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    BORA99_

    🦩関連の長い小説を上げます
    @BORA99_

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    BORA99_

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    ドフ鰐
    ドフ鰐ちゃんの元に現れた、不思議な黒猫の話。
    ※微微原作沿い
    ※鰐さんの過去を捏造してます。
    ※その他も色々捏造してます。

    アンダードッグと沈まぬ帆船パタパタと、まるで、子供が走り回るような音がした。
    重たい瞼をやっと開けて、"サー"・クロコダイルはゆっくりと体を起こす。
    レインディナーズの最上部に位置するこの"部屋"は、本来、"来客用"で、クロコダイル本人が使用するのは"稀"だった。
    勿論、いつでも突然現れる、この"隣"の"馬鹿"に、使わせてやる為の部屋でも無い。
    「・・・ン、まだ夜中じゃねェか。なんだよ。"鰐野郎"。」
    そんな、クロコダイルの心中は露知らず、"隣"の"フラミンゴ野郎"は相変わらず浅い眠りをすぐに追いやり、のそりと、大きな図体を起こした。
    未だ失せないパタパタ、パタパタと鳴る、その奇妙な"足音"に、クロコダイルはドフラミンゴに応えもせず、裸の肌にシャツを羽織って暖かい布団を抜け出す。
    「え?なに。トイレ?」
    「起きた瞬間からピーピー喚くなよ、フラミンゴ野郎。」
    「怒んなよ・・・。」
    忙しく働くクロコダイルの事情も無視して、突然現れたドフラミンゴにこのスイートルームを手配したのは、"支配人"の女だ。
    クロコダイルは"つまみ出せ"と指示をした筈だったのに、本当に迷惑な奴らである。
    その苛々を込めた視線を向ければ、ドフラミンゴは悲しそうに口角を下げた。
    「・・・足音が、」
    「あァ?足音?」
    延々鳴り止まない、この"異音"は、隣の男には聞こえていないようで、不機嫌そうな顔のまま、クロコダイルは立ち上がる。
    「・・・ネズミでも潜り込んだか。」
    「・・・さァな。だが、」
    突然、ガシャン!!!と、何かが落ちる大きな音がして、クロコダイルの肩が大きく跳ねた。
    今度はドフラミンゴにも聞こえたようで、クロコダイルの後に続く形でベッドから降りる。
    「何だ何だ。マジでネズミかァ?」
    「テメェの国の安宿と一緒にするなよ。そんなもん、入れるわけねェだろうが。」
    静かな廊下を二人して、音がした方に進むと、"リネン室"のプレートが掛かった部屋に辿り着いた。
    明らかに、何かの"気配"を感じたクロコダイルがドフラミンゴを見上げる。
    誰かが"侵入"する、"理由"は、有った。
    今までに、侵入者が居なかった訳でもない。
    都度、"此処"まで来る前に殺していただけだ。
    二人の間に流れる空気が一瞬で緊迫し、クロコダイルは息を吸い込んでから、一気にその扉を開ける。

    「「・・・あァ?」」

    暗い扉の中に光が差し込み、それに照らされた"侵入者"は、散乱したシーツに埋もれて、随分と嬉しそうに、"ニャァ"と、"鳴いた"。



    「何だ、可愛い"刺客"だなァ・・・!鰐野郎の首でも取りに来たかァ??」
    「・・・ったく、どこから入りやがった。」
    しゃがみ込んだドフラミンゴは、警戒する素振りも見せずに、その真っ黒い毛に覆われた小さな"猫"をつまみ上げた。
    猫の方も、警戒心など忘れてしまったかのように、まるで甘えるように小さく鳴くだけだ。
    「・・・懐っこいなァ。飼い猫か?」
    「・・・シラネ。放り出しとけよ。・・・このフロアは完全"予約制"だ。」
    「いーじゃねェか。お前、この寒空の下にこいつを放り出せんのか??」
    首根っこを掴んだまま、その黒い生き物をクロコダイルへ向けたドフラミンゴは、ホラホラ、と押し付けてくる。
    その、金色の丸い瞳がくるりとクロコダイルを見つめて、"ニャァ"と、怯えの無い声で鳴いた。
    ぐ、と、言葉に詰まったクロコダイルを見て、ドフラミンゴが面白そうに笑う。

