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    サマイチ♀
    深夜と明け方の間に。2人きりの時間を。

    #サマイチ♀

    暑かった頃は明るくなっていたのに、すっかり肌寒くなった今はまだ薄暗い。
    身動ぎをしたベッドのシーツは室温に冷やされてひんやりとしていた。

    ふと目覚めた一郎は枕元のスマホを手繰り寄せる。
    スマホの明かりに目を細めてしまう。
    ロック画面に表示されたのは朝5時。
    もう一眠りしたっていいのに、ベッドから下りて椅子にかけていたパーカーを羽織った。

    フローリングもまた冷やされていて、裸足で歩くには少しばかり冷たい。
    しんと静まり返った家の中。二郎も三郎も当然だがまだ寝ている。
    起きることはなかろうが、起こすこともないと、音を立てないように階段を下りる。
    そして、ゆっくりと玄関の鍵をあけ、薄く開けた扉から外に出た。

    「さむ」

    中よりも外は更に冷える。
    腕を抱くようにして、階段を上っていく。
    階段の先、屋上へと続く扉のドアノブを掴むと金属のせいか冷たい。
    もうすっかり冬だ。
    せめて靴にしておけばよかった。
    足元のサンダルを少し後悔しながら屋上へと出た。

    シンジュクを眠らない街というが、イケブクロも負けてはいないだろう。
    あちらこちらと明かりのついた街並み。
    ビルの隙間から見える大通りにはこんな時間だというのに車が走っている。
    びゅうびゅうと吹き付ける風の冷たさに首を竦めながら、眼下の街を見下ろす。

    いつまでもここにいたら風邪をひいてしまうかもしれない。
    突っ込んでいたポケットから手を引き抜き、少し震える指先でスマホを操作する。
    ロックを解除し、待受画面の緑のアイコンをタップする。
    スクロールを一度して現れた名前のプロフィール画面を開き、通話ボタンをタップした。
    耳に当てると画面の冷たさと共に、コール音が聞こえてくる。
    軽やかなメロディが二度、三度と繰り返される。
    あと三回鳴っても切れなければ、自分から切ろう。
    カウントを始める。
    一回、二回。
    音は途切れない。
    駄目か。
    切ろうとして耳を離そうとした瞬間。

    『一郎?』

    ぶつりとコール音が切れ、低い声が聞こえてくる。

    『おい』
    「……おはよう、左馬刻さん」
    『おはようなんて時間か?』
    「ならこんばんは、か」

    電話の向こうからは深いため息。

    『どうした?』
    「何も」
    『何もなくてこんな時間に掛けてきたのか?』
    「左馬刻さん、帰ってきたかなぁって」
    『丁度帰ったところだ』
    「寝るところだった?」
    『まぁな』
    「そっか。ごめん」
    『いいけどよ。……本当に何もないのか?』

    寝不足なのだろう。
    不機嫌混じりなのを抑えようとしてくれている優しい声。

    「たまたま起きたから、起きてるかなって思っただけ」
    『そうか』
    「寝るの邪魔してごめんね。もう切るよ」
    『一郎』
    「なに?」
    『家に牛乳は?』
    「あるよ」
    『マグカップに牛乳いれてレンジで温めろ。本当ならブランデーでもいれたらいいだろうが、そんなもんないだろうしな』

    未成年しかいない家に酒があったら大事だ。

    「ホットミルク飲むの?」
    『温かい方がよく寝れるだろ』
    「トリプトファンもあるし?」
    『なんだそりゃ』
    「牛乳に入ってるよく寝れる成分みたいなやつ」
    『よく知ってんな。漫画か?』
    「そう。左馬刻さんにも言われたし飲んでから寝るよ」
    『そうしろ。今日も仕事あんだろ』
    「うん。左馬刻さんも?」
    『俺は夕方まで寝れる』

    ヤクザの仕事は基本的に夜。
    羨ましいばかりだと欠伸をこぼす。

    「眠くなってきたし寝るね」
    『そうしろ。おやすみ』
    「おやすみ」

    通話を切って顔を上げると、そんな話したつもりはないのに、空が明るくなってきていた。
    こうしてのんびり見ていると眠るタイミングを逃してしまうと屋上に背を向ける。
    せっかく眠くなってきたのだから早くベッドに戻ろう。
    けれどその前に。
    ぽかぽかの心と違って、すっかり冷えた身体をホットミルクで温めよう。
    少し軽い足取りで、そっと階段に足をかけた。
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    もろごりら

    PROGRESS全然書けてないです。チマチマ進めます。
    左馬刻が両目右腕右脚を失った状態からスタートしますので身体欠損注意。
    何でも許せる人向け。
    左馬刻が目を覚ますとそこは真っ暗だった。真夜中に目覚めちまったかとも思ったが、何かがいつもと違っている。ここが自分の部屋ならば例え真夜中であっても窓は南向きにある為カーテンの隙間から月明かりがうっすら差し込んでいるはずだ。しかし今は何も見えない。本当の暗闇だった。

    なら、ここはどこだ?

    耳を澄ましてみる。ポツポツと雨の音が聞こえる。あぁ、だから月の光が届いていないのか。
    他の音も探る。部屋から遠い場所で、誰かの足音が聞こえた気がした。
    周りの匂いを嗅いでみた。薬品と血が混ざったような匂い。これは嗅ぎ慣れた匂いだ。それにこの部屋の空気…。もしやと思い枕に鼻を埋める。
    やっぱり。
    枕からは自分の匂いがした。良かった。てことはここは俺の家の俺の部屋か。ならばベッドサイドランプが右側にあるはず。それをつければこの気色悪ぃ暗闇もなくなるは、ずっ…
    押せない。スイッチを押すために伸ばした右腕は何にも触れないまま空を切った。おかしい。動かした感覚がいつもと違う。右腕の存在は感じるが、実態を感じない。失っ…?
    いやいやまさか。落ち着け。枕と部屋の匂いで自室だと勘違いしたが、ここが全く知らない場 6126