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    BORA99_

    🦩関連の長い小説を上げます
    @BORA99_

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    BORA99_

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    ヴェルドフ
    若様暗殺(?)計画を阻止するお話
    ※若様が110海賊団と取引を始めたくらいの時間軸です
    ※捏造注意
    ※友情出演:うるぺーフー様

    DIE FOR YOU葬列、石造りの十字架に掘られた"死体"の名前。
    黒い集団と、啜り泣く音。
    小雨の降る中、ドフラミンゴは掘られた穴に埋められていく棺をただ、眺めていた。
    最前列に並ぶドンキホーテ・ファミリーから、大分離れた場所で見守る"基地長"ヴェルゴにちらりと視線をやってから、ドフラミンゴは静かに瞳を閉じる。

    (・・・奴を、呼べるなァ、"役得"だったな。)

    ぼんやりと、はっきりしない意識の中で、ドフラミンゴはふと思う。
    本来、交わることの無い自分とあの男の歩みは、"職権"の"乱用"で呆気なく重なったのだ。

    『G-5の・・・基地長?あァ、"ヴェルゴ"基地長だね。
    そういう事情なら、構わないよ。』

    神妙な面持ちで、ファミリーの葬式に、世話になった事がある海兵を呼びたいと持ち掛けたら、"大参謀"はあっさりと許可を出したのである。
    神妙な面持ちが、"フリ"では無かったのが、効いたのか。
    ドフラミンゴはその、皮肉めいた回想を止める。

    (優秀な、男だった。)

    一昨日、ドレスローザの路地裏に捨てられていた男は、優秀だった。
    そして、何より、"酷い思い"を沢山してきた男だった。
    その、"許容"できる"価値観"を持つ男は、路地裏で、胴体から分断された首を転がして、血の海に沈んでいた。
    犯人は不明。目的も不明。全てが唐突で、呆気ない出来事。
    ドフラミンゴは片手でサングラスを押し上げると、真っ黒なスーツのポケットに、手持ち無沙汰に手のひらを突っ込んだ。
    冷たい石の十字架が、弱い雨に濡れていく様をただ、眺める。

    (・・・"雲行き"が、悪ィなァ。)

    死んだ同胞は、ドフラミンゴの"代打"で行った商談の帰りに首を刎ねられた。
    同じくその場にいた"商談相手"は、百獣海賊団の"ギフターズ"。その男も、同じようにドレスローザの路地裏に廃棄されていた。

    (・・・"世間知らず"にも、程がある。)

    この海の"逆鱗"に振れるその行為は、危ういバランスで積み上がった均衡を容易く崩す。
    少しでも、この海の"歩き方"を知っていれば、"四皇"と"七武海"に手は出さないのだ。

    "世間知らず"か、過信した馬鹿か。はたまた、その両方か。
    ドフラミンゴは厚く掛かった雲に、荒れる天候を予感した。

    (・・・面倒な事に、なりそうだ。)

    ######

    「"ドフラミンゴ君"。」
    「ヴェルゴ"基地長"。態々すまねェなァ。」
    「気にしないでくれ。彼の事は、本当に残念だったな。」

    人も疎らになった墓地の片隅に佇む、ドフラミンゴの頭上に降り掛かる弱い雨が突然止んだ。
    黒い傘を差し出した"基地長"は、態とらしくその名前を呼ぶと、サングラスの奥で静かに瞳を細くする。

    「・・・何があった。」
    「さァな。どこぞの"世間知らず"か、ネジの外れた"大馬鹿野郎"か・・・。」

    傘の下で、ドフラミンゴの顔が陰った。
    それを、隠すように口元だけで笑ってみせたドフラミンゴは、ヴェルゴの差し出す傘から出ていく。

    「折角来たんだ。食事でもどうだ。"基地長殿"。好物は何だ。ホテルも手配しよう。」
    「あまり、気を使わないでくれ。大変だろう。これから。」

    ドフラミンゴから返答は無く、代わりにサングラスの隙間から、"笑う"瞳が覗いた。
    ヴェルゴは、意外にも、この男が"怒っている"と、その時に悟る。
    殺された男の事はあまりよく知らないが、そういえば、"ドフィ"は彼を気に入っていたように思う。

    「・・・"ジョーカー"!!!!」
    「おい、姉貴、大きな声出すなよ。葬式だぞ。」

    二人の間に流れた、妙な沈黙が、甲高い声に遮られた。
    二つの小さな人影が、ドフラミンゴの目の前に現れる。
    その、見知った顔にドフラミンゴは内心辟易とため息を吐いた。

    「・・・お嬢ちゃん、その"名前"は今は"タブー"だ。」
    「ハァ?!名前いっぱいあんのがいけねーんだろ!!」
    「やめろってば・・・。"天夜叉"の"旦那"の気持ちも考えろよ・・・。」

