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    ぱんつ二次元

    @pantsu2D

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    ぱんつ二次元

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    ED後時空で秋の夜長にパンケーキをやくアーロンのはなし(後)。アロルクだけどチェズレイの圧がつよい。全年齢です。モクチェズ匂わせをふくみます。文字数がたりなかったので、前後にわけました。前は一個前です。

    #アロルク
    allRounder

    ため息交じりにリビングに戻って、べりべりとガムテープを剥がす。かっちりと分厚い段ボールの中、ぎっしりと野菜と果物が詰まっていた。潰れないように緩衝材で包まれた丸っこい赤いのは多分例のぬいぐるみだろう、脇に寄せられた分厚い封筒は何かの資料か――『ボスへ』と書かれているからには、あのクソ詐欺師からルークへ宛てたものだろう。『他の奴が開けたら殺す』みたいな禍々しいオーラがうっすら見えるような気がしたので、それはスルーすることにして、問題は。
    「…………………」
     野菜果物のド真ん中、一番に見つけてくれと主張するみたいにドンと配置された、小麦粉砂糖豆乳卵のセット。手書き添付の『ぜったいに失敗しないパンケーキのつくりかた(分かりやすい解説イラスト付き)』。パッケージには小馬鹿にしたような『支援物資』の四文字が踊る。
    「…………マジでどっから見てやがるあのクソ詐欺師……!!!」
     やっぱり明日交番に通報しておこう。捕まるとは到底思えないけれど――いやそもそもあいつが警察じゃねぇか何お気軽にストーキングされてんだあいつは。
    「あーーーーーーークソが!!!」
     今の一連の諸々で一気に眠気が覚めてしまった。
     八つ当たりみたいに小麦粉、卵、砂糖と豆乳を掴んでキッチンに向かう。埃をかぶったボウルを適当に水洗いしてがさっと大味に小麦粉を入れる。
     丁度小腹も減っていた。明日の朝、にはまだ早いけれど、眠れない間の暇つぶしにはちょうどいい。アラナに知れたら爆笑されそうだけれど。
     ――天下の怪盗ビーストが形無しだねぇ!
     とか。
     うるせぇわ、なんでこんなことしてんのかなんて、むしろこっちが聞きたいぐらいだ。
    「ほんっと……絶対明日全部食えよ」
     ちらりと振り返った先では、ルークがすやすや爆睡している。むにゃ、と寝言でぱんけーき、とつぶやくのが聞こえた。そうだよパンケーキだよ、お前のために作るんだから、夢の中で感謝しやがれバカドギー。
     かしゃかしゃとボウルに入れた卵と小麦粉をかき混ぜながらため息をつく。砂糖は適当――より多い方がいいんだろうか。とびきりに甘い方が、きっと好きだろうから。シロップびしゃびしゃのパンケーキを口いっぱいに頬張っては、幸せそうな顔をするバカの顔を思い出す。
     あんなシロップの味しかしないパンケーキばっか食ってたらそのうち身体を壊すだろうに、バカかあいつは――こんな深夜に、そのバカのためにせっせとパンケーキなんて焼いてるこっちも相当バカだろうけど。
     目分量に砂糖と豆乳をざかざか入れて、混ぜた生地を熱したフライパンに流す。ふつふつと白っぽい生地が空気を吐き出し始めたら、手首のスナップを効かせてひっくり返して後は待つだけ。。形が崩れたのは一枚目だけで、後はそれなりに綺麗に焼けた。元から手先は器用な方だし、究極を言えば火が通っていて食べられれば問題ない。
     適当に取り出した皿に、焼けた順に盛り付けていく。朝には冷めてしまうだろうけど、まあ、その辺は、温め直せば食えるだろう。口に合わなきゃシロップでもかけて――
    「――ァ?」
     調味料の棚を探った手が止まる。シロップの瓶がなかった。前に来たときはここにあったと記憶していたのだけれど――たまたま切らしてしまったんだろうか。まあ、あの甘党バカのことだから、どこかにストックぐらいはありそうだけれど。
    「あー……面倒くせぇ」
     がしがしと頭を掻いて、頭上の収納棚を見上げる。普段滅多に開かないんだろうそこは、蝶番が錆び付いていた。ストックするならここだろう。ぎし、と軋みを上げる戸を開く。
     狭い収納には、予想通りストックらしい未開封品が適当に詰め込まれていた。いつ買ったか分からない調味料、洗剤、栄養ドリンク、レトルト食品、タオル――それから、
    「……ァ?」
     鍵が、あった。
