静謐のパライソ 外界とは硝子で隔てられた、摂氏25度の世界。体内に水を存分に蓄え背を伸ばすサボテン、温暖な気候で育つ色とりどりの花が咲き誇り、大きな花弁の頭を垂らす異国情緒を漂わせるものもこの温室の住人として鎮座する。地面に直接植えられた観葉植物たちは深緑の葉を天へと腕を伸ばし、僅かに吹き込む風にその先を揺らす。
少し離れたところからは水が流れる音も聞こえ、流れる水が溜まった小さな池の水面には睡蓮の葉がゆらゆらと漂っている姿が見える。伸びた茎の先には、神秘性を秘めた仏の座のような薄桃色の花が開いている。
石畳の道の先、温室の傍ら。そこには二脚のガーデンチェアとモザイクテーブルが鎮座している。今日は、アルミで出来たオフホワイトの椅子に主達が座っている。
2557