    "よりによって"この二人か。
    今朝方、同じ"被害"を被ったカイドウから連絡が来て、"犯人を取るなら、精鋭を貸してやる"と一方的に言われたのだ。
    心底、あの、ピンク髪の"猫"が良かったと思いながら、ドフラミンゴは営業用の笑顔を貼り付ける。

    「ホラ、姉貴。ほら、」
    消え入りそうな声で弟が差し出した紙切れは、カイドウに持たされたものか、裏面に百獣海賊団のマークが刻印されていた。
    それを奪い取った姉の方は一度、ドフラミンゴの顔を見る。

    「この度はまことに残念なことになりまして、心からおくやみ申し上げ、ごめいふくをお祈りいたします。」
    「フフフッ。そりゃァ、どォも。」

    紙切れに書かれた文字を読み上げた彼女に、毒気を抜かれたように息を吐くと、ドフラミンゴは諦めてヴェルゴに顔を向けた。
    同じく、ため息を吐いたヴェルゴは、コミカルに肩を竦めて見せる。
    「全員、大事なお客様だ・・・。おれが直々に饗そう。
    ・・・食いたいものはあるか?」
    ドフラミンゴの言葉に、若者二人は明らかに、嬉しそうな顔。
    その、年相応な幼さに、ドフラミンゴは何となく優越を感じて、フルコースでも寿司でも、好きなものを奢ってやると妙に意気込むのだった。








    「由々しき事態だ。」
    暗い部屋の中に、小さな声が響く。
    ランプの明かりに照らされて、ゆらゆらと伸びる影は長い。
    不機嫌そうに、舌を打った男の、"右目"だけが光る。

    「ドンキホーテ・ドフラミンゴを殺すなら"今"しかないぞ。
    奴が"百獣"のカイドウと本格的に取引を始めれば・・・手を出すのも容易ではない。」

    あの、"堕ちた"筈の男は、とうとう、"国王"などという称号まで手に入れた。
    このまま、四皇の手中に入られては、奴の首を刎ねる事はほぼ叶わぬ夢となる。
    「兎に角時間が無いというのに・・・"あいつ"はまだ見つからないのか。」
    ストライプの入ったハットを被る男は、"まだ"だとでも言うように、肩を竦めた。
    想定外に次ぐ想定外。
    こんなにも進展しない事態は、久しぶりだ。

    「あの男は必ず、"天竜人"へ"不利益"をもたらすぞ。今ここで、息の根を止める必要がある。」

    「・・・"イージス"の名にかけて。」

    ######

    「どうしようどうしよう!!ペーたんどれにする〜?!」
    「ペーたん言うなや。」
    「ほォ・・・美味そうだ。」
    「"天夜叉"!!天夜叉!!どっちがいいと思う?!」
    「・・・・・・・・・・・両方食えば。」

    奢ると言った。
    それこそフルコースでも寿司でも。
    その思惑から、若干ずれた状況は、混迷を極めていた。
    自分の腕をグイグイと引っ張る細い腕に、ドフラミンゴは何度めか分からないため息を吐く。

    『天夜叉!!!ここ!!連れてけ!!!ここがいい!!』
    『・・・・・・・・あ?』
    『"ハンバーガー"か、良いな。好物だ。』
    『姉貴ずっと楽しみにしてたんだ・・・。連れてくまで動かないぞ。多分。』

    旅行雑誌を目の前で広げられ、"姉"うるティが示したのは、ドレスローザで新規オープンした大衆向けハンバーガーショップ。
    狭い店内には若者が溢れ、突如現れた"国王"に、一瞬あたりがザワついた。
    その視線に気が付かないうるティとページワンはまだ良いとして、自分と同い年であろう"相棒"まで小さな二人と一緒になってはしゃいでいる。
    「・・・・・・・・・・・・特別にお席を用意しましょうか。」
    「・・・いや、いい。騒がせて悪いな。」
    店員の若い女子にも気を使われ、ドフラミンゴは謎の疲労感を感じながら、簡素な椅子にドカリと座った。
    「うまー!!美味い!!ぺーたん一口ちょーだい!!」
    「・・・自分の食えよ。」
    「おお。美味いな。君達のお陰で良い事を知ったよ。」
    「気にすんな!!つーかオジサンほっぺにレタス付いてる!!!めっちゃウケるんだけど!!!」

    「・・・・・・お前らこんなところでのんびりしてて良いのか。"船長"命令で来たんだろ。」

    安っぽい紙のカップに入ったレモネードを一口飲んで、ドフラミンゴははしゃぎ倒す姉弟と、"相棒"を見る。
    "お互い"、こんなところで油を売っている場合では無い筈だ。
    「別に、おれたちは"報復"に来た訳じゃない。
    あんたの手伝いを頼まれただけだ。・・・あんたこそ、犯人探ししなくていいのかよ。
    この島を出られたら、探すのも大変だろ。」
    「・・・いや、"まだ"、島は出てねェさ。」
    モグモグと動くページワンの頬を見ながら、ドフラミンゴは奇妙に口角を上げる。
    脈絡の無い殺し。一緒に死んだ、"四皇"の船員。
    "あの男"を代わりに行かせる事に決めたのは、本当に、予定の直前だった。

