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    はるち

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    はるち

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    AiSの無配です。当日手に取ってくださった方はありがとうございました!

    #鯉博
    leiBo

    デザートだって毎日食べたい 美人は三日で飽きる、というけれど。
     別段美人でもないこの身であれば、どれくらいで飽きられてしまうのだろう。
    「リー。あの、あのですね」
    「はい?どうしたんです、そんなに他人行儀で」
    「いや、ちょっと距離が近いんじゃないかなーと思うんですが」
     そうですか?と明らかにこちらの心情をわかっている癖にすっとぼけた反応を返すこの探偵の膝でも蹴り飛ばしてやりたくなる。パーソナルスペースなんてものはおれとあなたの間にはありませんよねと言わんばかりの距離感で、彼は私の隣に座り、首筋に顔を埋めた。鼻先や唇が、皮膚の薄いところを掠める。背筋を伝う感情が声を鳴って喉から溢れるのを防ぐために唇を噛むと、彼はくつりと喉を震わせたのを感じた。駄目だ。ここで流されてはいけない。まだ今日の内に片付けておきたい仕事があるのだ。努めて彼のことを意識しないよう、手元にある書類に目を落とす。だから不意に言葉が溢れたのは、肌を掠める吐息があまりにもくすぐったいからだ。
    「……飽きない?」
    「はい?」
     きょとりとこちらを見つめる鬱金色の瞳には、とぼけたような色はなく、ただ本当に発言の真意を掴み損ねているようだった。彼がこうしてロドスに長期滞在するようになったのは本当に最近のことで、それまでの時間を、或いは彼が艦を降りて龍門へと戻った後の時間を埋めるために、彼がこうしているということは感覚的にはわかるけれども。
    「い、いや、その……。毎日こうして、飽きないのかなと思ってね」
     いつぞやに、彼が言っていたことを思い出す。どんなご馳走だって毎日食べれば飽きちまう、と。いや、別段自分のことをご馳走だなんて言うつもりは毛頭ないのだけれど、しかし客観的に見ても自分は貧相な体つきをしており、彼がここまでふれあいを求めるほどの魅力があるとは到底思えない。そう言うと、彼の瞳がすう、と細められた。静電気が背中を流れるような感覚がある。良くない徴候だった。
    「はあ。おれの伝え方が不味かったんですかねえ」
     不味かった、という言葉の苦さを感じるより先に、ぐるりと視界が回転した。背中にはソファの座面の硬さがあり、天蓋のように彼が私の視界を覆う。逆光の中でもその鬱金色は輝いて、背筋が凍るほどに美しい。
    「おれは毎日だってこうしていたいですし、飽きるどころか毎日飢えていくようですよ」
     おもむろに肌へと牙が突き立てられる。甘噛めいたそれに、抑え残った声が溢れ出す。ばさばさと書類が床に散らばる音がした。噛みつくような口付けが、呼吸と反論を咀嚼する。この甘やかさに飽きる日など訪れようか、と。交わす吐息の合間に彼は囁き、今からそれを教えましょうかと囁くのだ。
     嗚呼、全く、この男と来たら!

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    はるち

    DOODLEロドスでダンスパーティーが開かれるのは公式というのが良いですね
    shall we dance「あなたには、ダンスはどのような行為に見えるかしら?手を相手の首元に添えて、視線を交わせば、無意識下の反応で、人の本心が現れるわ」

    踊ろうか、と差し出された手と、差し出した当人の顔を、リーは交互に見た。
    「ダンスパーティーの練習ですか?」
    「そんなところだよ」
    ロドスでは時折ダンスパーティーが開催されている。リーも参加したことがあり、あのアビサルハンター達も参加していることに少なからず驚かされた。聞けば彼女たちの隊長、グレイディーアは必ずあの催しに参加するのだという。ダンスが好きなんだよ、と耳打ちしてくれたのは通りがかりのオペレーターだ。ダンスパーティーでなくとも、例えばバーで独り、グラスを傾けているときであっても、彼女はダンスの誘いであれば断らずに受けるのだという。あれだけの高嶺の花、孤高の人を誘うのは、さぞかし勇気のいることだろう――と思っていたリーは、けれどもホールの中央で、緊張した様子のオペレーターの手を取ってリードするグレイディーアを見て考えを改めた。もし落花の情を解する流水があるのならば、奔流と潮汐に漂う花弁はあのように舞い踊るのだろう。グレイディーアからすれば、大抵の人間のダンスは彼女に及ばないはずだ。しかしそれを全く感じさせることのない、正しく完璧なエスコートだった。成程、そうであれば、高嶺の花を掴もうと断崖に身を乗り出す人間がいてもおかしくない。
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