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    Hiroki8koko

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    主にオリケロ関連の小説を投下します。

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    Hiroki8koko

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    小説のリハビリ2

    吸血鬼すぐ死ぬパロ オリケロ×「キッドナップ・カプチリオ」『──子供の行方不明事件。警察は誘拐の線も視野に……』

    ユセセがテレビの電源を付けると、そんな不穏な知らせが入ってきた。しかもその事件は、ユセセたち訓練兵たちの住む、この街で起きていた。

    「この近くじゃない、物騒ね……何か対策しないと」
    「ユセセー」

    ちょいちょいと腕をつつかれて、横を見てみると、同期の訓練兵、マテテがチラシを持って立っていた。

    「市内フットサル大会に行きたいの? ……どうしよう、一人じゃ心配だわ」

    この宿舎から、開催地の市内総合グラウンドまではちょっと遠い。移動の時に何かあったら……と、ユセセはあるものをマテテの首にかけた。

    「よし、防犯ブザーを持って行きなさい。何かあったらヒモを引くのよ」
    「うん。ありがとうユセセ」
    「どういたしまして。フフッ」

    そう言ってマテテを撫でる。これで少しは安心──

    「ユセやん、私のSwitchライト見なかった?」
    「アムムー、ぼーはんブザーだよー」
    「おー懐かしい。これ引っ張ると──」

    アムムがヒモを引く。だが何も起きない。二人で首を傾げていると、防犯ブザーが爆発して、二人を巻き込んだ。
    煙が晴れて、焦げた二人があらわになる。

    「……どうやら偽装して作った手榴弾と間違えたみたいだな」
    「なんでそんなもの置いてるのよバーカ!!!」


             * * * * *


    翌日、市内総合グラウンドで、予定通りフットサル大会が開催された。といっても、実際は主婦たちによるフットサルだが、サッカーを気に入ったマテテを快く参加させてくれた、気のいいおばちゃんの集まりである。
    今日はそれなりの盛り上がりを見せ、若い子にはまだまだ負けないと言わんばかりに、みんな張り切ってプレイに望んでいた。
    ──そして、日も傾きかけた夕方、フットサル大会は閉幕。おばちゃんたちにさようならを言いつつ帰路につく。

    『物騒だから、5時までには帰って来るのよ』

    フットサル大会へ行く前に、ユセセからそう言いつけられていたので、寄り道せずに真っ直ぐ帰ろう。そう心に決めててくてく歩いていると、香ばしい匂いが漂ってきた。匂いのする方を見ると、そこにあったのはお菓子のお店。『ペコポンから来た今川焼き』という看板。一所に載っている写真には、今川焼きと思わしきものと、あんこがたっぷり詰まった断面。

    「……おいしそう」

    ちょっとよだれを垂らしながら見ていたマテテ。しかし、店の前には列が並んでいる。買う頃には指定の時間を過ぎてしまうだろう。だがとても美味しそうだ、中のあんこがとても甘そう……。でも待っていたら遅くなってしまう。どうすればいいのだろう。マテテはバッグのヒモを握りしめて、喉を唸らせる。

    『すこしくらいおそくなってもへいきだよー』

    不意に悪魔が囁く。少し苦手なユセセだが、自分に対してはとっても優しいから、時間を過ぎたって笑って許してくれるかもしれない。そんな考えがよぎった。

    『おみやげにもってかえろー』

    対して天使が導く。そうだ。そうすればユセセは喜ぶし、許してくれるかもしれない。なら答えは決まった。
    マテテは列の一番後ろへ回った。


             * * * * *


    「マテテ遅いわね……」

    宿舎の前に立つユセセが呟いた。指定した時間からは45分も過ぎている、何かあったのだろうか? もしかして、今朝聞いた子供の行方不明事件に──

    「ア、ハハハ……いやまさか、ないわよそんなの。……一応電話で確認するけど」

    そうやって取り出したのはケータイとマテテの持ってきたポスター。そこには連絡先も記載されているため、用があれば電話ができるようになっている。数コールした後、電話がかかり、相手側の声が響いてきた。

