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    kuromituxxxx

    @kuromituxxxx

    文を綴る / スタレ、文ス、Fate/SR中心に雑多

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    デア時空剣伊

    #剣伊
    Fate/Samurai Remnant saber×Miyamoto Iori

    【剣伊】名前を呼ぶよ セイバー、とイオリは私をそう呼ぶ。

     かつてと同じ、声音のやわらかさで。
     けれどここはカルデア。
     私を喚んだのはイオリではない。私のマスターはイオリではない。
     ここにいるイオリは私と同じ英霊の身。
     そして英霊として再び出会ったイオリにかつて江戸の地で行われた盈月の儀の記憶はない。
     私のマスターであったことも、
     共に駆け抜けた日々の様々な瞬間も、抱いた感情も。

     それでも、
     それなのに、
     イオリは私のことをセイバーと呼ぶ。

    「イオリ、何度も云うが私はもうきみのセイバーではないし、きみは私のマスターじゃない」
    「そうだな」
    「ここには私以外にもセイバーはたくさんいるし、何ならきみだってセイバーだ」
    「そうだな」
    「だから私のことはもう、……」
     そうでないと錯覚してしまう。
     私が、私だけがきみの唯一無二で、たったひとりであると。
     そんなのはもうとうの昔に過ぎ去った、遠い日々のことなのに。
    「解ってはいるのだが……」
     イオリの、蒼い瞳が私を見る。
     深い、空と海の果てを混ぜ合わせたような蒼の中に私が映っている。
    「どうしてだろうな、貴殿のことはセイバーと呼ばなければならないような気がして」
    「何か心当たりはあるか?」そうして、困ったようにわらう。
     イオリは解っているのだ、その理由は自分が置いてきてしまったものの中であるということが。

    ―― セイバー きみにはそう呼んでほしい、イオリ

     初めて私の名を呼んだきみに私が云ったこと。
     空っぽの私の手のひらを掴んで掬いあげたきみの声。
     あの夜の出来事を、覚えているのが私だけだったとしても。

    「どうだろうな。どうだっただろうな」
     覚えていないなら仕方がない。
     ならばもう少し。
     あと少しだけ、このままで。


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    kuromituxxxx

    PROGRESS無数に存在する並行世界のひとつにて、転生できる魂を持つアベンチュリンとその専属医になるレイシオのはなし
    【レイチュリ】明日の僕もどうか愛していて 1 明日にはきっと僕は君のことを忘れている。


     ああ、早く。早く終わればいいのに。
     今日もまた閉め忘れたカーテンから差した陽の光で目を覚ます。朝の透明なきんいろの光の中で瞼を開くのは孤独を確かめることによく似ている。そこにあるのは自分ひとりだけの体温で、ひかりの中にいてもそれに自分の輪郭が溶けることはない。
     アベンチュリンは枕元に置かれた端末に手をのばす。
     液晶に表示された今日の日付を確認する。僕の記憶が確かなら、三日飛んでいる。
    「僕は今回も死ねなかったのか」
     ぽつりと零した言葉も朝の光の中に落ちて溶けてどこかへ行ってしまう。
     ベッドから抜け出して、ひた、と床に裸足の足を着ける。痛みはない。洗面所で鏡を見れば記憶の中と寸分変わらぬ姿かたちのままの自分がいる。平均的な男性より幾分小柄で痩身のからだ、窓から差していた光に似たきんいろの髪、そこから覗くピンクと水色のまるい瞳、首元には奴隷の証である焼印。鏡で自分の体を隈なく確認してみたけれどひとつとして傷痕はなく、だから今回も僕は前回の自分がどう死んだのかがわからない。何度死んでもどうしてか、死んだときのことは思い出せないのだ。
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