紫の章3談目「父の行方」③ 語り手:紫坂一
松野出版社からの帰り道、おれは情報を整理するため、近場のカフェに入った。テーブル席についてから、ウェイトレスを呼んでメロンソーダを注文する。それを待っている間、おれは早速スマホを持ち、とあるワードを検索していた。『鬼塚伝説』――松野さんが呟いた言葉だ。
「ダメだ……やっぱり出てこない」
伝説と呼ばれているのだから神話に基づく伝記かと思っていたが、それらしき話は一切見当たらない。鬼塚とそのまま検索すると、どうしても漫画の主人公が検索にひっかかってしまう。
おれはカバンからノートを取り出した。アナログ的なだが、頭を整理したり、忘れたくないことがあるとメモを取る癖がある。おれは早速ノートに「鬼塚伝説」と書いた。
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