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    kuromituxxxx

    @kuromituxxxx

    文を綴る / 文ス、刀、まほやく中心に雑多

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    デア時空剣伊

    #剣伊
    Fate/Samurai Remnant saber×Miyamoto Iori

    【剣伊】名前を呼ぶよ セイバー、とイオリは私をそう呼ぶ。

     かつてと同じ、声音のやわらかさで。
     けれどここはカルデア。
     私を喚んだのはイオリではない。私のマスターはイオリではない。
     ここにいるイオリは私と同じ英霊の身。
     そして英霊として再び出会ったイオリにかつて江戸の地で行われた盈月の儀の記憶はない。
     私のマスターであったことも、
     共に駆け抜けた日々の様々な瞬間も、抱いた感情も。

     それでも、
     それなのに、
     イオリは私のことをセイバーと呼ぶ。

    「イオリ、何度も云うが私はもうきみのセイバーではないし、きみは私のマスターじゃない」
    「そうだな」
    「ここには私以外にもセイバーはたくさんいるし、何ならきみだってセイバーだ」
    「そうだな」
    「だから私のことはもう、……」
     そうでないと錯覚してしまう。
     私が、私だけがきみの唯一無二で、たったひとりであると。
     そんなのはもうとうの昔に過ぎ去った、遠い日々のことなのに。
    「解ってはいるのだが……」
     イオリの、蒼い瞳が私を見る。
     深い、空と海の果てを混ぜ合わせたような蒼の中に私が映っている。
    「どうしてだろうな、貴殿のことはセイバーと呼ばなければならないような気がして」
    「何か心当たりはあるか?」そうして、困ったようにわらう。
     イオリは解っているのだ、その理由は自分が置いてきてしまったものの中であるということが。

    ―― セイバー きみにはそう呼んでほしい、イオリ

     初めて私の名を呼んだきみに私が云ったこと。
     空っぽの私の手のひらを掴んで掬いあげたきみの声。
     あの夜の出来事を、覚えているのが私だけだったとしても。

    「どうだろうな。どうだっただろうな」
     覚えていないなら仕方がない。
     ならばもう少し。
     あと少しだけ、このままで。


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