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    kidd_mmm

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    ノスクラともクラノスともつかないやつ10
    出禁ヒゲ。

    #吸血鬼すぐ死ぬ
    vampiresDieQuickly.
    #吸死
    Kyuushi
    #ノースディン
    northDinh
    #クラージィ
    clergy

    C-5 C-5

    「波ァ!」
     ヨセフの杖が光る。ギルドの中は大混乱になった。
    「春先の薄着から透ける油断した毛……ッ!」
    「雨粒がとどまりそうな鎖骨!」
    「腰骨のラインを後ろから見たときの丸みを帯びた感じが」
     退治人たちが慌てふためき、滅茶苦茶なことを口走る。
    「ヨセフ!?」
    「ははは! Y談の栄えあれ!」
     ヨセフは思いもよらぬ駿足で去り、退治人たちはヨセフを追って出て行った。あとにはギルドマスターとドラルクとジョン、そしてクラージィが残された。
    「今の、何ですか? ヒプノザ?」
     ギルドマスターは日本語で答えたが、クラージィには理解できなかった。代わりにドラルクが答える。
    「隠している性癖をさらけ出す催眠です。モジャモジャさん、耐性があるんですかね」
    「違うと思う。私は、たぶん何もされなかった」
     ヨセフは最初から退治人たちを標的にするつもりで、クラージィに関心があるふりをしていた、ということだろうか。でも、なぜ。
     不意に、クラージィは軽い目眩を覚えた。
     ――まだ生きたくはないか、命を繋ぎたくはないか。
     クラージィは誰かの声を思い出した。
     ――執着はないのか。一つでもあるなら、答えろ。
     寒さと痛みと飢えしか無かったはずの記憶に、急に出てきた、誰か。春だったのに吹雪の夜のように寒かった、あの場所にいたのは誰だ。
    「『吹雪の悪魔』……ノースディン?」
    「ハァ?」
     ドラルクが間の抜けた声を出した。
    「どうして急にその名前が出てくるんです、貴方」
     まだ杭を持っていた頃、クラージィは様々な吸血鬼たちと対峙した。殺さなかった二人。さすらい人となってから出会ったヨセフ。この街に来る以前に限れば、互いに顔を知る吸血鬼は三人だけだ。なぜ今まで思いあたらなかったのか。
     クラージィは額に手をあてて考える。
    「ドラルク、私の『親』は――」
     クラージィは自分の記憶をドラルクに言えなかった。静かになったギルドの入り口に新たな客が現れたのだ。
    「黄色め、粋なことでもやったつもりか」
     ドラルクは天敵にでも会ったかのような顔だ。ジョンは不愉快そうに舌を出している。ギルドマスターは眉間にしわを寄せた。
     ノースディンがギルドの入り口にいた。ノースディンは何か言いかけて口を開いたまま、その場に立ち尽くしているようだった。その視線はクラージィの上から動かない。
     ギルドマスターはカウンターの中で腕を組んだ。
    「招きませんよ、『氷笑卿』。また乗っ取られてはたまりませんからね」
    「ヒャハハーッずーっと立ってろ出禁ヒゲェーッ!」
     ドラルクはジョンを抱いたまま高笑いした。ジョンも舌を鳴らしてブーイングを示す。クラージィは戸口に立つノースディンと、彼に敵意を示す面々の間に立っていた。
     ギルドの戸口にもう一人、白髪頭の吸血鬼が顔を出した。
    「お父様! どうしてここに」
     ドラルクを見て白髪の吸血鬼は一瞬顔を明るくしたが、すぐに真面目な顔に戻った。
    「ドラルク、ひとを探しているんだが――」
    「クラージィ、お前が招いてくれないか」
     ノースディンは請うように腕を伸ばす。
     クラージィは理由もわからずぎくりとした。全身の皮膚がざわめく。相手の視界に自分がいる、それだけで震える、この歓喜! 戸口からこちらを見ている吸血鬼が、自分に最も近しい血族だ。もはや何の疑問もない。このひとが言うなら何だって――今の今まで忘れていたのに?
     単純な疑問がクラージィに思考を維持させた。
     ――これが『支配』か!
     クラージィだってすぐにでもノースディンを招いてやりたい。招いて欲しいと言われていなければ、こちらから傍に行ってやりたかった。だが、それが自分の本心なのか、『支配』によるものなのか判別できない。気付かぬうちに足が数歩、戸口に向かっている。いまや自分の判断は信用できない。どうしたらいい。
    「た……タイム!」
     クラージィはやっとのことでひと言を発した。嫌な汗が首筋を落ちてゆく。
    「タイム!?」
     ノースディンが復唱した。
    「す、すまないノースディン、ちょっと待って欲しい。……ギルドマスターさん、彼を招きたいです。ダメですか?」
     ギルドマスターの返事より先にドラルクが提案する。
    「いや、場所を変えましょう。師匠(せんせい)、お父様、いいですね?」
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    kidd_mmm

    TRAININGノスクラともクラノスとのつかないやつ16
    アカジャというか再会したやつ見る前の構想そのままで終わりまで書く予定なので嫌だったらゴメンね
    C-8C-8

     いくつかのドアの前を通り過ぎて、教えられた部屋に入る。壁際にクローゼットと整えられたベッド、それから正面の書き物机をはさんで、本棚、姿見。掃除の行き届いた居心地の良い部屋だ。ベッドの上には新品のパジャマまで用意されている。
     クラージィは柔らかいベッドに腰を降ろし、行儀悪く仰向けに倒れた。指で唇に触れる。まだ血と体温の味が口の中に残っている。なかなか牙の入らない肌の弾力も。
     意外なことに――いや当然なのか、その味と感触は不快なものではなかった。自分で予想していたほどの抵抗も忌避もなく、かえって困惑するほど円滑にことは済んだ。
    (いや、円滑……ではなかったな)
     ノースディンは何も言わなかったが、かなり痛かったのではないだろうか。元から青白い顔が真っ白になっていた。その場に残してきてしまったのはまずかったように思う。心配だったが、棺までついていくのはさらにまずかろうとクラージィは思った。ドラルクからは、棺のありかは吸血鬼の社会において大変繊細な話題と聞いている。
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