    「・・・犯人の狙いは"おれ"だろう。また、殺しに来るさ。」

    ざわざわと煩い店内で、ドフラミンゴ達だけが静まり返る。
    一度、ヴェルゴと目が合った。

    「・・・"海軍"の立場で出来る事はそう無いが、"大参謀"には明日まで"暇"を貰っている。
    ・・・君は七武海だ。警護しようか。」
    「オジサン海軍なの?」
    「・・・そうだった、おれは海軍じゃない、」
    「いや、あんたは海軍だぜ。」
    「・・・そうだった。おれはG-5"基地長"、ヴェルゴだ。」
    「・・・どっちだよ。」
    危ういうっかりを続ける相棒に助け舟を出してから、ドフラミンゴは頼りない背もたれに深く凭れる。
    殺害時刻の目撃情報は皆無。しかし、その直前、現場付近で奇妙な"子供"を見たという声があった。
    綺麗な身なりの、白い髪の"子供"が一人。体よりも大きな何かを抱えて、楽しそうに歩いていたそうだ。
    「フッフッフッ・・・。"奴"は腕も立つし、頭もキレる優秀な男だった。お前らのとこも、やられたのは、"ギフターズ"だろう。こりゃァ、本当に危ねェかもなァ。」
    今更、"子供"に"殺し"が出来ないなどとは言わないが、自分の商談予定を探る"周到さ"と、現れた別人を殺してしまう"衝動"に、違和感がある。
    本当に、実行犯が"子供"だとしても、それを操る"誰か"が居るはずだ。

    ("心当たり"が多すぎる。)

    まったく、因果な世の中だ。
    ドフラミンゴは簡素なテーブルに肘をついて、うんざりと瞳を閉じた。

    ######

    「めっちゃ綺麗!!!ひろーい!!!夜景ーッ!!!」
    「お気に召したか。」
    「召した召した!!!ぺーたん一緒にお風呂入ろ!!!」
    「一緒に入った事なんかねーだろ。止めろよそういう事言うの。」
    犯人探しは明日に持ち越し、手配したドレスローザ随一の高級ホテルへ姉弟を送ってやると、そのラグジュアリーな雰囲気に、姉の方はご満悦のようだ。
    「姉貴・・・。天夜叉の旦那に買ったもの持たせるなよ。ほら、ここ置いとくぞ。」
    「フッフッフッ。気にするな。こういうなァ、男が持つもんだぜ。」
    うるティが持たせた買ったばかりのドレスローザ土産をドフラミンゴから受け取って、ページワンが呆れたように言うが、"姉貴"は眼下の夜景に夢中で返事もしない。
    「"お前ら"のとこは・・・"弟"の方がしっかりしてンのか。」
    「・・・姉弟って、そういうモンだろ。どっちかがどうしようも無いと、どっちかがしっかりしなきゃならねェ。」
    マスクの下で、ボソボソと話すページワンに、ドフラミンゴはまた、声を上げて笑う。
    その、角のついた頭を思わず撫でた。
    「・・・それもそうだな。・・・ルームサービスは好きに頼め。何かあればおれの名前を出して良い。ゆっくりしてくれ。」
    「・・・あァ。ありがとう。」
    上機嫌の姉と、始終大人しかった弟に手を振り、ドフラミンゴは扉を閉める。
    廊下には、壁に寄りかかる"基地長"の姿。
    「・・・"基地長殿"は、もう一つ上の階だ。」
    「おれは別に、こんなに良いホテルじゃなくても良いのだが・・・。」
    「フフフッ。無欲な男だ。たまにゃァ良いだろう。軍艦のハンモックよりかは良く眠れるさ。」
    そのまま、歩き出したドフラミンゴの背中に付いて行く。
    長い廊下は随分と静かで、酷く、良い香りがした。

    「・・・犯人は、どうやら"白い髪"の"子供"らしいぜ。」

    誰も居ないエレベーターホールで、唐突に言ったドフラミンゴに、ヴェルゴは視線を向ける。
    上品な装飾のエレベーターが、チカチカと光を灯した。

    「・・・子供に、やられるような男だったのか。」
    「さァな。」

    軽い音がして開いた扉に吸い込まれた二人は、妙に沈黙したまま、一つ上の階へ。
    割と、いつもニコニコと人の良い笑みを携えている口元が、今日は少しだけ、硬い気がした。
    (・・・何だ。珍しくご機嫌ナナメか。)
    ドフラミンゴはガリガリと後頭部を掻いてから、ヴェルゴの為に用意した部屋の扉を開ける。
    相変わらずの相棒は、音も立てずに部屋へと足を踏み入れた。