     まるで誰かから隠すみたいにタオルの間に挟まったそれを指先で引き抜く。最近隠したんだろう、錆も埃もついていない。ラベル一つないそれがどこの鍵かは、けれどすぐ予想がついてしまった。
     怪盗の勘、でも、なんでもない。ただ、ついさっき――いや、毎回か。どうやったって目についてしまっていたから。
     リビングへと引き返す。
     ソファの上で、ルークは穏やかな寝息を立てて眠っている。起こさないように密やかにテレビの下の棚に触れた。
     ずっと、気になっていた。並んだDVD-BOXと、その隣の不自然な空白。それから、その下――鍵のかかった、小さな扉が一つ。
     鍵をあてがうと、ぴたりとそれは一致した。
     一呼吸だけ立ち止まる。開けようか、やめようか迷う。多分この先はきっと、他人が土足で立ち入っていい領域じゃない。けれど、『相棒』ならそれは、許されていいんだろうか?少なくともアーロンはまったくの無関係ではないはずで、それなりに責任は抱えているはずで――ああ、クソ。
     面倒な言い訳をいったん全て投げ捨てる。
     開けるか、開けないか――見たいか、見たくないか。シンプルな二択で選ぶなら、前者だ。
     かちりと、鍵を回す。ぴったりと閉められていた小さな扉をそっと開く。狭い収納スペースの端、寄せるよう古びたアルバムが仕舞われていた。取り出すと、ページの隙間からひらりと一枚が零れ落ちる。きっとこれが、棚の空白を埋めていたんだろう。今より少し幼いルークと、その『父親』のツーショット。
     やっぱり、ここに仕舞っていた。
    「……隠すんなら、もうちょい分かりにくいとこ隠せ、バカ」
     でないと、こうしてすぐに見つけてしまうから。
     アルバムに積もる埃はまだ薄かった。仕舞ったのは、『父親』の正体が判明してからなんだろう。捲ろうとすると、互いにくっついたフィルムの剥がれる微かな音と抵抗が残る。少しも傷つけてしまわないように、大切に一枚目を捲る。
     写真の中、まだ幼いルークが――『ヒーロー』が、いた。
     まだここに来て間もない頃か、戸惑いと緊張をあらわにした目でこちらを見ている幼い子供――ああそうか、こんなにも、小さかったのか、あのときは。懐かしさに、息が詰まる。写真の中の『ヒーロー』は、思い出のそれよりひどくか弱く小さく見えた。記憶喪失になっていたからか、それとも、抱えていた弱さを『ルーク』には見せなかっただけか。片隅に小さな日付と、タイトルみたいな走り書きの一言――『はじめての散歩』。
    「この時から、ドギーじゃねぇか」
     『買い物』、『入学式』、『はじめてのバスケ』『喧嘩の後』――一枚、一枚、ページを捲るごとにひとつひつ思い出が積み重なっていく。初めての誕生日祝い、自転車に乗れた日、遊園地のジェットコースター、バスケの試合、卒業式――時を重ねるごとに、笑顔が増える。記憶の中の『ヒーロー』が、今のルークに成長していく。真っすぐでバカ正直で、正義感がアホみたいに強い、ヒーローバカに――いや、そこは元からか。
     だってやっぱりこいつは、『ヒーロー』だから。
     だから、死なない。ちゃんと生きてる。アーロンが知らない間にも、ちゃんと。アーロンが否定し続けた間もずっとずっと、こうして、
    「――ちゃんと、生きてんじゃねぇか」
     当たり前だ。当たり前なのに、それをずっと確かめたかった。
     もし、と、ずっと思っていた。
     あのとき、あのままあの国に『ヒーロー』がいたら。
     きっとこいつは変わらないから、どこかで死んでしまったかもしれない。『ヒーローごっこ』で死んでいった仲間みたいに、どこかで別れる日が来たかもしれない。あるいは、他人に譲って譲って譲り続けて、餓死していたのかもしれない。
     それでも、あの時アーロンがああしなければきっと、目を付けられることもなかった。裏切られることもきっとなかった。こうして、利用されることもなかった。
     もし、の話に意味はない。他人が土足で踏み込んでいい話でもない。
     ただそれでも、確かめたかった。
     ルークがルークとして生きてきた時間を。ちゃんと、生きていてくれたと――生きていたことに、救われてよかったんだと、確かめたかった。
     重ねた時間の最後の一枚は、アーロンの知る今のルークの写真だった。一体いつ撮ったんだろう。何かふっきったみたいな目をした、コート姿の自撮りの写真。澄んだ青空がひどく眩しい。メモ書きの筆跡は、これまでと違う。きっとルーク自身が書いたんだろう。
     当たり前だ、こんなこと書くのは、こいつ以外にあり得ない。