    「・・・・・・・・・・・・・・下の、資料室に一旦入れておけ。明日、追い出すからな。」
    「フフフフッ!!"サー"直々のスカウトだ。・・・良かったなァ。」

    こうして、突然迷い込んだ"黒猫"は、"悪党"の慈悲により、安穏とした生活を手に入れるのだった。

    ######

    「なァ、お前、本当に飼うのか。」
    「・・・馬鹿言うなよ。飼い主が見つかるまで間借りさせてやるだけだ。」
    深夜の資料室に猫を抱いて降りたドフラミンゴとクロコダイルはその小さな生き物を、危なっかしそうに見る。
    適当なダンボール箱に毛布を入れて、黒猫を入れると、またしてもその生き物は、"ニャァ"と鳴く。

    (・・・人間の、"足音"だと思ったんだが。)

    先刻まで煩いくらいに響いていた足音は、すっかり鳴りを潜めていて、クロコダイルは怪訝そうに瞳を細める。
    聞き間違いか、或いは。

    『・・・"船長"。』

    「・・・!!!」

    突然、耳元で聞こえたその"呼び声"に、クロコダイルは思わず振り返った。
    勿論、目の前にはただ、スチールの本棚に無造作に入れられた書籍やファイルが広がるだけ。

    「・・・どうした。」
    「・・・いや、別に。」

    跳ねた鼓動に舌打ちをして、クロコダイルはまるで、逃げ出すように資料室の扉を開けた。

    ("嫌味"か。)

    幻聴までもが、そうやって、"負け犬"を、嘲笑うのか。
    失くした左手首と、入れ替わるように付いた、"向こう傷"。
    それは、"勲章"などでは到底、無い。

    ######

    「・・・お前な。」
    「お、キタキタ。見ろよ、"サー"のお出ましだ。」
    数週間後、相変わらず目が回る程忙しいクロコダイルが、"猫缶"を手に資料室の扉を開けると、目が痛くなるピンクのコートに包まれた黒い生き物と、デカい図体。
    今までにない短いスパンで現れたドフラミンゴに、クロコダイルは疲労からくる頭痛を感じた。
    「・・・勝手に入ってんじゃねェよ。」
    「ここに居りゃァ、来るかと思ってよ。」
    招いた覚えもなければ、迎え入れた覚えも無い。
    クロコダイルは悪びれないその男に全てを諦め、資料室に置いたままになっている、簡素な椅子を引き寄せ、腰掛けた。
    「顔色悪ィなァ、鰐野郎。そんなに忙しいのか。」
    「・・・そう思うなら帰れ。今すぐ。」
    いつの間にか、"ダンボール箱"が猫用のクッションやら、ベッドに変わり、壁にはキャットタワーまで備え付けてある。
    ドフラミンゴが嬉々として持ってきたのだろう。
    その、居座らせる気満々の様子に、クロコダイルは辟易とため息を吐いた。
    「・・・辛気臭ェなァ。何かあったのか。」
    「・・・・・・・・カジノのスロットマシンを総入れ替えする予定だったんだがな。仕入先の島でクーデターらしい。
    代わりを探しているが、気に入るものがねェ。」
    「アー、"北の海"にツテがある・・・。カタログを届けさせようか。」
    「・・・そう、か、」
    あまりにも"自然"に、平和な会話をしていることに、はたと気が付いたクロコダイルの言葉が不自然に止まる。
    そういえば、この男とはお茶さえも、した事が無かった。
    "寝る"か、七武海の会合で顔を合わせるか、ただ、それだけの関係。
    "仕事"の話など、危なっかしくて振れもしない筈だった。
    「・・・オイオイ。勘弁してくれよ。調子狂うぜ。」
    「・・・うるせェな。疲れてんだよ。」
    「フッフッフッ。"砂漠の王"も、歳にゃァ勝てねェか。落ち着いたら何がしたい。」
    足元にすり寄る黒猫の、喉元を撫でてやりながら、ドフラミンゴが笑う。
    グルグルと、嬉しそうに喉を鳴らす間抜けな生き物を見ていたら、些か、全てが馬鹿らしくなった。

    「・・・くだらねェ、映画でも見てェなァ。できるだけ、頭の悪そうな。とびきりのB級。」
    「・・・フッフッフッ!!大分キてんなァ!鰐野郎!!」

    ######

    『・・・"船長"。』

    ぼんやりと、視界の端で、妙な"靄"がゆらりと揺れた。
    その、"受け入れ難い""呼び名"を、しつこく呼ぶ声。
    クロコダイルは真っ暗な中、目の前で佇む、妙に半透明なその小さな"子供"を見てから、ああ、夢か、などと呑気に思った。