    「・・・白い髪の"子供"と言やァ、ヴェルゴ"基地長殿"。」

    喪服のジャケットを脱いだドフラミンゴは、繊細な手付きでハンガーに掛けながらヴェルゴを振り返る。
    ヴェルゴは怪訝そうにサングラスの奥で瞳を細めるだけだ。
    「何年か前に、おれの店で売るつもりだった奴隷の輸送船内で、船員が奴隷のガキに"手を出した"事があったんだが・・・。」
    清潔なシーツの引かれた大きなベッドに腰掛けたドフラミンゴは、シュルリと長い指でネクタイを緩める。
    釣られるように、ドフラミンゴの前に歩み寄ったヴェルゴは、跪いてその頬に触れた。
    やっと、口元に柔らかな笑みが戻った"相棒"に、ドフラミンゴは"溜まってただけかよ"なんて、些か下世話な事を思う。
    かぷ、と、悪戯でもするかのように、ドフラミンゴがその唇に噛み付くと、彼にしては無遠慮な、分厚い舌が押し込まれた。

    「・・・ンッ?!」

    突然、ドフラミンゴがヴェルゴの柔らかい舌に歯を立てる。
    血も出ない程度の力だったが、驚いたヴェルゴが僅かにうめき声を上げた。
    「・・・"こうやって"、」
    反して、可笑しそうに笑ったドフラミンゴが唇を離し、ヴェルゴの額にキスをする。

    「こうやって、奴隷のガキは船員の舌を"食い千切り"、殺したそうだ。」
    「・・・今日は、"散々"だ。」
    「・・・あァ?」
    噛み合わない会話に、不機嫌そうな声を上げたドフラミンゴを見上げて、ヴェルゴはまた、口元を硬く閉ざした。
    腕を伸ばして、ドフラミンゴのサングラスを取り払う。
    「・・・愛しい"相棒"がおれではない"別の男"の事ばかり考えているし、我が"王"の命を狙う輩も現れた。しかも、"愛する人"に口付けをしたら噛み付かれる始末・・・余りにも"散々"だ。」
    「フフフッ・・・!悪かった。悪かったよ、"相棒"。
    ・・・風呂、入るか。一緒に。」
    あからさまに、機嫌を取るようにドフラミンゴが言って、立ち上がる。
    サングラスの無いその瞳が、楽しそうに笑っていて、ヴェルゴは呆気なく相貌を緩めた。

    ######

    「で?その、"輸送船"の"子供"はどうなったんだい?」
    広いバスタブに、乳白色の湯を張って浸かったドフラミンゴは、力の抜ける感覚に忠実に、だらりと湯船の縁に凭れていた。
    湯船の外で良い香りのするシャンプーを泡だてながら、ドフラミンゴの髪を洗ってやっているヴェルゴは何となく口を開く。
    「あー・・・。恐れをなした船員達は、救命ボートにそのガキを乗せて、海へ流したらしい。
    その人攫いグループは律儀にも、ガキを納品出来ない理由を伝えに来てな。その時に写真も見せてきた。」
    温かいお湯と、頭皮を優しくマッサージするヴェルゴの指先に、朦朧としたドフラミンゴの頭の片隅で、"白い髪"の少女が微笑んだ。
    保管が悪かったのか、酷く傷んだその写真を見た時は、特に、何の感慨も抱かなかったが、妙に、その白い髪だけが印象に残っている。
    「・・・"凶暴"な、"白い髪"の"ガキ"が、そう何人もいるモンかねェ。・・・どう思うよ、ヴェルゴ。」
    「・・・それは、そうかもしれないが。君を狙う理由が無いな。」
    緩く流れるシャワーで、丁寧に泡を流すヴェルゴは、まるで壊れ物を扱うかのように、ゆっくりとドフラミンゴの髪を梳いた。
    その、もどかしい手付きにドフラミンゴはくすぐったそうに笑って、ヴェルゴの頭を引き寄せる。
    「・・・今度は、噛み付かないかい。」
    「・・・フフフッ。悪かった。根に持つなよ。」
    チャプチャプと、ドフラミンゴの動きに合わせてお湯が揺れると、ヴェルゴはその相変わらず丸い後頭部を抱えて、口付けた。
    混ざり合う唾液が、濡れた音を伴って、ドフラミンゴの顎を伝う。
    薄く開けた瞳に、ヴェルゴの獣の様な眼球が映った。
    (・・・あんなに、)
    掴まれた後頭部が強く引かれて、息を吐く間もなく唇が塞がれる。
    あんなに、普段は優しく触れる癖に。
    こういう時だけ、ヴェルゴはいつも手荒い。
    この、食い尽くされる感覚に取り憑かれると、もう、何も考えられないのだ。
    「・・・ヴェ、ルゴ、・・・がっつくなよ、」
    「・・・あァ、すまない。つい。」
    口先だけの謝罪を口にして、ヴェルゴはギラつく視線をドフラミンゴに向ける。
    いつだって、この、無害そうな面の下に蔓延る"獰猛"が、"好き"だった。

