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    aoixxxstone

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    aoixxxstone

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    千ゲ♀だけど千空ちゃん出てこないが羽京ちゃんが出てくる、わりと地獄みたいな話だし途中、メモ

    #千ゲ
    1000Sheets

    「千空ちゃんのお嫁さんになりたい……」
     管を巻く俺の隣で、羽京ちゃんが苦笑する気配がした。安い居酒屋のザラザラしたテーブルじゃない、丁寧に磨かれた飴色のバーカウンターに突っ伏して、俺はぐずぐずと鼻を鳴らす。バーテンダーのお兄さんも慣れたもので、空になった俺のグラスを下げて、黙って新しいお酒を出してくれた。いつものやつ。氷たっぷりのロングアイランド・アイスティー。
    「なればいいじゃない。ゲンが頼んだら、千空は断らないでしょ?」
    「それじゃ、意味ないの!」
     羽京ちゃんは優しいし紳士だけど、乙女心が理解ってない。そう言って詰ると、そりゃまあ僕は中学からずっと男所帯だし、と色気のない答えが帰ってきた。そういう問題じゃないと思うけど、アルコールで痺れた頭では、じゃあ何が問題なのか上手く指摘できる気がしなかった。
     若草色のパーティードレス、サテン生地のハンドバッグ、ドレスと同じ色のハイヒール、金色のロゴが箔押しされた紙袋、袋から覗く淡いブルースターの可愛いブーケ。見れば一目で分かる、結婚式に出席してきた帰りだって。
     突然バーに呼び出しても、羽京ちゃんはもう驚かない。今年、これで三度目だから。用件はいつも同じだ。泣き言、不平不満、誰にも言えない気持ちの発散……要するに愚痴だ。こんなの聞かされる方は堪ったものじゃないと思うけど、羽京ちゃんは嫌な顔一つせず聞いてくれる。乙女心は理解してくれないけど、本当に優しい。一応は芸能界の端っこに腰掛けている、その上、メンタリストなんて自称している俺が、こんなことを話せるのは羽京ちゃんくらいしかいないのを分かってくれているのだ。
    「……千空ちゃんは、きっと、そういうの興味ないから……」
     千空ちゃん。石神千空。たぶんこの世界で知らない人はいないだろう、復興世界のアインシュタイン。俺の、三つ年下の恋人。──生きてる日数で換算したら、もう少し年の差が縮まってる気がするけど、生憎と俺は自分の生きた日数をカウントとかできないので、石化以前の年齢差で言うと、って注釈が必要だ。逆転まではしてないはずだから、たぶん大丈夫。細かいことは気にしない。
     俺が千空ちゃんと付き合い始めて、そろそろ五年目。なし崩し的に同棲を始めてからは、三年が過ぎた。俺もそろそろ、式に出席するのに振袖は選べない年齢になってきた。動きにくいから元から着なかったけど、着ないのと着ることができないのは別の話だ。
    「……きっと、一ミリも唆られねえ、とか言うよ……ふふ、やーだー目に浮かぶ〜」
     たかが書類一枚、指輪一つに何の意味があるのか。俺だって三年前には考えもしなかった。仕事が楽しくて、毎日が満ち足りてて、千空ちゃんとの関係も上手くいってて、それでよかった。今だって仕事は順調だし、毎日の生活に不満はない。千空ちゃんとも相変わらずだ。甘ったるい雰囲気はないけど、ちゃんと必要とされてるって分かる。なのに、三年前は頭の端にもなかったことで、こうして胸の内に靄を抱えてる。何も変わってないのに、否応なしに変わっていくことを思い知らされる。
    「千空ちゃんの子供、欲しいな……」
    「ゲン……」
     羽京ちゃんの手が、俺の頭を撫でる。愚図った子供をあやすような、何の色もない手つきで。
     千空ちゃんと、千空ちゃんのパパ・百夜さんに、血の繋がりはない。血よりも濃い絆で繋がった二人は間違いなく親子で、俺は会うことはできなかったけれど、きっと百夜さんは素敵な人だったのだと思う。レコードに残ったわずかな声も、宝箱に集められた砂金とプラチナも、全部、百夜さんが千空ちゃんのパパだと感じさせる、深い愛情の賜物だった。
     だから言えない。言いたくない。千空ちゃんの子供が産みたいって、それを口にすることが怖い。それは、千空ちゃんと百夜さん、二人が築いてきたものを、俺が壊してしまう言葉のように思えて。
     それに、千空ちゃんは俺が生理周期を調整するために低用量ピルを使用しているのを知っている。その上でかならずスキンを使うし、それでも所謂〝危険日〟には絶対にしない。──千空ちゃんは、俺の妊娠を望んでない。
     千空ちゃんは、愛情深い人だ。一方で、恋愛なんてしなくても生きていける人でもある。そんな千空ちゃんが、俺なんかを選んで恋をしてくれた。それだけでも、奇跡みたいなことだって、分かってる。
    「結婚って、なんだろうね……羽京ちゃん、分かる……?」
    「……約束をすること、かな」
    「やくそく」
    「病める時も健やかなる時も……って、言うでしょ?」
     死が二人を分かつまで。
     俺は、約束が欲しいのかな。ううん、きっと違うな。だって俺はもう千空ちゃんと約束したもの、二人仲良く地獄に堕ちるって。死が二人を分かつまで、ならぬ、死が二人を分かつとも、だ。あはは。
     俺は、どうして結婚したいんだろう。どうして、千空ちゃんのお嫁さんになりたいんだろう。どうして千空ちゃんの子供を欲しいと思うんだろう。
    「…………俺は、せんくうちゃんの、」
     千空ちゃんと──。
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    aoixxxstone

