにも付き合うけどさ。そうじゃないでしょう?」
     だって浮気相手にボクを選ぶなんて、めちゃくちゃ健全な浮気じゃん。
     柔らかな言葉で絡まった糸を解すようにフェルマーは汐見の隣の椅子へと腰掛け、彼の手に触れながら言葉を重ねていく。
    「本気で浮気しようと思えば、アマネなら普通科の女の子とかよりどりみどりじゃんね」
    「あぁ、普通科でやってた専門科顔がいいランキング二位……」
     もちろん一位はフェルマーで、その下には空閑や高師が連なっている。そんな面白おかしく書かれた校内新聞の記事を思い出し、思わず遠くへと視線を向けてしまった高師は頭を振り目の前にある現実へと思考を戻した。
     遂に俯いてしまった汐見の旋毛を見ながら、現実まで思考が戻ってきた高師はどうしたものかと思案する。ここまで閉ざされてしまえば、どちらかが根負けするまでそのままだろう。きっと、今回の喧嘩だってその原因は些細な事であるという予感だけはある。
    「……推薦」
    「「推薦?」」
     ぽつりと漏らされた汐見の言葉に、高師とフェルマーの声がユニゾンする。ステレオで訊き返された汐見は、その問いへと力なく頷き意を決したようにその顛末を口にした。
    「航宙士学院の推薦、俺かヒロミかっていうのは担任からも言われてたんだ。前回の定期試験の結果で決めるとも。試験の結果は俺が一位でヒロミが二位、推薦はヒロミに決まった。これが今回喧嘩した理由」
     航宙士学院。それはパイロットコースに所属する学生全員が目指していると言っても過言ではない、宇宙機パイロット――航宙徽章アストロマークを手に入れる最短ルートであり、一学年の受け入れ人数が二十人前後という狭き門だ。
     この地球上に数校存在する系列校のパイロットコースから試験免除の推薦入学が各学校から一名、パイロットコースの生徒に対して行われる学内試験選抜にパスした内部入学が主な進学方法となり、あとは一般入試合格での入学が若干名。汐見が口にした推薦というのは、試験免除で確実に航宙士学院の入学が決定した事と同義であった。
     そして、その顛末を耳にしたフェルマーと高師は片や呆れたように手を額に当てながら天を仰ぎ、片や理解が出来ないというように首を傾げる。先に口を開いたのは、首を傾げる高師の方だった。
    「汐見、お前が推薦に選ばれなかったのは残念だろうが、総合的な観点から見て空閑がお前に勝っていたという事なんじゃないか? それは素直に受け入れるべきだろう」
     不思議そうに首を傾げ言葉を紡ぐ高師に、フェルマーは「多分そうじゃないよ」と口を挟み「そうでしょ、アマネ」と少しだけ責める語調で汐見へと言葉を放つ。
     その言葉を上手く理解し切れなかった高師が続きを求めるようにフェルマーへと視線を向ければ、彼はほとほと呆れたように言葉を重ねた。
    「推薦にアマネが選ばれなかった事を怒ったのは、アマネじゃなくてヒロミでしょう。ついでに言えば、アマネ。ヒロミに何も言わずに勝手に推薦譲ったでしょ」
     フェルマーにしては刺々しい声色で紡がれた言葉に、高師は意味が分からないと言うように「はぁ!?」と声を上げる。
    「ヴィンには敵わないな」
     困り果てたように、気まずげな声色で言葉を返した汐見へ高師は思わずといったように「何でだよ!」と叫んでいた。
    「汐見、お前何でそんな事……それは空閑だって怒るだろ。俺がフェルマーにそれをやられたら、俺は怒るぞ。俺の事を侮っているのか、内部選抜で落ちるとでも思ってるのかって」
     苛立たしげに重ねられる高師の言葉に、汐見は「それは違う!」と叫ぶ。
    「違う。ヒロミも俺も、推薦でも内部選抜でも航宙士学院に行けるだけの実力は持ってる。俺は一度もヒロミの事を、そういった意味で侮った事なんて決してない。でも、だからこそヒロミを推薦してくれと――吉嗣センセに頼んだのは俺だ」
     感情のままに言葉を吐き散らす汐見を、高師は今まで見た事がなかった。直情的な所はあるが、基本的に口数が少なく端的な言葉を好む汐見が吐き出す言葉は、高師にとって全く要領を得たものには感じられなくて。高師がその言葉が意味する所を思案するように眉を寄せていれば、汐見は力なく言葉を重ねるのだ。
    「いつも、俺が前に居て、先に行ってて。それをヒロミが追ったり、迎えに来てくれたりしているんだ。だから、今度は俺がヒロミを追いかけたかった」
     航宙士学院への入学を先に決めた空閑を、汐見が追うように続く。そのビジョンが汐見にとって大切なものだったのかもしれない。
    「盛大に惚気てくれるじゃん」
     呆れを滲ませた声でそう口にしたフェルマーは肩を竦め、高師は何度目かも分からないため息と共にその顛末を篠原へと送りながら「お前は圧倒的に言葉が足りてない。ちゃんと空閑に一から説明してやれよ」と口にした。
    「お前にだけは言われたくないな……!」
     ギチリと奥歯が軋むような表情を浮かべ地を這うような低い声を漏らした汐見は、それでもしっかりと頷いたのだ。
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