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    陽炎@ポイピク

    ジョジョ5部プロペシメインです。パソコンもペンタブもないので携帯撮り&アナログ絵しかうpしません。
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    陽炎@ポイピク

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    ラマ→アク
    料理する兄貴シリーズ

    虎視眈々サブジを作ろう。
    勿論、いずれこの部屋を訪れるであろうアクタルの為に。
    広めの鍋にじゃがいもとターメリックを入れてまぜる。
    そして水を加え、蓋をして中火で加熱する。温度が上がってきたら弱中火に火力を落とし、時々かきまぜながら蒸し炒めにする。水が減ってきたら、焦げ付かない程度に少量ずつ足す。じゃがいもにしっかり火が通ったら、火を止めて置いておく。次に別の広めの鍋にギーを熱し、タマネギ、にんにく、カレーリーフ、塩少々を加える。できるだけ強めの火で、タマネギがやや色づくまで炒める。そして弱火にして、ターメリック、カシミリチリを加える。弱中火で、常にかきまぜるのがコツだ。いよいよ最後にじゃがいもを加えてまぜて炒めれば完成、の筈だった。
    私はぼんやりと布越しに感じたアクタルの肉体の感触が不意に脳裏を過ぎった。彼はムスリムだから――同性間であっても肌を見せてはいけない規律がある。だからこそ……だからなのだろうか、私はアクタルの白いクルタの向こうに隠された肌を想像の中で膨らせてしまっていた。
    「っ!?しまった!」
    慌てて火を止める。サブジはじゃがいもに軽く焦げ目が付くだけで済んだが、鉄の鍋の底が火でこげついてしまった。
    やってしまった。
    鍋を駄目にしてしまった。これは、後で買い直さねば。
    後で似顔絵の男の聞き込みついでに新しい鍋を探そう……そう考えていた矢先。
    私が先程まで思い描いていた相手が窓の外に見えた。
    バイクに跨り行き交う人々へムスリム式の挨拶を微笑みながらするアクタルの姿に幾分か安堵すると同時に背徳感と罪悪感が同時に襲い掛かる。
    その素肌を――肉体を、見たいという劣情に呑まれかけていた。己の中にそんなどす黒い欲があるのを認めたくなくて私は何事もなかったかのように玄関の扉を開ける。
    ドアの向こうには自ら出迎えた私に目を丸くして驚いた後にいつもの人懐っこい笑みを向けるアクタルがいた。
    「バイヤ(兄貴)!」
    ああ、こんなにも純粋に慕ってくれる彼のあられもない姿を妄想するだなんて私はどこまで愚かなのだろう。
    「アクタル、待ってたぞ。さぁ、サブジを用意したんだ。おいで」
    「そりゃ丁度良かった!母さんからいつも兄貴に世話になってるから渡すようにってロティを持って来たんだ!」
    バイクの荷台へわざわざ括り付けた袋。
    アクタルはバイクから降りて麻袋を抱えて慣れた様子で床へ積み上げっぱなしの本を避けていつもの場所へ胡座をかいた。
    私はいつものように料理を彼の元へ運ぶ。
    大丈夫、普段通り振る舞えばいい。アクタルへの劣情など、忘れてしまえばいい。
    「じゃがいもがカリッとしてて美味いなぁ」
    ロティにサブジを包んで口へ運ぶアクタルの言葉にはきっと他意などないのだろう。
    「あー、それなんだが。実は少し炒め過ぎただけなんだ」
    「ん~?珍しいな。だから部屋が焦げ臭かったのか」
    「すまない」
    もぐもぐと頬を膨らませるアクタルに私は変な申し訳なさで食が全く進まなかった。
    「バイヤ、気にしないでくれよ。誰だって失敗はある。寧ろおれは完全無欠だと思ってた兄貴の意外な一面を知れて良かった」
    「私に欠点がない訳ないだろう」と返したい気持ちをぐっと堪えた。さっきまで君の裸体を勝手に脳内で描いていたような私が。
    「しかし」
    「落ち込む兄貴なんてらしくないな。そうだ!飯が済んだら新しい鍋を買いに街へ行こう!いい気分転換になるぞ!」
    気落ちする私に明るく接してくれるアクタルに彼なりの優しさと気遣いを感じる。弟に心配されるなど兄として情けない、アッルーリ・シータラーマ・ラージュよ。
    「また君のバイクの後ろに乗せて貰っても?」
    「ああ!おれも母さんに鍋掴みを買ってあげたいからな」
    アクタルは飯よりも早く街に繰り出したい気持ちになったのか慌ててサブジを胃袋へ詰め込む。私は苦笑しながらようやくロティを食べ始めた。素朴な味で、スパイシーなサブジとよく合う。幾らでも胃の中に入れられそうだ。
    満腹になった所でアクタルに手首を捕まれ引っ張り上げられた。
    「そうはしゃぐな」
    子供っぽいアクタルを軽く窘めれば。
    「兄貴と過ごす時間が楽しくて、つい」
    自覚なくそう答えるのだからタチが悪い。
    私はアクタルに連れられるままバイクの後ろに乗せられアクタルがエンジンを咆哮させる。
    私は、いつも彼の肩へ置いていた手を腰へするりと回した。
    背中から抱き着く格好になったがアクタルは咎める様子はない。
    「今日の兄貴は甘えん坊だなぁ」
    のんびりとそう呟くアクタルは、きっと私の本心になど気付いていないのだろう。それでいい。
    この体温も、感触も、匂いも、耳に心地良い声も、全てを独占してしまいたいだなんて、そんな感情を知られたくはない。
    いつか終わる関係だと、分かっているからこそ。
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