偏食の男①アンティークデザインのカフェには双子の姉妹がいる。扉を開けると甘ったるいケーキの香りが鼻についた。そこからさらに奥に進むとカフェのオーナーで、このアンティークなデザインを好んでいる人物が姿を現した。
タイプライターの音が鳴り響く。
「ああ...、君だネ。ディーゼル。」
タイプライターから手を離し歓迎するかのように手を差し出す。
「あの日から会って来れなかったダロウ?」
何故だか分からないがと、付け足しそうに首を傾げてキールは揚々と話しをする。
「会いたかったてか?」
口角をあげて皮肉を吐き捨てた。挑発的に見下ろしてみせる。
「私は君が好きだからネ。」
「気持ち悪りぃこと言うなよ。」
「お前ほどは気持ち悪くないダロウ?」
「人肉食うやつに言われたくないが?」
それまで飄々と答えた男が止まる。
目線を合わせすらしていてこないディーゼルを見つめる。ドアに身体を預け、腕を組んでいた。
その瞳は小さく揺れていた。
「お前は、アレが人だと思っていたのカ。」
そう、並びの良い白い歯を覗かせる。
その男は笑った。
キールの仕事のカモフラージュに経営された
ケーキ屋は、双子の美人姉妹が大正ロマンモチーフよろしくなデザインの洋装で姉のバニラ、妹のショコラが主に経営をしている。
雰囲気もあり、人気も出そうなものだが目立つとこにあるわけではないので、お昼時だというのに暇そうにテーブルを拭いていたり、
お茶の葉を補充していたりと和やかな雰囲気をしていた。
「ご機嫌よう、ディーゼルちゃん。何かたべていきますか?」
穏やかな姉のバニラが話しかけてくる。
「いいえ、お姉さま。こいつと話す必要はないわ。」
気の強そうな妹のショコラが話しかけてくる。
「いや?キールと話に来ただけだから。また今度お邪魔させてもらうね〜。」
軽い調子でひらひらと手を振る。
ドアから出ると、ドアの開閉を知らせるベルが鳴った。
そのまま歩きを進める。
「吐き気がする。」