兵士として生きる以上、怪我など常のこと、気にもしていられない。
顔と翼の傷は腹立たしいが、それだけだ。
そう認識しているスタースクリームだったが、今日は少々虫の居所が悪かった。
彼自慢の顔にヒビを入れられ、翼に穴を空けられて。
それだけでも腹が立つのに、基地に戻ると今度はボスに呼びつけられた。
皆が寝静まる頃、メガトロンの自室。
その仰せがただのお喋りではないことくらい分かる。
「チッ……メガトロン様、俺です」
静かにドアが開く。
その向こうに立ち上がるメガトロンの姿を認め、部屋に足を踏み入れると。
「っ…!?」
大股で近づいてきたメガトロンに腕を捕まれ、強引に引き寄せられた。
(なんなんだ…!)
舌を打ちたい気持ちを堪え、片手で顎を掴んでくるメガトロンを睨む。
何をされるかと思えば、メガトロンはスタースクリームの頬に大きく入ったヒビをまじまじと見ているようだった。
何を考えているか分からないメガトロンを下手に刺激しない方がいいとスタースクリームは口を噤む。
読めないメガトロンの顔を睨みつけていると、今度はまた唐突に腕を引かれ、近くの机に背中から押さえつけられた。
「っ、何す……うっ!?」
抗議の声を上げかけたところで、翼に触れた感触にそれを飲み込む。
応急処置で塞がれただけの翼の穴は違和感が強く、感覚も鋭敏になっていた。
そこを繰り返し撫でる趣味の悪いリーダーに奥歯を噛んで耐える。
何がしたいんだ。
メガトロンの指がそこをなぞる度に湧く、怖気と快感の混じったような嫌な信号が不快でたまらない。
適当に出して満足して終わってくれればいいものを。
スタースクリームは内心で悪態づいた。
理解できないメガトロンの行動に耐えていると、今度は主翼の表面を指先で辿られる。
確かめるように触れられ、ぞわぞわと下腹に集まる悪寒が鬱陶しくてたまらない。
もどかしさに拳を握っても、その戯れが止む気配はなかった。