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    kidd_mmm

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    ノスクラともクラノスともつかないやつ15

    #吸血鬼すぐ死ぬ
    vampiresDieQuickly.
    #吸死
    Kyuushi
    #クラージィ
    clergy
    #ノースディン
    northDinh

    N-8N-8

     入浴と着替えを済ませたクラージィを、ノースディンは暖炉の前で迎えた。すでに夜明けの近い時間だ。窓にはカーテンが引かれている。
    「もうニンニク臭はしないな、ひと安心だ」
    「……血を吸わないとダメか?」
     相変わらずクラージィは視線だけを壁に向けている。理由がわかっているとはいえ、視線を合わせて貰えないまま会話をするのがノースディンには少々辛かった。
    「嫌なのか? 血が」
    「そういうことでは無いんだが……パック詰めの血液しか飲んだことがないので、血が出るまで噛みつくのが、ちょっと」
    「いや、血を出すために噛むんだぞ? 痕も残らん、安心して噛め。手首か、首筋か、どっちがいい?」
    「普通は?」
    「首だな」
    「じゃあ、それで」
     ノースディンはタイを外してシャツの襟を少し広げた。クラージィから顔を背けて首の側面を晒し、頸動脈のあたりを指で叩いて示す。
     躊躇するような息遣いがあったあと、数歩近づく足音。
    「……失礼」
     正面から背中へ腕が回され、両肩をしっかり掴まれる。巻きの強い髪が頬に当たり、プツ、と肌に牙の刺さる音がした。牙の先が皮下に食い込んでいく。
    「いッ……!」
     ドラウスめ、『結構』なんてもんじゃないぞ。ノースディンは歯を食いしばり、息を止めて痛みに耐える。牙をたてるべき位置がずれている。出血が少ないせいで、おそらく必要以上に強く深く噛んでいるのだ。
     クラージィが誰かを噛むのは初めてだろうから、上手くいかないのは仕方のないことだ。ノースディンは考える。ここは『親』として見守って……何度も噛み直すんじゃない!
     試行錯誤するうち、クラージィは何とか適切な位置に牙を刺すことに成功したようだった。傷口からあふれた血はノースディンのシャツを染めて、胸から腹へ流れ落ちていく。
     ようやく痛みから解放されて、ノースディンは荒く息をついた。少し遅れて、視界が暗くなる。よろめきそうになるところを、どうにか踏ん張って姿勢を保つ。クラージィがノースディンの首から顔を離し、軽く咳き込んだ。
    「吸えた……と、思う」
     クラージィは唾液と血で汚れた口元を手の甲で拭った。
     ノースディンの足元がふらつき、クラージィが咄嗟に支えた。ノースディンは支えられながら近くの椅子に辿り着き、腰を下ろした。床に膝をついたクラージィの赤い眼が、すぐ傍でノースディンの顔を覗き込んでいる。
    「顔色が悪い」
    「大した事じゃないさ、少し休めば治る。それより」
     ノースディンは両手でクラージィの頬を包んだ。
    「顔をよく見せてくれないか、クラージィ」
     クラージィはノースディンの掌の間でくすぐったそうに目を細めた。
     ノースディンの口から笑みが漏れた。 

     * * *

     クラージィに台所から持ってこさせたボトル入りの血液をノースディンは少しずつ飲みくだす。
    「吸血鬼の怪我には、血を飲むか、傷口に浴びせるかだ」
    「なるほど」
     ふらつきも収まったし、噛んだ跡からの出血も止まっている。クラージィはまだ心配しているようだった。
    「もう休んだほうがいいんじゃないか?」
     夜明けの淡い光がカーテンの端から入りこんで壁に滲んでいる。
    「そうだな。部屋を用意してあるから、お前もそっちで休むといい」
     ノースディンは部屋の場所をクラージィに伝えた。
    「ノースディンは?」
    「私は、自分の棺がある」
    「そうか。おやすみ、ノースディン」
    「おやすみ、クラージィ」
     クラージィが退室した後も、ノースディンはしばらくそのまま座っていた。着ているシャツは噛まれた側の生地が血で濡れて、肌に貼り付いている。
    「本当にシャツ一枚ダメになったな……」
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    kidd_mmm

    TRAININGノスクラともクラノスとのつかないやつ16
    アカジャというか再会したやつ見る前の構想そのままで終わりまで書く予定なので嫌だったらゴメンね
    C-8C-8

     いくつかのドアの前を通り過ぎて、教えられた部屋に入る。壁際にクローゼットと整えられたベッド、それから正面の書き物机をはさんで、本棚、姿見。掃除の行き届いた居心地の良い部屋だ。ベッドの上には新品のパジャマまで用意されている。
     クラージィは柔らかいベッドに腰を降ろし、行儀悪く仰向けに倒れた。指で唇に触れる。まだ血と体温の味が口の中に残っている。なかなか牙の入らない肌の弾力も。
     意外なことに――いや当然なのか、その味と感触は不快なものではなかった。自分で予想していたほどの抵抗も忌避もなく、かえって困惑するほど円滑にことは済んだ。
    (いや、円滑……ではなかったな)
     ノースディンは何も言わなかったが、かなり痛かったのではないだろうか。元から青白い顔が真っ白になっていた。その場に残してきてしまったのはまずかったように思う。心配だったが、棺までついていくのはさらにまずかろうとクラージィは思った。ドラルクからは、棺のありかは吸血鬼の社会において大変繊細な話題と聞いている。
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