麗しの含光君麗しの含光君。
近頃姑蘇藍氏二公子である藍湛、藍忘機はそう市井の人々に呼ばれている。名門世家の公子である彼の存在はその見目からも非常に目立つ存在であり、含光君という号が示す通り輝かしいものであることは今に始まった事ではない。だが、あえて今そう呼ばれるのには訳がある。
彼は花生みである。
その身に白の百合や木蓮の花を纏って街に現れ、道侶の酒や身の回りのものを買いに現れるとその芳香と美しさに姑蘇の民はくらりと目眩を覚えるほど。
そしてその花は花結である彼の道侶によってのみ食まれるのだ。
「ふぁ…んん…も、あさ…?」
「うん、まだ卯の刻だからまだ眠っていなさい、湯浴みの用意をするから、魏嬰」
目覚めから愛しい道侶の世話を焼くことはいつもの事。この時刻に目を覚ます方が稀で。
「ん…湯もいいけど、お前の花を食ませて、藍湛。羨羨はお前を食いたいんだよ…駄目?」
「君の為だけの花なのだから、いくらでも。でも、その前に…」
まだ互いに内衣のみを纏った状態で。
日の出まであとわずか。
藍忘機の願いを察した魏無羨はまだ抹額を施こしていない道侶の額にちゅっ…、と口付けを落とした。
「ほら、おいで。俺の可愛い美人ちゃん」
唇が合わさる。藍忘機の舌が魏無羨の歯列をなぞってから唾液を掬いとるように蠢いて。
花生みの糧。
連理の相手の甘い甘い極上の体液の誘い水を唇越しに与えられて、藍忘機の体に灯る欲。
「ふぅ…んんっ…んぅ…」
項に手を添えて、深く深く唇の交歓を交わす。
もっと、もっと欲しい。
連理の愛が宿る物で喉を潤し、花を生みたい。
「魏嬰…」
「せっかく早起きしたんだ…綺麗な花を後で…咲かせてよ、ねぇ」
下衣に潜んできた手に触れられて昂るソレから出る蜜を受け止める為に、藍忘機の唇は魏無羨の唇から顎、首から鎖骨を辿ってみぞうちへと。
臍から下腹へ、そして。
「全て出して、魏嬰」
「ん…暖かい藍二哥哥の口で吸い出して
…ぁ…♡」
早起きの水やりに潤み花咲く卯の刻の秘め事。
新たに咲いた花を食みながら朝の支度を手伝う魏無羨が結い上げ、冠を付けた髪には新たな花。
「白の霞草か…可愛いな。よし、この国一番の美人ちゃんの出来上がりだ。お仕事頑張れよ、藍湛。行ってらっしゃい」
「うん。行ってくる」
今日もきっと人々は口々に噂するだろう。
”麗しの含光君は道侶様に愛されて一段とお美しい”と。
間違ってない。
愛する道侶に結われた髪から生まれる花が”幸せ”だと語りかけるように咲き誇り、彼を彩るのだから。
そしてそれはずっと続いていくのだ。
二人が共にある限り。
ずっと。