    『はいもしもし』
    「あっ、どうも、ユセセです。マテテが大変お世話に……」

    少し話していると、スコップを肩に担いだアムムが帰ってきた。

    「ただいまユセや、ん……?」

    少し怪しげな雰囲気に、アムムは口をつむぐ。ユセセがなんだか落ち着かない様子だったからだ。どうやら少し話が長引いているようである。

    「……それで、マテテはどうしまし……」
    『マテちゃん? マテちゃんはもう帰ったけど』
    「えっ」

    それを聞いた瞬間硬直したユセセ。だがすぐに復活して宿舎へ入り──青ざめた顔で身代金と書かれたカバンと対策本部と記されたのぼりを抱えて走ってきた。

    「ママママ──マテテが誘拐された!!!」
    「落ち着け」


             * * * * *


    その頃マテテ。

    「ごめんよお嬢ちゃん。次ィ焼き上がるまでもう少し時間かかっちまう」
    「うー……」

    予想より手間取ってしまっていて、彼女は結構焦っていた。指定の時間はとっくに過ぎたし、ユセセはとても心配していることだろう。だがようやくきた順番を無為にも出来なかった。今川焼きはもう目の前。
    ──と、店のすぐ横に公衆電話が目に入った。これで連絡を入れておけば大丈夫だろう。お金を入れて、アムムの番号を入力、数コールした後、アムムの声が届く。

    『はい、アムムだけど』
    「あっ、アムム? あのね、かえりがちょっとおそくなっちゃうから──」

    言いかけたところで、受話器から甲高い音が鳴り響いて、驚いて肩を震わせた。どうやら入れた小銭が少なかったため、すぐ代金切れになってしまったようである。ポーチの中の小銭を確認したが、さっきので小銭は使いきってしまった。まぁ、遅くなる。と話したので多分伝わっている事だろう。そう思って、彼女は受話器を元の位置に戻した。


             * * * * *


    「マテテが心配じゃないんかいおどれ人間じゃなか!!」
    「どっかで道草食ってるんだよ! ユセやんこういう時マジ短絡的……」

    ユセセに胸ぐらを捕まれて詰め寄られているアムム。すると、アムムのケータイから着信が来た。表示を見ると、『非通知』とある。
    少し警戒しながら、アムムは電話を繋げた。

    「はい、アムムだけど」
    『あっ、アムム? あのね──』

    ……そこで急に電話が途絶えてしまった。

    聞こえてきたのはマテテの声
       ╋
    急に切れた電話
       〓
    誰かに通話を妨害された──?

    それはすなわち──というか、マテテは──

    「……誘拐されたかもしんない……」
    「ウッ……ウアアーーーーーー!!!」

    過保護同期の悲鳴が、沈みかけた夕日の空に響き渡った。


             * * * * *


    訓練所──

    「何!?マテテが誘拐されたかもしれない!?」
    『そうなんです教官ーっ!』

    次にケロン軍各小隊、へルル小隊、ディロロ小隊、雨虎潜入部隊、パズズ小隊──

    「対ノンケロンソルジャーの訓練兵が誘拐だと!?」

    「マテテさんが誘拐!? 私たちも捜索に──!」

    「彼女の生徒が誘拐されたそうだ。もしかしたら、敵性宇宙人による犯行か──」

    「各小隊一丸になって捜査だ!」

    さらには一般市民にまで、誘拐の知らせが回り──

    「娘のお友達が、敵性宇宙人に誘拐されてしまったらしいんです!」

    「ヴィラさんの生徒なら、助けない訳にはいかないよね!」

    そしてコアな人たちに──

    「マテテちゃんが凶悪な敵性宇宙人に拐われたですと!?」
    「我々のマテテちゃんが!」
    「マテテちゃーーーん!」
    「いやあんたら何なの!!?」


             * * * * *


    肝心のマテテはというと、ようやくできた今川焼きを受け取っていた。

    「はいお待ちどう! ペコポン今川焼き3個ね!」
    「やったー、いまがわやきー!」

    お金を払ってから、やっと帰路につくことができた。……かなり遅くなったけれど、仕方がない。正直に謝ろう、ごめんなさいってして、二人に今川焼きをあげよう、彼女たちの喜ぶ顔が目に浮かぶ。風呂敷に包んだ今川焼きを見て、鼻歌交じりに歩き出す。

    『──今この中継を見ているみんなー!』

    いきなり頭上から可愛らしい声音が響いてきた。見上げてみると、巨大なモニターが付いた宇宙船が浮かんでいた。音声はそこから流れているよう……

    『今、行方不明になった人を探しているの! 名前はマテテちゃん! 訓練兵の女の子よ! 特徴は角の生えた青っぽくて、赤い目をした義手の子! 見かけた人は、今表示してる番号まで連絡して! お願い! 私の恩人の生徒なの! どうか見つけて──!』

    「────」

    なにごと。

    今川焼きの完成を待っている間に何故か尋ね人になっていた。しかも捜索を呼び掛けているのは、アイドルユニット、Dream・Butterflyのラリリである。そんな著名人が呼び掛けようものなら──