    『ごめん、ルーク。ありがとう』

    「……バカか」
     見つかるの前提で書置きなんてしてんじゃねぇわバカ。
     ごめん、も、ありがとう、も全部こっちの台詞だバカ。
     ――死んだなんて言って、ごめん。
     ――生きててくれて、ありがとう。
     背中に穏やかな寝息を感じる。そこにちゃんと、ルークがいる。いきている。当然だ。だって、こいつは、
    「――責任取れよ、『相棒』」
     カーテン越しの夜はまだ暗い。人肌恋しい夜の向こう、眩しいくらいの青空を想う。
     どうしてか、ひどく、甘いものが食べたくなった。



    「これは――」
     ひとくち、パンケーキをかじるなり、ルークは分かりやすく固まった。
    「……んだよ」
     と、聞かなくてもなんとなくリアクションが想像できて、笑いそうになるのを必死に堪える。もぐもぐもぐ、と、三回ほど咀嚼して、ごくん、と、呑み込んでから、寝起きの気配も吹っ飛んだみたいな目がアーロンを見る。開いた口が叫ぶのは、予想通りの一言でつまり、
    「うまい――あまりにもうまい!!!」
    「あーそうかよ」
    「口に入れた瞬間に舌を押し返す弾力!甘すぎずコクのある豆乳の風味としっかりマッチしたほのかな卵の甘味!!フルーツの酸味がこれまた絶妙で――うまい!!!!あまりにもうまーい!!!」
     お前は食レポのプロかなんかか。
    「アーロン、きみはすごい!ほんっとうにすごい!」
    「あーそうかよ」
    「正直きのうの僕はきみのパンケーキを侮っていた!こんなすごいのが作れるなんて――いっそ店でも出せるんじゃないか?」
    「んな面倒くせぇことするかよバカが」
     言い返しながら、まんざらでもない気分でパンケーキを咀嚼する。昨日焼いた生地に適当にフルーツを盛り付けただけなのだけれど、まあ、悪くない出来栄えだった。原材料がほぼクソ詐欺師の差し入れってところが若干気に入らないが――まあ、食べ物に罪はない。
    「まあ、どっかのバカ犬のシロップまみれパンケーキよりはマシだな――つかお前、シロップどこやったんだよ」
     昨晩、アルバムを戻した後に探したけれど、結局棚の中にもどこにもシロップは見つからなかった。なんだか怪盗として出し抜かれた気分だ。色々な意味で。
    「あー……シロップはさ、チェズレイにちょっと怒られて」
    「ァ?」
     気まずそうにルークは頬を掻く。
    「『甘いものもほどほどにしないと身体を壊します』って――持ってかれちゃったんだよね」
    「あいつはお前の母親かなんかか……?」
     げんなりしながら言ってから、違和感に気づく。ちょっと待て。『持ってかれた?』
    「…………それ、いつの話だ?」
    「え――?昨日の話だけど」
    「ァあ???昨日????」
     タイムリー、というか、都合の良すぎるタイミングに、ひくっと小さくこめかみがひくつく。
    「丁度アーロンと入れ違いだったのかな。リカルドに野暮用があったからって、急にモクマさんと二人で来たからびっくりしたんだけど――あれ、アーロン、チェズレイから聞いてなかったのか?電話しておくって言ってたんだけどな……」
    「あのクソ詐欺師……!!!!!」
     確かに電話もあったし話はしたけど一番肝心なところは聞いてない。つか絶対わざと言わなかったなあのクソ詐欺師!!!
    「アーロン?」
    「あーーーークッソ!!!!!!!」
     八つ当たり半分にパンケーキをかっこむと、ルークの顔面に手近な丸いのをぶん投げる。
    「ぶっ!!!ちょ、アーロン何し――へ?」
     顔面で受け止めたって大したダメージにもならないそれは、丸くて赤くてニンジャのふわふわで、要するに嬉しくもない例のアレだ。
    「アーロン、これ、どうして」
    「モデル特権だとよ」
     クソ詐欺師から、なんてわざわざ正直に言ってやらない。嫌がらせ?お互い様だそんなもん。
    「やるよ、『ヒーローのお兄ちゃん』」
    「へ――?」
     数秒の間の後、かっとルークが赤面する。なるほど、適当に言ったわりにどうやら大当たりだったらしい。
    「アーロン、なんでそれ知って、」
    「は――いっちょ前にかっこつけてんじゃねーか。調子に乗ってガキの初恋泥棒になるなよ?」
     に、と笑って、足元に置いていた荷物を掴む。といっても、大した量はないけれど。
    「え、アーロン、もう行くのか?」
    「ああ、ガキどもが待ってるからな」
     ぱたぱたと追いかけてくる気配を感じながら、ルークに背を向け玄関に向かう。ドアを開ける直前で、振り返る。交わす挨拶は、いつかと同じ――いつもと同じ。