    『"船長"。"海"へ、帰ろう。はやく、はやく。』

    目が合っている筈なのに、その子供には、顔が無い。
    何故か、聞き覚えのあるその声に、クロコダイルは眉間に深く、皺を寄せた。

    (前にも、この"声"を、どこかで、聞いた気がする。)

    なのに、それが何時だったのか、全くもって思い出せない。
    それに、

    (その"呼び名"は、とうの昔に、)

    "左手首"と一緒に捨てたのに。
    何故、"今更"、そんな風に呼ぶのか、理解が出来ない。

    「・・・お前、」




    「・・・ッ。」

    パチリと、開いたクロコダイルの瞳に、赤く染まる夕日が映った。
    執務室のデスクに突っ伏して、いつの間にか眠っていたらしい。
    こんなところを、従業員に見られては事だと、クロコダイルはゆっくりと上体を起こした。

    「ニャァ。」
    「・・・あァ?何でテメェがここに居る。」

    資料室に居るはずの黒猫が、デスクの上に軽々と飛び乗って、クロコダイルの口元に鼻先を近付ける。
    扉はきちんと閉めていた筈だったが、何処からか抜け出したのか。

    「・・・ったく、大人しく出来ねェのか。"お前ら"は。」

    ふわふわと、触り心地の良い毛並みを大きな手のひらが撫でると、"本人"は満足そうにデスクの上でごろりと寛いだ。
    どうしてこうも、自分を取り巻く"野郎共"は、こんなにも身勝手なのか。

    『"船長"。"海"へ、帰ろう。はやく、はやく。』

    奇妙な夢だった。
    奇妙で、"懐かしい"あの幻覚が一体何なのか、目覚めたクロコダイルの頭でも判然としない。
    それでも、"一つだけ"分かる事があった。
    "残された"右掌で、情けなく目を覆う。

    (・・・全部、"今更"だ。)

    少しだけ、クロコダイルの口元が、嗤うように歪んだ。

    「・・・もう、"遅ェよ"。」

    ######

    「よォ。」

    「・・・。」

    "こいつ、当たり前のように入ってきたな"。
    と言わんばかりの形相で、クロコダイルは突然開いた資料室の扉の前に立つ、ドフラミンゴを見上げた。
    手には有名ペット用品ブランドの紙袋を下げている。

    「・・・お前、暇なのか。心底羨ましいぜ。フラミンゴ野郎。」
    「フッフッフッ。部下が優秀だとトップは暇なのさ。」

    挨拶代わりに毒づいて、見上げた男は随分と、上機嫌のようだ。
    この黒猫が来てから、この男の現れる頻度が格段に上がっている。
    そんなに、動物好きには見えないが、成程、人は見かけに寄らないなどと、頭の中でゴチャゴチャと考えた。

    「・・・ホラ、カタログ。」
    「・・・あァ。ありがとよ。」

    椅子に腰掛けて黒猫におやつをあげるクロコダイルに、ドフラミンゴは立ったままスロットマシンのカタログを突き出す。
    クロコダイルが受け取っても、ドフラミンゴはその手を離さなかった。

    「・・・なんだ、」
    「あ、あとォ・・・、」

    モゴモゴと、言い淀むドフラミンゴはポケットに突っ込んだ手のひらを出して、掴んだ紙切れを二枚、クロコダイルの眼前に持ってくる。

    "海王類VSカラクリパイレーツ"

    どうやら、映画のチケットらしいが、その紙切れに踊る、威勢の良いタイトルに、クロコダイルは珍しく呆けた顔で瞬きを繰り返した。

    「違う違う違う・・・ッ!聞いて!!聞いて鰐野郎!!おれちゃんとしたデートも出来るんだが?!?!出来るんだがなァ・・・、」

    黙り込んだクロコダイルに、聞かれてもいない言い訳を捲し立てたドフラミンゴを、黒い猫はキョトンとした顔で見上げている。
    一度、言葉を切ったドフラミンゴは、簡素な机にチケットを2枚叩きつけた。