    「・・・明日、"一騒動"起こそうかと思ってなァ。」

    ドフラミンゴの濡れた前髪が額に貼り付き、妙に、煽情的だ。
    ヴェルゴは自分の両目を覗く、その赤い光に、腹の底で隠している"欲"が疼く。

    「何が起ころうとも、最終的に、奴はおれのところへ来るだろう。」

    言葉に合わせて、上気した唇が形を作った。

    「幸い、良い"誘導役"が"二人"いる。」

    湿り気を帯びた視線に、ヴェルゴは居ても立っても居られなくなって、その額を親指で撫でる。

    「この"おれ"を・・・"殺せる""つもり"の人間が居ること自体・・・既に最悪の気分だぜ。ヴェルゴ。」
    「・・・囮になるつもりか。ドフィ。」

    ギラリと一度、光を放つ裸の眼球。
    その危うさが、好きだった筈なのに。

    「君さえ、"居れば"、"どうにでもなる"んだ。」

    縋るように、震える腕がドフラミンゴの頭を抱え込んだ。
    積み重なる廃棄物。その上に押し上げた、愛しい"王様"。

    「・・・だが、君が"居なければ"、"全て""終わり"だ。ドフィ。」

    逞しい二の腕に擦り寄って、ドフラミンゴは瞳を閉じた。
    この男は、ドフラミンゴが"先"に"死ぬ事"を"許さない"。

    (・・・いつか、この死体を、踏み越えるのか。)

    自分の為に死ねるから、この男を愛したというのに。
    別の場所で蠢く感情は、何か、"成りたくない"生き物に近づいているような気がして、吐き気がした。

    「・・・"だから"、お前が仕留めるんだ。・・・なァ、ヴェルゴ。」

    ######

    「「・・・い、」」

    「「1000万ベリー?!?!?」」

    翌朝、ドレスローザ国内にばら撒かれた写真付きの手配書を、ホテルに併設されたカフェで見たうるティとページワンは、豪華なモーニングそっちのけで大きな声を上げた。

    「フッフッフッ。なんだ。足りねェか。」
    「1000万だぞ?!そんな大金ポンって貰ったら逆にどうしていいか分からねェよ!!!」
    「どうしよぺーたん!!!何買う?!家買える?!家買えるかな?!」
    「・・・家は無理だぞ。」

    ドフラミンゴが態々ホテルに持参した手配書には、"白い髪"の"少女"。
    何年か前に件の人攫いグループが持ってきた写真が、たまたま取引書類の中から見つかったのだ。
    「今回の事件の"犯人"は・・・恐らくこのガキだ。
    捕まえた奴には1000万ベリーを払う。・・・首だけでも良い。是非参加して盛り上げてくれ。」
    「よっしゃー!!ペーたん!!いっせんまん取るぞー!!」
    「・・・王宮は壊すなよ。寝るところが無くなる。それと東の大聖堂と、国営図書館もだな。・・・お気に入りだ。」
    些か不安になったドフラミンゴが念の為言うが、"姉貴"の方は全く聞いていない。
    "弟"だけでも頷いてくれたのがせめてもの救いである。
    「・・・こんな、大事にして大丈夫なのか。狙われてんのは、あんただろ。」
    「さァなァ。まァ、騒ぎ立てたら、」

    トントン、と、ドフラミンゴが姉弟の座るテーブルを小さくノックすると、すぐに従業員が小さなケーキがいくつか乗った、デザートプレートを二つ持ってやってくる。
    それを確認すると、ポケットに手を突っ込んで、さっさと踵を返した。

    「騒ぎ立てりゃァ・・・"出て来る"かもな。
    ・・・"諸悪"の"根源"がよ。」

    その言葉の意味を理解出来ないページワンが、"あ?"とマスクの下で声を漏らす。
    カチャン、と、うるティの握るフォークがテーブルとぶつかって音を立てた。
    遠ざかるその大きな背中を、まるで肉食動物のような視線で射抜く。

    「・・・あァ、"胡散臭ェな"。」








    「結局・・・大事だ。元々、足が付かないからあの"子供"を使ったんだ。こうなってしまってはもう意味は無いだろう。"捨てる"か。」
    「待て、諜報員は慢性的に人手不足だ。あの子供は"逸材"だぞ。」
    「・・・腕は立つが、頭のネジが外れてる。"9番目"の"ロブ・ルッチ"の方がよっぽどマシだ。あの倫理観の無さは"イージス"でも手に負えん。」

