代わりに、誓いの口付けを。寂雷の小指の根元にちらりと光るものを見つけ、左馬刻はその左手を取った。身長の割に細いとはいえ、骨ばった男の指にいかにも子供用の指輪はいささか不恰好だ。
「ああ、つけたままだった。今日退院した子に貰ったんだ」
「……似合わねえな」
「そうだね、でも」
すり、と、寂雷のかさついた指が左馬刻の手のひらを撫で、銀の台座の真ん中で宝石を模した青いガラスが光を反射しキラキラと輝く。
「この青が、なんだか君を思い出して」
愛おしげに目を細める寂雷を見て、左馬刻は安っぽい指輪の横(くすりゆび)に小さくキスを落とした。
全てをすくおうとするこの手に、指輪(かせ)は似合わない。