夜が明けてすぐ、目覚ましの音もしないうちにベッドを降りた。
新しいベッドは成人男性が二人寝ても余裕があるほどの大きさで、降りるときも音を立てない。
顔を洗って、着替える。ネクタイは意識しなくてもつけられるが、ガンホルダーの調整は念入りに。
最後にトレードマークとも言える外套を羽織る。
家を出る前に玄関の傍の全身鏡に向かってくるりと一回転。
シャツのボタンもずれていないし、もう寝癖もついていない。
腕輪も腕時計もばっちり身につけている。
他には問題はないと確認をしてひとつ頷く。
「行ってきます」
返事が返ってくる訳もないと言うのにいつものように呟いて、そっと家を出た。
人の気配がしない細い道で立ち止まり、振り返る。
すぐ近くでこちらを見ていた男に問う。
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