    ドレスローザの片隅の、崩れ落ちそうな廃屋で、三人の白いスーツが重々しい息を吐く。

    サイファーポール"イージス"ゼロ。

    そう呼ばれる、"天竜人"の"傀儡"は、思うように進まない任務に辟易と、やっと帰ってきた"子供"が眠る寝室の扉を見やる。

    あの、諜報員"候補"を、ドフラミンゴ討伐に使ったのは、あの男は既に、"世界"ですら、手を出すのが難しい立場にいるからだ。
    足の付かない殺しには、諜報員"候補"として政府が連れてくる孤児が最適である。
    将来諜報員として活躍する為の訓練を受けているが、任務に出たことが無く、その存在を知るものが居ない。

    (・・・その筈だったのに。)

    あの子供は、ドフラミンゴの代わりに商談に現れた"別人"を殺し、更には四皇の船員にまで噛み付いた。
    しかも、"顔写真"付きの手配書まで出回り、ドレスローザでは血の気の多い連中があの子供を探し回っている。

    まるで、全てがあの男の手のひらの上で操られているようだ。
    三人の内の一人が、一度、こめかみを撫でて息を吐く。
    その、右目だけが妙に光を上げた。

    「"子供"を起こせ。もしかしたら、奴の首を・・・咥えて戻ってくるかも知れん。」

    ######

    「あー!!クソ!!ムカつくムカつく!!"ジョーカー"の奴、このわたしを都合よく使おうとしてやがんな!!!」
    「・・・姉貴、口悪いぞ。」

    ドレスローザの路地裏を二人して駆ける姉弟は、手にした手配書の少女を探す。
    明らかに、あの男は"黒幕"を炙り出したがっていた。
    その為の1000万、その為の騒動だろう。
    「でも1000万は欲しいだろ。」
    「欲しいいいい・・・。でも使われんのムカツクー!!!」
    「しょうがねェだろ。カイドウさんからも頼まれて、」
    突然、隣を走る姉の姿が消えて、一瞬後、轟音と共に後方の民家が崩れた。
    絶句するページワンの視界で、揺れる、"白い髪"。
    「姉貴・・・!!大丈夫か・・・!!!」
    覇気の無い、ページワンの瞳孔が一瞬で"爬虫類"のように細くなる。
    "危機"に反応し、バキバキと膨張する体と比例して、大きくなる"血"への"渇望"と、"全能感"。
    この身に"悪魔"が巣食ってから、静まる事を知らない暴虐が暴れ出し、"今は亡き"異形へと変貌した巨体が、地面を揺らして咆哮を上げた。

    「・・・大きい。恐竜さん。」

    まるで、鈴の音のような笑い声。
    "白い髪"の"少女"は、その華奢な肩に身の丈ほどもある斧を担ぎ、余りにも可憐に言った。

    「本当にガキじゃねェか・・・。目的は何だ。」

    綺麗な身なり、上品な口元、サラサラと流れる、"白い髪"。
    その、得体の知れない存在に、ページワンは息を呑んだ。

    「・・・殺されるより、殺した方がいいからよ。・・・わたしには、"それ"しかないのよ。」

    「あー・・・、ってェなァ。」

    ガラガラと、ページワンの後ろで瓦礫が崩れる。
    まさか、あの程度では傷も付きまいと思ってはいたが、本当に無傷の"姉貴"の姿に安堵する。
    ズルリ、ズルリと、太い尾を引き摺って、立ち上がったうるティは、弟と同じく"爬虫類"の眼球に、その白い髪を映した。

    「・・・テメェ、"生きたい"と思ってんのか・・・"気の毒"だな。」








    「始まったか。・・・誰が取ると思う?賭けるかァ?
    "基地長殿"。」
    「・・・随分と余裕だな、"ドフラミンゴ君"。」

    美しい、芝生の公園。その中央に建てられた噴水の縁に腰掛けたドフラミンゴは、水の吹出口を挟んで、同じく縁に座る"基地長"に言った。
    始まったばかりの喧騒はまだまだ遠く、公園に居るのは二人だけだ。

    「・・・"黒幕"に、心当たりはあるのか。」
    「・・・心当たりが多過ぎて、選びきれねェぐれェだぜ。
    ・・・ただ、」

    一度、爽やかな風が吹いて、一瞬、本当に一瞬だけ、穏やかに過ぎる"二人"の時間を惜しいと思う。
    そんな、寒気のする幻想を、ドフラミンゴは振り払って口角を上げた。

    「・・・ただ、"この"タイミングで、おれを"殺したい"と思う"奴ら"は、そうだなァ、あまり多くはねェのかもな。」

    手にした国王の座、王下七武海の権限、"百獣"のカイドウ。
    "奴ら"、まさか、この日が"最後"のチャンスだとでも思ったか。

    「・・・本当に、大丈夫か。」
    「フフフッ・・・。お前を"遺して"、死にゃァしねェよ。」

    果たしてそれが、"幸福"なのか、ドフラミンゴには分からない。

    (・・・おれの為に死ねる。)

    それが、"愛情"の形なのだとしたら、"彼"の為に"死ねない"自分の"コレ"は、一体何だ。

    (・・・結局。)

