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    kidd_mmm

    @kidd_mmm

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    ノスクラともクラノスともつかないやつ6
    第一村人。

    #クラージィ
    clergy
    #吸死
    suckedToDeath
    #吸血鬼すぐ死ぬ
    vampiresDieQuickly.

    C-3 C-3
     
    「おーい、そこのあんた! ヘイ、ユー!」
     通りの向こうからクラージィを呼び止める者がある。見覚えのある姿だ。頭と口を布で覆い、奇抜な模様の服を着た吸血鬼。シンヨコに来て最初に言葉を交わした相手だ。
    「やっぱりそうだ、この間の! あれからどう……良いようになったみてえだな」
     困っているならあの建物に向かえ。そう言ってドラルクキャッスルマークⅡを示してくれたのはこの男である。クラージィは男に心から礼を述べた。
    「ありがとう、とても」
    「お、日本語!」
     並んで歩きながら互いに名を名乗る。男の名前は長く、クラージィには何度繰り返しても上手く言うことが出来なかった。
    「仕方ねえ、ケンでいいよ。ケン」
    「ケン、さん」
    「そーそー」
     ケンは吸血鬼用の血液パック自販機の前で足を止めた。慣れた手つきで二パック買って、ひとつをクラージィにすすめた。クラージィは断った。
    「いいから。お近づきのしるしってやつ」
     それから近くの公園でクラージィとケンはベンチに座った。ケンはパックの中身を一気に飲み尽くす。クラージィはパックを持ったままどうしたものかと考える。
    「飲まねえの?」
    「まだ、慣れないです」
     ドラルクからミルクで割って飲む小技を教わって、これまではそれで乗り切って来たのだが。
    「え、もしかして成りたて? 吸血鬼」
    「エート……」
     覚えたての日本語で、クラージィはなんとか説明する。鏡を見せられるまで、自分が吸血鬼になったことに気付いていなかったこと。誰に噛まれたのか覚えていないこと。
    「マジかよ、朝になる前に声かけて良かったぜ。じゃあ、『親』噛んでねえのか」
    「噛む? なぜ?」
     あーそこからか、とケンは頭を搔いた。
    「誰かに噛まれて吸血鬼になった奴はさ、噛んだ奴に支配されんのよ。んで、噛み返して独立――自由になるわけ」
    「しはい?」
    「えーと、ドミネート? コントロール? うーん、大抵はそのへんチャッチャと済ませちまうからなー。支配つっても実際どうなるのか、俺にはわかんねえ、悪い。ところで」
     ケンはベンチから立ち上がった。つられてクラージィも立ち上がり、数歩前へ出る。ケンはクラージィに向き直った。
    「よよいのよい!」
     ケンは石、クラージィは鋏。
     クラージィは困惑した。利き手は自分の意思と関係なくジャンケンに応じ、負けるとジャケットを脱いで脇に抱えた。催眠の一種だろうか。クラージィは警戒し、無意識に後退する。半歩以上下がれない。背後に見えない壁のようなものがある。催眠と結界術の合わせ技? バカな!
    「ケンさん? これ……!」
    「決まってんだろ、こないだの勝負の続きよ! あんたあの時より厚着だからな、フェアな勝負ってわけだ」
     落ち着け。クラージィは自分に言い聞かせる。ケンが急にその稀なる能力を自分に向けてきた、その意図がわからない。神よ、私にふたたび戦えと言われるのですか?
    「よよい!」
     二戦目が来る。
     
