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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-08-24/今回初登場なグェーリィンヌ君は本編に出てくるグェーリィンヌ君のお兄さんなんですけど、本編にも空閑汐♂にも1ミリも関係ない情報だし今後出てくるのかは知らん。フランスSF作家が名前の元ネタな兄弟になってしまった。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー【Memories】24 温厚でお人好し。アルベール・グェーリィンヌが一期上の先輩に抱いていたのはそんな印象だった。
    「アル! 手錠、手錠!」
     いつもにこやかに笑みを浮かべているアジア系にしては恵まれた体格を持つ先輩は、警邏の為に並び歩いていた筈のグェーリィンヌを置き去りに走り出したと思えばいとも容易く暴漢を背負い投げ声を上げている。
    「え、あ! はい!」
     慌てて彼の元へと駆けたグェーリィンヌは先輩――空閑宙海へと手錠を渡す。「ありがとね」恐喝の現行犯を確保しているとは思えない程にのんびりとした声でグェーリィンヌの差し出す手錠を受け取った空閑は、先程の見事な背負い投げを決めた人間と同じ人物とは思えないような柔らかな笑みを浮かべて男の手首に手錠を掛けていた。

    「アル! 今日はありがとね。うっかり手錠忘れててさ」
    「流石にそれは気を緩めすぎじゃないですか……?」
     署に戻り苦笑混じりでグェーリィンヌにカフェテリアで買ってきたのだろうコーヒーカップを手渡す空閑に、思わず突っ込みを入れてしまう。空閑に対しての評価というのは、概ね緊張感のない温厚な人物というもので。父親が署内の花形とも言える特殊部隊の長を務めているものの、荒事が苦手なグェーリィンヌにとっては良き先輩でもあった。
     とはいえ、手錠を忘れるのは流石に緊張感が無さすぎる。思わず溢れ出たグェーリィンヌの言葉に「申し訳ない……」と首を垂れる空閑が、どこか粗相をした犬のようで笑ってしまう。
    「でも、今日の確保凄かったですね。突然走り出したと思ったら、いきなり投げ飛ばしてるんですもん。ジュードーって奴ですか?」
    「あぁ、あれ柔道なのかな。一本背負いとか? 俺やってたの剣道だからよく分かんないや」
    「待って、先輩良くわかんない事を良くわかんないままやってるんですか」
    「そう言われてみるとそうなるね……」
     思わず唖然としながら隣に座る空閑を見つめてしまったグェーリィンヌに、空閑は言い訳のような調子で言葉を重ねていく。
    「学生時代の恋人がね、そういうの強くて。俺もよく飛ばされたり投げられたりしててさ。それで覚えたんだよね」
    「もっと意味分からなくなってるの分かってます?」
     情報量が多すぎる。軌道警察局への入局こそ一年違いの先輩であるが、年齢は三歳程離れている。航宙士学院を中退したというこの場所では異色の経歴を持っている事は知っているし、人の良さが滲み出ている容姿もファッションモデル等には及ばないが一般市民としてはかなりいい方だろう。恋人が居てもおかしくは無い――おかしくは無いのだが。
    「何で恋人に飛ばされたり投げられたりしてるんですか……」
    「まぁそこは俺がやらかしたせいなんだけどさぁ、飛ばされるのも投げられるのも楽しかったんだよ」
    「ていうか、先輩を投げ飛ばすってどんなガタイのいい女なんですかそれ」
    「俺よりは小柄だったよ。細かったし。男だけど」
    「あぁ、そういう」
     彼が入局以来女性局員からの誘いをにこやかに断り続け、恋人の影もなかった理由が少しだけ分かった気がした。過去を懐かしむように視線を遠くに投げ、少しだけ寂しそうな笑みを浮かべるその人は、きっと――その恋人の事を今でも忘れられずにいるのだろう。
    「ちなみに、何やって振られたんですか」
    「え? 振ったのは俺だよ」
    「いや、全体的に何もかもがおかしく無いですか?」
    「俺としては整合性取れてるんだけど、おかしいかな?」
    「振った相手の事、今でも好きなんですか?」
    「好きだねぇ」
    「じゃぁ何で振ったんですか……」
     柔らかにポンポンと答えられていく言葉に目眩を感じたグェーリィンヌは、空閑から渡されたコーヒーを啜りながらデスクへと沈み込む。
    「俺も、多分アマネも、別れたくはなかったけど。あの時はそうするしかないと思ってたんだよ。若かったから」
    「じゃぁ、また連絡取れば……」
    「どのツラ下げてって感じだよね。あと、バッタリ何処かで会ったら俺全力で逃げちゃうと思うんだよ」
     あはは、と自嘲げな笑い声と共に紡がれていく言葉に、グェーリィンヌは今日一番のため息を吐き出した。
    「アンタ、めちゃくちゃヘタレですね」
    「そうかもしれないね」
     そう言って困ったように笑う空閑に、グェーリィンヌはもう一度大きなため息を吐き出していた。
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    はるもん🌸

    MOURNING魏無羨がニヤニヤしながら嗅がせてきたのは、いつしか見た事のある見た目がおかしい香炉。眠る前から怪しい展開になるだろうことはわかっていたが、まさかこの時の夢を見るとは思わず、数回ほど藍忘機は目を瞬かせた。
    香炉 初めての口づけ―――これは、夢か。

    魏無羨が目隠しをしたまま笛を吹いている。自分はそれを眩しそうに見ていた。どうせ気づかれない、気づかれてもこれは夢。そう思い、藍忘機は昔と同じように木の上にいる魏無羨の元へと足を運ばせた。いつしかの夜狩りの帰りに、見知らぬ夫婦が木陰で深い口づけをしているのを見かけた。

    好きなもの同士なら、ああやって愛し合うのかと学んだ。
    そして魏無羨と同じ事がしたいという欲を感じた。

    魏無羨に初めて口づけをしかけた時、あの夫婦のそれを真似た。目を隠しをしたまま的(マト)に矢を放った時の魏無羨は本当に美しく見えた。あれは私のもだと印をつけたくなるほどに。

    笛の音が聞こえた瞬間、霊獣を狩る事よりも魏無羨の傍にいたいという欲求が強まった。そっと遠くから眺めるつもりだったが、風を感じて気持ち良さそうにしている無防備な彼を目前に我慢をする事ができなかった。もうすでに自分たちは道侶。今襲わなくても毎晩これでもかと愛し合っている。しかしこの瞬間、藍忘機はあの時の劣情がまざまざと蘇り、気づけば彼の手首を抑えて口づけていた。それも無理やり。
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