    「──あっ、あいつじゃね? ラリリが言ってた訓練兵」
    「連れてったら賞金出んじゃねーか?」

    不意に後ろから、他所の訓練兵の男子の声が聞こえてきた。半ば混乱していたマテテは、驚いて逆方向へ走って逃げてしまった。

    「え? 逃げたぞ!」
    「待てやおらー!」
    「──!! ──!?!?」

    それを面白半分で追いかける男子、さらにそれに驚いてまた逃げるマテテ。こういう場合、追いかけられれば反射的に逃げてしまうもの、無理もなかったかもしれない。
    しばらく追いかけ回され、土手の上に来たところで、足がもつれて転んだ拍子に、川の方へ転がって行ってしまった。その勢いのまま何かにぶつかって跳ねて──古びた大きい桶の中へホールインワン。そのまま川に流され出航してしまった。


             ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


    かなり下流まで流された所で、桶が岸に乗り上げた。助かりはしたものの、マテテはメソメソと泣いていた。普段なら圧倒的なパワーを持つ彼女だが、パワーアームが無い今は、ただの非力な少女。今はただただ、早く帰りたくて、アムムとユセセに会いたくてたまらなかった。とぼとぼと川上に向かって歩いていると、茂みが揺れて、何かがマテテの目の前に現れる。赤っぽい色の犬に似た生き物、アンドロメディアンハスキーの群れの一匹と目がかち合ってしまった。

    『ガウァーーー!!』
    「マ゜ーーーーーーーー!!!」

    吠えられて死ぬほどビビったマテテは、変な悲鳴をあげてダッシュで駆け出した。悲鳴が癪にさわったのか、アンドロメディアンハスキーの群れがマテテに付いてきて、再び追いかけっこが始まった。
    土手をこえて、目に入った駅に駆け込んで、電子マネーで改札を通って、ちょうど出発する列車へ、扉が閉じ始めた瞬間に乗り込むことができた。完全にマナー違反だが、追ってきた群れを撒ければもう何でも良かった。閉じた扉の向こうで、ガリガリと爪を立てる音が聞こえてくる。ここまで来ることは出来ないだろう、マテテは安心しきってその場で座り込ん……

    『──次はー、ゲロン星ー』
    「ワーーーーーーーー!!!」

    車内アナウンスを聞いて絶望した。マテテが乗り込んだのは宇宙鉄道だった。降りたくても次の駅に着く頃には、もう別の惑星である。


             ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


    ゲロン星に着いて直ぐに切符売場に向かう、ケロン星までの区間の切符を買って、再び改札を通って列車へ乗り込んだ。席に座ってると、ポロポロと涙が流れた。どうしてこんなことになったんだろう、今川焼きにつられなければ、とすごく後悔していると、列車が動き始めて、アナウンスが流れた。

    『──こちらはペコポン行き、特急です。次は──』
    「アーーーーーーーー!!!(泣)」

    今度は行き先を間違えてしまった! だがもう、気付いたときには遅く、無慈悲にも列車は、六つ先の駅へ走り出した……。


             * * * * *


    ケロン星へようやく戻ったときには、もうとっぷりと日が暮れていて、街灯に光が灯る時間帯になっていた。マテテはすすり泣きながら、宿舎に一番近い駅から歩いていた。

    「──マテテー!! どこなのマテテー!!」

    今一番聞きたかった声が、前方から届いた。紫色のスカーフと帽子、ピンク色の女の子──ユセセだ! ユセセが探しに来てくれた!
    おみやげの今川焼きと、もう1つ増えたういろうを抱えて、マテテは走り出した。これでやっと、心細い思いから解放される。そう思いながら声をかけようとして────


             ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


    「いた!? ユセやん!」
    「駄目、見つからない……」

    ユセセとアムムが教官や警察に連絡して、同期たちを含めた大勢で捜索を始めて早数時間。これだけ探して、まだマテテは見つからなかった。最後にあった情報は、「市内で風呂敷を抱えて歩いている姿を見かけた」というもの。これ以降は何の報告もなく、時間だけが過ぎていくばかりだった。

    「どこに行ったのよマテテ……! マテテーーー!!」

    ユセセは必死に呼び掛け続ける。アムムも別の方へ向かった。



    その後ろに、マテテの持っていたカバンが落ちていたことに気づかず、路地裏の闇は、二人の様子を嘲笑うように、延々と拡がっていた──



    to be continued…
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