     * * *
     
    「フッ、良い勝負だったぜ」
     全裸で何を言っているんだこのひと、とは言葉に出さず、クラージィはジャケットの袖に腕を通す。ケンはクラージィよりよほど着込んでいた。フェアとはいったい何だろうか。
    「私の勝ち? ですか? でもなんで負けたら脱ぐ?」
    「こっちも説明必要だったかー」
     よくわからないが、ジャンケンで片のつく話で良かった。ケンは脱いだ衣類をまとめている。寒いから早く着たらいいと思う。
     遠くからロナルドと、ジョンを抱いたドラルクが走って来る。
    「クラージィさん! 大丈夫……え? 勝ったの?」
     ロナルドはかなり驚いているようだった。ほどなく一台の車が到着し、全裸のケンを載せた。ロナルドは車に乗っていた女性と話しをている。
    「ご心配なく。留置場みたいなものですよ」
     ドラルクがクラージィの隣に来て言った。
    「シンヨコ二大ポンチの片方との遭遇、ご無事で何より」
     クラージィはケンの話について聞くことにした。
    「ドラルク。彼が、『親』の吸血鬼を噛む、という話をしていたんだが、何のことだろう」
     ケンとは日本語で話していたので、クラージィには理解できていない部分があると思ったのだ。母国語で話せる吸血鬼がいて良かった。
    「あ、そうか。モジャモジャさんは『親』を噛まないといけないのか。しまった、忘れていたぞ。独り立ちの儀式みたいなものです」
    「彼は『支配される』と言っていた」
     ドラルクは、ふむ、と空を睨んだ。
    「古い吸血鬼に噛まれた場合の話ですな。私は生まれたときから吸血鬼だったし、儀式は必要なかった。支配される感覚は私にはわかりません。モジャモジャさん、もしかしてなにか、違和感が?」
     クラージィは少し考え、結局首を傾げた。
    「なんだよー、内緒話か?」
     車が走り去るのを見送ったロナルドが戻ってきた。
    「モジャモジャさんの独り立ちの話だよ」
     ドラルクはジョンを撫でながら答えた。
    「そっか、日本語もずいぶん上達したしな。就労支援とか……」
     ロナルドが言うのは、クラージィのこの街でのことだ。「そっか、日本語もずいぶん上達したしな。就労支援とかヒナイチに聞いてみるか……」
     ロナルドが言うのは、クラージィのこの街でのことだ。
     この街に来た最初の夜、ドラルクは「これからしたいことは」とクラージィに尋ねた。『親』を探しに行くもよし、ほっといてフラフラするもよし。祖国へ帰るもよし、この街に落ち着くもよし。どこに行き、何をしても良いと、ドラルクは言う。
     何をするにしても、まずは生活の基盤を整えなければならない。ドラルクから受けている支援もきちんと返したい。『親』の問題は……当面困っていないし、その後で良かろう。
    「仕事みつけて……皆さんに、お礼参りしたい」
    「どこで覚えたのその言葉?」
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    kidd_mmm

    TRAININGノスクラともクラノスとのつかないやつ16
    アカジャというか再会したやつ見る前の構想そのままで終わりまで書く予定なので嫌だったらゴメンね
    C-8C-8

     いくつかのドアの前を通り過ぎて、教えられた部屋に入る。壁際にクローゼットと整えられたベッド、それから正面の書き物机をはさんで、本棚、姿見。掃除の行き届いた居心地の良い部屋だ。ベッドの上には新品のパジャマまで用意されている。
     クラージィは柔らかいベッドに腰を降ろし、行儀悪く仰向けに倒れた。指で唇に触れる。まだ血と体温の味が口の中に残っている。なかなか牙の入らない肌の弾力も。
     意外なことに――いや当然なのか、その味と感触は不快なものではなかった。自分で予想していたほどの抵抗も忌避もなく、かえって困惑するほど円滑にことは済んだ。
    (いや、円滑……ではなかったな)
     ノースディンは何も言わなかったが、かなり痛かったのではないだろうか。元から青白い顔が真っ白になっていた。その場に残してきてしまったのはまずかったように思う。心配だったが、棺までついていくのはさらにまずかろうとクラージィは思った。ドラルクからは、棺のありかは吸血鬼の社会において大変繊細な話題と聞いている。
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