    「元気で、アーロン」
    「――あばよ、ヒーロー」

     どうせまた、すぐに会える。
     開けたドアのその先は、どこまでも高く澄んだ眩しい青空が広がっている。

     END
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    ぱんつ二次元

    DONEED後時空でカジノでルーレットするモクマさんのモクチェズ。モブ視点です。 軽やかなピアノの音色に合わせて澄んだ歌声がホールに響く。カジノのBGMにしておくには勿体ない美しい声が、けれどきっと何処よりこの場に似合う挑発的な歌詞を歌い上げる。選曲はピアニスト任せらしいのでこれは彼女の趣味だろう。
     鼻歌に口ずさむには憚られるようなその歌が、どれほどこの場の人間に響いているかは分からないけれど。
     ルーレット台の前には、今日も無数のギャラリーがひしめいていた。ある人は、人生全てを賭けたみたいな必死の面持ちで、ある人は冷やかし半分の好奇の視線で、いずれもチップを握って回る円盤を見つめている。
     片手で回転を操りながら、もう一方の手で、乳白色のピンボールを弾く。うっとりするほどなめらかな軌道が、ホイールの中へとすとんと落ちる。かつん、と、硬質な音が始まりを告げる。赤と黒の溶けた回転のうちがわ、ピンに弾かれ跳ねまわるボールの軌道を少しでも読もうと、ギャラリーの視線がひりつくような熱を帯びる。
     もっとも、どれだけ間近に見たところでどのポケットが選ばれるかなんて分かるはずもないのだけれど。
     ルーレットは理不尽な勝負だ。
     ポーカーやバカラと違って、駆け引きの余地が極端 9552

    ぱんつ二次元

    DONEED後時空で海と雪原のモクチェズのはなし。雪原はでてこないけど例の雪原のはなし。なんでもゆるせるひとむけ。降り積もる雪の白が苦手だった。
     一歩踏み出せば汚れてしまう、柔らかな白。季節が廻れば溶け崩れて、汚らしく濁るのがとうに決まっているひとときの純白。足跡ひとつつかないうつくしさを保つことができないのなら、いっそ最初から濁っていればいいのにと、たしかにそう思っていた。
     ほの青い暗闇にちらつきはじめた白を見上げながら、チェズレイはそっと息をつく。白く濁った吐息は、けれどすぐにつめたい海風に散らされる。見上げた空は分厚い雲に覆われていた。この季節、このあたりの海域はずっとそうなのだと乗船前のアナウンスで説明されたのを思い出す。暗くつめたく寒いばかりで、星のひとつも見つけられない。
    「――だから、夜はお部屋で暖かくお過ごしください、と、釘を刺されたはずですが?」
    「ありゃ、そうだっけ?」
     揺れる足場にふらつくこともなく、モクマはくるりと振り返る。
    「絶対に外に出ちゃ駄目、とまでは言われてないと思うけど」
    「ご遠慮ください、とは言われましたねェ――まぁ、出航早々酔いつぶれていたあなたに聞こえていたかは分かりませんが。いずれ、ばれたら注意ぐらい受けるのでは?血気盛んな船長なら海に放り出すかもし 6235

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