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    kanbu_yfsy

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    kanbu_yfsy

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    #ゼファアレ
    zephyr

    ちりんと鈴の音の鳴るような軽やかな声が耳を揺らす。音の方に視線を向ければ、二人の女性が口元を抑えてくすくすと笑みを零していた。そこに交わるのは爽やかでどこか清涼感のある耳に馴染んだ声。そうして彼もまた呆れた顔をしながらも笑う。人の良い笑みを浮かべた彼の腕を、女性が楽しげにぱしりと叩いた。
    ずきり。アレンの胸元が何らかの異常を知らせる。そっと胸に手を当ててみるが、未知なる感覚は掴めない。胸中が淀み、何かが喉元に引っ掛かっているような。加えてゼファーの笑い声が随分と遠い気がする。自覚できる異変はそれだけだ。
    思い当たるのは、治癒術を多用した先日のこと。きっとその疲労のせいだから、ひと眠りすれば治るだろう。そしてアレンは、ゼファーに声を掛けることもせず背を向けた。アレン、と声を投げ掛けるゼファーに気付くこともなく。



    「ゼファー。相談があるんだけど、いいかな?」

    「ん? おう、なんだ」

    振り向けば、不安な表情を浮かべる相棒がいた。何か心配事だろうか、とゼファーはアレンの言葉を待つ。

    「その……ここ最近、身体がおかしいみたいなんだ」

    「身体が? 調子でも悪いのか」

    「体調が悪いわけじゃないと思うんだけど、なんだかずっと胸が苦しくて」

    そう言ってアレンは苦しげに眉根を寄せて胸に当てた手で拳を作る。
    何らかの病気か、それとも。体調が悪いわけではないと言ったが、本当なのか。何か見逃している不審な点はないか。焦燥感に駆られたゼファーはアレンの額に手を当てて熱を確認したり脈拍を測ってみるが、特に異常は見られない。

    「胸がずきずき痛んで、何かが引っ掛かってる感じがするんだ。治癒術を掛けてみたんだけど、効果もなくて……」

    アレンの言葉に、ゼファーが彼の胸元にそっと手を当てて目を閉じる。

    「……呪いか術の類かとも思ったが、そうでもないみたいだな。他に何か自覚症状はあるか?」

    「うーん……あ、そうだ。ゼファー、君を見てる時に頻繁になってる気がする、かな」

    「俺を?」

    予想外の言葉にゼファーが大きく目を見開く。まさか何らかの術を掛けられているのは自分で、側にいる者や見てしまった者に影響を及ぼす系統の呪いなのか。自覚できる異常は感じられないが否定できる確証もなく、ゼファーの胸が僅かにざわめく。

    「うん。ゼファーというか……君が他の人と一緒にいるところを見ている時になってることが多かったと思う」

    とは言っても、サラ達と一緒にいる姿を見ている時にはならないんだけど、とアレンが付け加える。
    アレンから得た情報を繋ぎ合わせて、ゼファーが顎に手を当てて少し考え込む。

    「……なぁ。それって、俺がどんな奴と一緒にいるとそうなる?」
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     アレンは治癒術に長けている。それは周知の事実で、何人もの怪我人がアレンの治癒術を受けようとやってくる度に、優しい俺の恋人は多少疲れていてもにっこりと微笑み、怪我をしている箇所に手を翳して治癒術を施す。いつか、勘違いする奴や、変な気を起こす輩が出てくるのではないか、心配で仕方がない。
     今日も治癒術を施すアレンの背中をじっと見つめ、腕組みをしながらずっとそんなことを考えていた。

    「…ちょっと、ゼファー!」
    「…ぁ?」

     気付くとこちらを振り返ったアレンが眉を吊り上げながら睨んでいた。怒っている姿も可愛い、などとは、本人には言えないが。普段にこやかにしていることが多いアレンの、そんな表情やあられもない姿を自分だけが知っている事実は嬉しいものだが、他者に向けられる慈しみは少しばかり嫉妬しても仕方ない。

    「なんでそんなに怒ってるの?」
    「は?怒ってねぇって」
    「…まぁ、なんとなく理由は分かってるけど」

     アレンはそう言うと、ゼファーの手を取った。

    「ゼファーも怪我してたのに、後回しにしてごめんね」
    「んなの擦り傷だって。舐めときゃ治る」
    「駄目だよ」

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