当て馬の猛追(没案)」
「好きな人がいる、とか?」
「あっ──あぁ、うん、そう……そうなんだ、それで……」
ドキリ、核心を突かれて心臓が大きく跳ねる。
「だから──」
「好きな人がいるから、おれの部屋には入れない?」
「……ていうわけじゃないけど……うん……そうだね、そんな感じかな。安易に入るべきじゃないと思うんだ」
部屋に入って、バッキーと二人っきりで、何もしない自信はない。
今頃になって回ってきたアルコールは自制心や理性を溶かしているし、酔っ払ったバッキーは最高に可愛くて。普段なら決してない甘えた素振りと上目遣いが、すっかり腑抜けた恋心をダイレクトに刺激する。
『悪い男』の呪縛が解けた今、暴走を制御する自信はなかった。
「…………べつに、何もしないのに……」
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