    DOODLE花に嵐(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20351543)のちょぎくにが、南泉にご迷惑をおかけする話、の始まり。終わらなかった……
    時系列的には、花に嵐本編→本作→花に嵐のr18部分。
    にゃんくにっぽい雰囲気に見えるところがあるかもですが、二振りの間には一切そういう感情はありません。終始ちょぎくにです。
    猫の手を借りる夜 (1)「南泉一文字……その、折り入って頼みたいことがあるんだが」
     そう言って夜半、部屋を訪ねてきたのは、普段あまり話すことのない相手だった。
     山姥切国広。本作長義以下五十八字略こと山姥切長義の写しであるこいつは、誰かさんみたいにひねくれた性格はしていないが、別方向に難儀な性質を抱えていて──まあ、はっきり言って社交的な性格とは程遠い。修行から戻ってからは『写し』という自身の出自に由来する卑屈さはなくなったようだが、口下手なところは相変わらずだ。その上、そこに『自分は主のための傑作である』という自負が重なって、却って面倒を起こしてしまうこともある。
     その最たるもんが、本歌山姥切との確執だろう。どっちが悪いとか、どっちが正しいとかいう話じゃない。山姥切には山姥切の、国広には国広の考えも想いもある。それだけの話──なのだが、したたかに酔った山姥切から聞かされた、二振りの会話の下手くそさときたら、これがとんでもなかった。山姥切のやつは端から喧嘩腰。対する国広は言葉選びを間違いまくり。拗れるのも無理はない、という気持ちと、何でここまで拗れてんだ、の気持ちで、聞いてるこっちの頭が痛くなったくらいだ。
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    aoixxxstone

    DOODLE千→ゲ♀/先天にょた/幼なじみ
    惚れた女と一つ屋根の下で暮らすことになった俺の天国と地獄についての記録と考察「千空ちゃん、お待〜! えへへ、今日からお世話になりまーす! シクヨロ〜♪」
    「……おー、自分ちだと思って好きに使え」
     言いながら、千空は不自然にならない程度に、そっと視線を下げた。淡い藤色のワンピース。トップスの部分はレースで大人っぽく、ウエストラインから膝丈のスカートはシフォンを重ねたデザインで、幻のスタイルの良さが際立つようだった。──少しばかり胸元が窮屈そうに見えることに、言葉にならない気まずさを覚えて、千空はふいと顔を逸らす。
     二人が出会ったのは千空が十歳、幻が十三歳のときだ。紺の襟に白い三本ラインのセーラー服とプリーツスカート。或いは進学した先の、胸ポケットにワンポイントの刺繍が入ったブラウスと山吹色のリボン、ボックスプリーツのスカート。千空の大脳新皮質にあるのは、登下校時に見かけた制服姿の幻ばかりだ。私服姿を目にしたのは、偶然に都内の図書館で行き会った一度きり。普段のコンタクトレンズではなく黒縁の眼鏡をかけた幻は、シンプルな黒のニットセーターに、スキニーのジーンズを履いていた。いつもは見ることのないウエストから腰、細い脚へとつづく綺麗な曲線に、千空は跳ね回る心臓を抑えるのに必死で、ほとんど顔を上げられなかった。
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