    「お前が行きたいって言うから!!!!」
    「お・・・、おれのせいにすんじゃねェよ!!!照れんなら似合わねェ事すんのはヤメロ!!!」
    「照れてねェよ!!そう見えるかもしれねェけど、照れてはねェよ!!!」
    「気持ち悪ィ顔がさらにキモくなってんだよ!!!鏡見て仕切り直せ!!!」
    「我に返ったら全てが終わるんだよ馬鹿野郎!!!何なんだよ!!じゃあ選べ!!!リゾート島貸し切りか、B級映画鑑賞!!!
    ハイ!!どっち?!?!」
    「・・・B級映画鑑賞ッ!!!!」
    「・・・そういうところが好きッ!!!!」
    「ありがとよッ!!!」

    ゼェゼェと、切れる息に馬鹿らしくなった。
    二人して、軽い椅子に大人しく収まると、妙な沈黙が支配する。

    「・・・最近どうよ。」

    取り繕うように、頬杖を付いたドフラミンゴが、ポツリと言った。
    意味も無い世間話。商いの景気。最近の出来事。
    そんな、平和と見紛う、平凡な時間を、過ごそうとすれば、必ずこの男には切り捨てられると思っていた。

    「・・・子供の、"声"が、」
    「あァ?子供ォ?」

    ゴロゴロと、この世の悲劇など、何も知らないかのように、間抜けな音を出した黒猫を膝の上で撫でながら、クロコダイルは低い声で言う。
    聞き覚えのある、"懐かしい"幻覚。
    それが、いつまでも思い出せないこの焦燥には、既に、うんざりとしていた。

    「足音と、声が、偶に聞こえる。働きすぎで、どうやらおれの頭は可笑しくなっちまったらしい。」

    珍しく、疲れたように言うクロコダイルを、ドフラミンゴは眺めている。
    "家族"でも、"部下"でも無い、自分に"左右されない"、ある種"都合の良い"存在。
    それに、こうして、"昼間"に会える、良い"口実"を手に入れた。

    「・・・"クラバウターマン"。」
    「・・・あ?」

    その"口実"の、喉元を撫でたドフラミンゴは、頬杖を付いて気の抜けたように笑う。

    「"船"の"凶事"を知らせる"妖精"。聞いた事ぐれェあるだろう。」
    「・・・まァな。・・・だが、おれァ"船乗り"じゃァねェ。」
    「"船乗り""だった"時もあるんだろ。その時から付いてきてるのかもな。
    ・・・子供の逸話と言やァ、そいつが定石だ。」

    突然起き上がった黒猫が、クロコダイルの膝から飛び降りた。
    ゆらゆらと揺れる尻尾を立てて、ゆっくりと、小さな頭が振り返る。
    金色の丸い瞳が一度、ギラリと光る"幻覚"を見た。

    (船の"凶事"を、知らせる妖精。)

    その名に違わず、知らせに来たのか。
    吐き気がする程の、"嫌な予感"と、"負け犬"の"気配"。

    「・・・あ、」

    唐突に、記憶の底で燻っていた朧気な残り火が、パッと明るく炎を上げた。
    クロコダイルは床に佇む小さな生き物を見下ろして、呻き声を漏らす。

    (・・・"あの時"も、"知らせ"に来てたのか。)

    燃える帆船、落ちた左手首と、向こう傷。"最期"に、奴らは何と言った。
    まるで、古傷が開いて、血が滲むような感覚。

    "また"、知らせに来たのか。
    身も凍る、"絶望"を。

    ######

    『・・・ヒック、うぅ、』

    あァ、とうとう、"出やがった"。
    妙に静かな執務室で、啜り泣く声がする。
    夢で見た、あの、奇妙にぼんやりとした子供の影が、ゆらゆらと揺れながら泣いていた。

    どうして、今まで、忘れていたのか。

    (・・・おれは、こいつを、知っている。)

    敵わなかった、レヴェル"グランドライン"。死にゆく"同胞"。
    "生きよう"とすれば、その"甘え"に、この海は容赦なく牙を剥く。
    "あの時"も、同じようにこの子供は、クロコダイルの前で、泣きじゃくっていた。

    『・・・"船長"、ぼくたちの冒険は、もう、終わりなの?』

    目が、合っている筈なのに、どうしたって、その顔は"見えなかった"。
    泣きじゃくる、その子供に、クロコダイルは思わず、自分の瞳を手のひらで覆う。

    (・・・冒険?。・・・馬鹿言うなよ。)

    "負け犬"に、語れる"理想"は、この海には無い筈だ。
    だから、同じ轍を踏まないように、"砂漠"に籠もったのに。

    「・・・"海"なんざ、もう、御免だぜ。」

    低く、絞り出したその"声"に、子供は泣くのを止めて、呆然とクロコダイルを見上げた。

    『・・・ずっと、一緒に居たかったけど、』

    まるで、花弁が散るように、足元からゆっくりと、子供の姿が消えて行く。
    それを、静かに眺めたクロコダイルはふらりと、椅子に倒れるように腰掛けた。

    (・・・何だってんだ。)

