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    asumafriday

    遊馬(@asumafriday)の壁です。五悠。

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    【その7】呪力はなくなったけど記憶と金と顔と足の長さは繰り越したさとるが、呪力も記憶も無い恵と野薔薇を拾って育ててたら、悠仁と出会っちゃった話。の続き〜!

    #五悠
    fiveYo

    かぞくのとびら(The way to say I'm home.)7.


    「五条さんちのテレビ、4分割してもでけえ!すげえ!」

    ゲームはひたすらうるさく、楽しかった。 3人で遊ぶことはたまにあっても、そこに誰かが加わって4人で対戦するなんてのは初めてだった。

    「いたどりおそい!」
    「俺、初めてなんだよ〜」

    今まで使ったことがなかったオレンジ色のコントローラーは、悠仁のためにあったかのようによく馴染んでいた。

    「ごじょうさんもおそいです」
    「は?」
    「うはは、大人気ねえなあ」

    最強じゃなくなった今、僕だって甲羅に当たるしバナナで滑る。悔しい。勝ったり、負けたり、笑ったり。気づけば子供たち二人はカートではなく船を漕いでいた。
    あ、風呂に入れそびれちゃった。

    「五条さん、二人とも電池切れみたい」
    「前と同じだね」

    小声で笑いながら、優しく抱え、寝室へ運んだあとは、あんなに騒々しかったリビングがしんと静まり返っていた。

    「よっぽど嬉しかったんだろうね。ずっと悠仁に会いたがってたから」
    「今日は……ほんとありがとうございました」

    悠仁は改めて頭を下げた。声は、少し元気になった気がする。

    「恵が見つけたんだよ。いたどりだ、って。でもって、野薔薇が気づいた。いたどりこまってる、って」
    「五条家の素晴らしいチームプレイに助けられました」
    「そんな大層なもんじゃないけどね」

    今思ってもフォーメーションYってなんだろうな。

    「僕飲まないけど、ビールいる?」
    「あ、や、チャリあるから……」
    「そうだった。じゃあコーヒー入れるね」
    「ありがと、手伝う!」

    食後と同じようにキッチンに並んで立つ。コーヒーメーカーのスイッチの音が響いた。

    「今日ね、俺。久しぶりに誰かと飯食った」

    言いながら悠仁はマグカップを2つ並べた。僕は角砂糖の入ったポットを出す。

    「楽しかった?」
    「うん」
    「悠仁、恋人、つくればいいのに」

    言ってしまってからしまった、と思う。これで「そーだね!」なんてすぐに彼女なんて作ろうもんなら向こう50年くらい立ち直れないんですけど。だけど悠仁は「五条さんこそ」と困ったように笑うだけだった。
    そして、その空気を変えるように、

    「ずっと思ってたんだけどさ、あれ、大作だね」

    カウンターから見える正面の壁を指した。3人揃って熱を出した日、目を離した隙に描かれた壁の落書き…いや、芸術。恵が描いたのは、大きな犬。野薔薇が描いたのは女の子二人。「おともだちとしょっぴんぐをしているところ!」だと言っていた。

    「あー……。でしょ」

    あの日の僕がこの芸術に気づいた瞬間を思い出して、くくっと喉が鳴った。

    「もうね、大作すぎてちゃんとサインも書きなって言って書かせた」

    大袈裟にため息を吐いてみせると、悠仁は、わは、と白い歯を見せた。

    「五条さんのそーゆーとこ、俺、好き」
    「エァ?!」

    先生のそーゆーとこ、俺、好きだよ!
    頭に響いたあの頃の、声。
    硝子からは「クズ」、真希たちからは「バカ」、七海、伊地知……周りからは割と酷い扱いを受けてきたし、そうなるような行動を取っていた自覚も、まあ、多少はあるけどさ。でも、悠仁だけはそれらも全部ひっくるめて「好きだよ」って笑ってくれていたよね。
    あのときと、同じ顔しないでよ。
    サングラスしてたって、目が眩むじゃん。

    「……やっぱ、だめ」

    勝手に口が動いていた。

    「だめ?なにが?」
    「さっきの……」
    「さっき?」
    「恋人でも作ればっての」
    「五条さん……?」
    「あ、あのさ」

    悠仁が「ん?」と不思議そうに僕の顔を覗き込む。

    「……悠仁、周りの人と面倒なことになっちゃうって言ってたじゃん」

    平静を装うと、余計に声が上滑りする。

    「蒸し返してごめんね」
    「うん……?」
    「あの、大変申し上げにくいんですけど……」
    「突然の敬語」
    「僕も……その、悠仁にとっての面倒な人の1人になりそうでして……」

    いや、既にもう、なってるな。白状すると今日だって打算もあった。今この瞬間も。弱ってるところに付け込もうとしてる。

    「え、それってどういう……?」
    「えーっと、その、」

    悠仁がキョトンとして首を傾げた。コーヒーメーカーがコポコポ小さな音を立ている中に、僕の、

    「悠仁のことが、好きって……いうか……そういう意味で……」

    あまりにも拙い、子供みたいな告白。

    悠仁は僅かに目を見開いたあと、狼狽したようにキョロキョロして、しまいには俯いてしまった。僕と悠仁の間に重たい空気が落ちて、沈黙が二人を支配した。そりゃそうか。こうなるのが嫌だって相談してくれたそばから告白って、正気かよって思うもんな。
    いまのなしって、冗談だよって、ごまかさないと。

    「あの、悠」
    「めんどう……じゃ……ねーです……」
    「え」
    「お、俺も、五条さん……す、好きだから……そういう意味で……」

    聞こえたのは蚊の鳴くような小さな声だった。言葉の意味が最初は入ってこなくて、一拍、反応が遅れた。

    「俺、帰りの駐車場で会いたくてめちゃくちゃ早く帰り支度したり、看病つって家まで押し掛けたり……き、きづいて、なかった……?」
    「……え」
    「連絡先交換して浮かれてたし……少しでも気引きたくてネコの写真とか送ったりして…………本当は早く会いたかった」
    「……え」
    「五条さん…いつもかっこいいし、優しいし、子供たちのこと真剣に考えてて、それに、今日だって……ぴ、ピンチのとき助けてくれて、……す、好きにならないわけねえじゃん…」
    「えええ?!は?!えええ?!」
    「ちょ、うるっさ!子供たち起きるだろ!」
    「だって……」
    「だってじゃない……」

    俯いてしまった悠仁の表情はわからないけれど、項垂れた首や耳は真っ赤だった。だって、そんなの、

    「そんなの、き、聞いてない」
    「言えねえだろ……んなこと……」
    「ねえ悠仁……顔、見せてよ」

    思わず手の甲で掬うように頬を撫でると、悠仁は「ごじょうさん」と僕を見上げた。琥珀色の瞳が、切なげに揺れていた。

    「僕の……恋人になってくれませんか……」

    僕のだか悠仁のだかもわからない、心臓の音が聞こえる。

    「…………はい」


    どうか、子供たちが、起きませんように。
    そう思いながら、僕はその唇にそっとキスをした。



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