    "彼"は、ドフラミンゴに"愛される"事など、望んではいない。
    永遠に、ドフラミンゴを"愛する"だけだ。
    妙に噛み合わない、そのベクトルを正すには、捨てるべきものが多過ぎる。

    「・・・なァ、ヴェルゴ。おれが、お前の為に"死ねる"と言ったら、どうする?」
    「・・・"ドフィ"。馬鹿な事を言うのは止せ。・・・言っただろう。君が、居なければ・・・全て終わりだ。」

    "全て"、"終わっても"良いと、そう言ったら、彼は一体、どうするのだろうか。
    困ったように、笑って、そして、

    (・・・おれに、愛されて、くれるだろうか。)

    ######

    「待てコラクソガキィィイイイ!!!頭かち割ってやる・・・!!!」
    「おい姉貴待て!!!そっちは天夜叉の旦那のお気に入りの"大聖堂"が・・・。」
    「律儀かよ!!!」
    街を破壊しながら疾走する、二つの巨体。
    逃げる"白い髪"の素早さに、苛々を募らせたうるティが怒鳴り声を上げた。
    「どうする?!全然追いつけねェぞ!!」
    「うるさいうるさい!!もうヤダ疲れた!!ぺーたんおんぶ!!」
    「・・・するか!!!」
    ちらりと、前を走る"白い髪"の少女が振り向く。
    バチリと、その視線がぶつかった瞬間、少女の姿が"消えた"。
    その直後、ページワンの眼前に現れた"白い髪"。
    "追えなかった"訳では無い。

    (・・・まさか、)

    その"技"を使う"組織"に、噛み付くべきなのか、ページワンの思考回路が中々答えを出さなかっただけだ。
    その、"優柔不断"を嘲笑うように、少女の振り上げた大きな斧が、ギラリと光を反射する。

    「ペーたん!!!!」

    うるティが"弟"に手を伸ばした瞬間、その脇を、"桃色"が追い越した。

    「・・・セーフか?・・・セーフだよな?ったく・・・この世の三半規管はどうなってやがる・・・。一人でバランスも取れねェのか。」

    硬い物がぶつかり合う音がして、大きく弾かれた少女が吹き飛ばされる。
    ページワンとうるティの頭を掴んだ"桃色"は、力いっぱい地面に引き倒した。

    「・・・どういうつもりだ!!何でテメェがここにいる・・・!!!」

    収まらない獰猛な瞳で、"煙草"の煙を捉えたうるティが喚く。
    それを無視して"フーズ・フー"は遠くで着地した少女に目を向けた。
    「・・・よォ、別嬪。おれ達ァ"部外者"。"当人同士"でやり合ってくれ。」
    「なに勝手な事言ってんだ・・・!!シバき殺すぞ化け猫野郎!!!!」
    「カイドウさんの意向だよ・・・クソガキ。"ジョーカー"の手助けは、ここまでだ。」
    キョトンとこちらを見つめるその、余りに平和ボケした眼光は、興味を失ったようにくるりと踵を返して走り出す。
    その背中を見守るフーズ・フーは、ゆっくりと息を吐き出した。

    「えれェモンに目ェつけられたもんだ・・・。"ジョーカー"も、終わりだな。」

    ######

    「・・・何だ。"ビンゴ"じゃねェか。・・・おれの勘も、馬鹿には出来ねェもんだなァ。」

    噴水から落ちる水音も、些か聞き飽きた頃に、その"少女"は現れた。
    ガリガリと引き摺った斧が地面を削り、足跡とは別の痕跡が残る。
    ゆっくりと、顔を上げたドフラミンゴは、その、"見覚え"のある相貌に口角を上げた。

    「・・・わたしの事を知っているの。」

    「あァ、まァ、そうだな。だが、そんな事はどうでも良いだろう。
    ・・・お嬢ちゃん。お前が刎ねた首の"持ち主"は、出来のいい男でなァ。」

    虫も殺せぬような顔で、首を傾げたその肩口で、サラサラと"白い髪"が揺れる。
    浮世離れしたその風体は、まるで、おとぎ話の世界の妖精だ。

    「頭もキレるし、腕も立つ。礼儀も弁えていて・・・寡黙なところを気に入っていた。
    ・・・あァ、あまり褒め過ぎるのは良くねェなァ。"恋人"の機嫌を損ねちまう。」