    その迷信を、振り払うようにクロコダイルはデスクの上で眠る電伝虫の受話器を取った。
    あんな"迷信"に、かまけている時間は無い。
    "報告"を、はやく、あの"ルーキー"を始末したという報告を。

    プルプルプル、と、相変わらず間抜けなコール音が何度かしてから、ガチャリとこれまた間抜けな音がした。

    『ヘイまいど こちらクソレストラン。
    ・・・ご予約で?』

    その日、"クラバウターマン"が死んだ事を、誰も、知らなかった。





    「・・・あ?いねェのか。おーい、"ネコ"ー。」

    我が物顔で、レインディナーズの資料室の扉を開けたドフラミンゴは、姿の見えない"黒猫"を、キョロキョロと探した。
    磨かれたその"見聞色"に、生き物の気配は映らない。

    「・・・何だよ。ツマンネェな。」

    都合の良い"口実"が、漠然と、消え去ったように感じたドフラミンゴは、静かに不満を口にする。
    そのポケットの中で、ベリー札と一緒に纏められた2枚の"チケット"が使われる事は、終ぞ、無かった。

    ######Endcredit

    「・・・よく出てこれたな、鰐野郎。いやほんと。ほんとほんと。」
    「・・・暑苦しいんだよ。離れろ。」

    新世界の片隅。
    僅かな情報を手繰りに手繰って、やっと手の届いた男は、額に間抜けな絆創膏を貼っていた。
    挨拶も無しに、後ろからその背中に腕を回せば、懐かしい悪態が飛んでくる。

    「なァ、本当に、手ェ組まねェか。匿ってやるよ。」

    喉の奥から絞り出すように言ったドフラミンゴの、顔は見えなかった。
    クロコダイルは相変わらず、"情けない"男だと思う。

    『・・・"船長"。』

    また、あの声が頭に響いた。
    それでも、クロコダイルに前のような"焦燥"は無い。

    『・・・"船長"、おかえり。また、船に乗せて。』

    呆れる程に、"義理堅い"妖精だ。
    この海に、野心溢れる船など、腐るほどあるというのに。

    (・・・こんな、)

    態々こんな、"旧時代"の"残党"が、戻ってくるのを待っていたとでも言うのだろうか。
    クロコダイルは纏わりつく長い腕を解いて、葉巻を咥えて火を付けた。

    物好きな、馬鹿が"二人"、上がる紫煙を懐かしそうに見る。

    「・・・おれの、」

    波に揺蕩う、亡くしてしまった左手首と、同胞達。
    それを、後悔するのは、今日で終わりだ。

    「・・・おれの船に乗りてェのなら、"ボス"と呼べよ。・・・愚民"共"。」

    それは、沈まぬ帆船。
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    kgkgjyujyu

    INFOマロ返信(03/26)
    ※禪院恵の野薔薇ちゃんについて
    このお話の野薔薇ちゃんは、禪院家の圧により高専には通わず、地元の高校に通っている設定なので、呪術師界隈のどす黒い風習や御三家の存在を知らぬまま、知らない男の嫁になりました。(恵との約束を思い出すのは暫く先です)

    最初の数ヶ月はおそらく死ぬほど暴れたし、離れからの脱走も何度も実行しておりましたが、離れの周りには恵が待機させた式神が野薔薇ちゃんの存在を感知した際に、即座に知らせる為、野薔薇ちゃんが離れから逃げられた試しはないです。
    なので、恵が訪ねてきても口はきかないし、おそらく目も合わせなかったとは思います。
    恵は、自分が愛を与え続けていれば、いずれは伝わるものと、思っている為、まったく動じません。

    ★幽閉〜1年くらいは
    恵に対する愛はない。けれど、野薔薇ちゃんが顔を合わせるのは恵だけなので、次第にどんどん諦めが生まれていきます。ちなみにRのやつは4年後なのでこの段階では身体に触れてすらいない。毎日、任務のない日は顔を見せて一緒に過ごす。最低限の会話もするし、寝る場所は一緒です。時間があるときは必ず野薔薇ちゃんの傍を離れません。


    2回目の春を迎えても、変わらない状況に野薔薇ちゃん 1202