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    ちまき

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    ちまき

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    ステバキ。学パロ。18話(ラスト)
    告白後のはなし。エピローグ的な?
    (これだけでも読めます)

    #stucky
    #ステバキ
    stevaki

    どうしようもない気持ち。寮の部屋に戻ってくるなり、バッキーがドアを閉めたその瞬間だった。
    スティーブにそっと後ろから抱きしめられた。


    「……!」

    一瞬、呼吸が止まった。


    背中越しに感じる体温。高くて広い胸板。
    声に出さなくても、それが誰のものかなんて分かりきっている。


    (……スティーブ、背ぇ伸びたよな)

    そんなことをぼんやり思いながらも、心臓は激しく跳ねていた。
    その距離、その静けさに、バッキーの身体がこわばる。


    (あ……キス、くるか?)


    さっきまで求められていたワケだし……
    自然と喉が鳴る。


    しかし、数秒後。
    スティーブの唇から出てきたのは、まったく予想していなかった言葉だった。


    「……今日はありがとう」

    それだけを言って、彼の腕がすっと離れた。

    バッキーは、ぽかんとした。



    「……は?」



    拍子抜けにも程がある。

    スティーブは気を使ったつもりなのかもしれない。けれどバッキーにとっては、むしろその“遠慮”がイライラの原因だった。

    (なに気遣ってんだ…さっき拒否ったからか?? けど、今のはする流れだっただろ!……この奥手クソもやし野郎……)


    寮に戻るまでのあの積極さはどこへ行ったんだ……
    恋人になった途端、急に奥手になるなよ。
    もう、意味わかんねぇ。

    バッキーはイラつきながら、無言のまま荷物を放り投げ、コートを乱暴にハンガーに掛ける。
    後ろではスティーブが妙に静かになっていた。


    「……ご、ごめん。あの、やっぱりさっきのハグ、急だったよな……嫌だった?」

    スティーブの声は、どこかしゅんとしている。


    その声を聞いて、バッキーは小さく息を吐いて、ベッドの縁に座り込んでいるスティーブの横にどかっと腰を下ろした。
    それだけでスティーブの肩がぴくりと動く。


    (ああもう、こいつ……)

    なんでお前がそんなにびびってんだよ、と言いかけて、飲み込む。

    バッキーは、言葉の代わりに不意にスティーブの顎を指先で持ち上げ——
    そのまま、軽くキスをした。

    ほんの一瞬、唇が触れるだけの、柔らかいもの。

    スティーブが何が起こったのか分からず、目を見開いたまま固まっている。

    バッキーは少しだけ不機嫌そうに言った。


    「スティーブ……どうせ、また“俺なんか嫌われたかも”とか思ってんだろ?」

    「……え!? ち、違うよ……!」


    顔を真っ赤にして慌てるスティーブを見て、バッキーはようやく、少しだけ笑った。

    「やっぱバレてんじゃねぇか、もやし野郎」

    そう言って、バッキーはスティーブの肩にもたれかかる。
    無言のまま、そっと。ぴったりと。

    スティーブの息が止まったように静まる。

    「ハグとかキスの誘いとか、急にされると、心の準備が要るっつってんの。……けど、嫌だったわけじゃねぇよ」

    ぽつり、と呟くように続けた。

    「むしろ、あんなのされたら、期待して……しまうに決まってんだろ……」

    そして、目を背けたバッキーの顔は、赤くなっていた。耳まで火照って、視線は泳いで、声もどこか掠れてる。

    スティーブは目を見開いたあと、ゆっくりと、心の底から安堵したように微笑んだ。
    そして、バッキーの肩に自分の頭をそっと預け返した。

    「……ありがとう」

    「バッキー。僕からも………してもいいかな……」



    「…聞くな。……分かれよ…マヌケ。」


    バッキーの返事は相変わらずぶっきらぼうに答えた。
    そんな彼の熱を帯びた頬にスティーブは優しく手を添える。
    指先がゆっくりと顎をすくいあげた。

    そのまま、ためらうことなく、バッキーの唇に唇を重ねた。

    (……スティーブ)

    バッキーは目を閉じ、ただその触れ合う体温を受け止める。
    空気が溶けていくような優しいキス。


    唇が離れて、目が合う。


    「大好きだよ、バッキー」


    優しく微笑むスティーブに対してバッキーは小さく呟いた。


    「ん。…あぁ、俺もだ…」

    スティーブはその言葉に、少しだけ強く、彼の手を握った。





    ━━━━━━━━━━ fin.
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