    「・・・恋人がいるの?素敵ね。」

    「そうでもねェよ。・・・いつかおれは、あいつの"死体"を踏み越えなければならねェらしい。」

    "努めて"、穏やかな声を出すドフラミンゴの腹の中など、目の前の少女には掴めない。
    相変わらずその、平和な瞳の中は楽しそうだ。

    「・・・とても、素敵だと思うわ。"自分"が、"死ぬ"よりも"怖い"事が、この世にあるなんて。」

    初めて、"気が付いた"ように、ドフラミンゴの笑みが消えて、慌てて口元を隠すように撫でる。

    あの男が、"居なくなる"のが"怖い"。
    その感情に、"名前"を付けたら、"奴"もそろそろ、"諦めて"くれるだろうか。

    「フフフッ。"若い""感性"は大事だな。ありがとよ、お嬢ちゃん。」

    「いいのよ。わたしも楽しかった。貴方はここで死ぬけれど・・・わたしは貴方の事を忘れない。」

    「・・・おかしな事を言うなァ。ここで死ぬのは、"白い髪"の"メスガキ"だ。」

    ガリガリと、相変わらず斧を引き摺りながら、ゆっくりと歩く少女の周りだけ、随分と穏やかに時が流れているようで、少しだけ、羨ましかった。
    ドフラミンゴは座った姿勢を崩さすに、ゆったりと足を組み替える。

    「でも、貴方、"武器"も持たずにどうするつもり?」

    なんのモーションも無く、少女の姿が消えて、その"技"に、ドフラミンゴは喉の奥で笑い声を上げた。
    本当に、"自分"の"勘"も、馬鹿には出来ない。

    「武器・・・武器、なァ。・・・実は、"あるんだ"、」

    視界の端で、チカチカと目障りに光が瞬いた。
    空を切る音がして、その薄い切っ先が、ドフラミンゴの喉仏を確かに捉えた刹那。

    「"とっておき"の"弾丸"が。」

    ドフラミンゴの後ろで轟音が響く。
    砕け散った噴水の吹出口諸共、斧を振り抜く少女の細い胴体を、赤黒く光る"竹竿"が食い破った。
    サングラスから覗く瞳は、えらく"凶暴"で、ドフラミンゴは思わず喉を鳴らす。
    「・・・お前の"組織"は、お前を"捨てる"決断をしたようだ。」
    穏やかに、過ぎる時間。地面に転がった、小さな人間。
    "鉄砲玉"が"殺し損ねた"のに、出て来ない"親玉連中"。
    「・・・やっと、"諦めた"か。そりゃァ、そうだ。"奴ら"はおれを"殺す"か、"機嫌を取るか"の・・・どちらかしか選べねェ。」
    折れた肋骨で、か細い呼吸を繰り返す少女と、地面に散らばる白い髪を見下ろして、未だ腰掛けたままのドフラミンゴは呟いた。
    "四皇"の"生命線"になる前に、殺しておきたかったようだが、もう、全てが、遅い。

    「・・・貴方が、あの人の、"弾丸"?・・・それとも、"恋人"?」

    千切れた細い胴体から、覗いた白い骨がキラキラと光る。
    赤い血液に沈んだ少女は、自分を見下ろすヴェルゴへ無邪気に聞いた。
    ギラリと、獣の眼球が光を上げて、手にした得物を振り上げる。

    「・・・おれは、」

    何も持たない"亡骸"が、夢を託して担ぎ上げた男は、疑う余地もない"王"の器を持っていた。
    彼の為に"死ぬ事"を信仰し、それを一種の救いのように、後生大事に抱えている。

    (・・・なのに、)

    それを、あの男は、望んでいないかのような顔をした。
    "そうなれば"、どうやって、あの男の"下"に居れば良いのだろうか。

    「・・・おれは、あいつの為に、"死ねる"だけさ。」

    振り下ろされた竹竿が、その細い首をへし折る前に、少女はそれを、"恋"だと思った。
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    Replies from the creator

    recommended works

    kgkgjyujyu

    INFOマロ返信(03/26)
    ※禪院恵の野薔薇ちゃんについて
    このお話の野薔薇ちゃんは、禪院家の圧により高専には通わず、地元の高校に通っている設定なので、呪術師界隈のどす黒い風習や御三家の存在を知らぬまま、知らない男の嫁になりました。(恵との約束を思い出すのは暫く先です)

    最初の数ヶ月はおそらく死ぬほど暴れたし、離れからの脱走も何度も実行しておりましたが、離れの周りには恵が待機させた式神が野薔薇ちゃんの存在を感知した際に、即座に知らせる為、野薔薇ちゃんが離れから逃げられた試しはないです。
    なので、恵が訪ねてきても口はきかないし、おそらく目も合わせなかったとは思います。
    恵は、自分が愛を与え続けていれば、いずれは伝わるものと、思っている為、まったく動じません。

    ★幽閉〜1年くらいは
    恵に対する愛はない。けれど、野薔薇ちゃんが顔を合わせるのは恵だけなので、次第にどんどん諦めが生まれていきます。ちなみにRのやつは4年後なのでこの段階では身体に触れてすらいない。毎日、任務のない日は顔を見せて一緒に過ごす。最低限の会話もするし、寝る場所は一緒です。時間があるときは必ず野薔薇ちゃんの傍を離れません。


    2回目の春を迎えても、変わらない状況に野薔薇ちゃん 1202