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    norico_nnn

    センチメンタルな話が好きです。

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    norico_nnn

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    おそチョロ前提の一チョロ(一→チョロ)。リハビリで書いたため、ほとんど無校正です。誤字脱字衍字を発見した場合、マシュマロ(https://marshmallow-qa.com/norico_nnn)で教えていただけると幸いです。[23.12.31]

    翡翠の纏足 舌打ち、摘まみ食い、盗み聞き。チョロ松の悪癖は数あれど、目下僕に害をなすのは他人の靴を勝手に履くという癖だった。しかもわざわざ選んだように、僕の靴ばかり履くのだ。常日頃から親しさを結ぶおそ松のでもなく、靴箱へ乱暴に突っ込んだカラ松のでもなく、なるべく端に寄せて慎ましく揃えた僕の靴を。
     本人に訴えれば、俺のすぐ隣に置いてあるから悪いのだと、何ら悪びれることなく平然と言い返してきた。俺が履きたくて履いてると思う? 玄関に向かった爪先がここだと示すところに、なぜだかいつもお前の靴があるんだよ。俺がお前のを履いてるんじゃなくて、お前が俺に履かせてるんだから、むしろお前が悪い。そうだよ、お前が悪いんだ。ジコボーエーの意識とか、注意力とかが足りてないんじゃないの。慌てて靴をしまう前に、ちょっとくらい物事の危険性ってのを考えたら?
     悪辣を極めた言動が通常運転なチョロ松の側に寄るのは大体の場合において危険であり、それは靴の着脱時にも適用された。次々と捲し立てられる圧倒的な詭弁、恐るべき暴論に、僕はしばし閉口する。無理矢理論点を摩り替え被害者の泣きっ面をしたたかに打つ技は、まさにチョロ松を六つ子の暴君たらしめるものだった。
     こいつの非道っぷりを物ともせぬおそ松がチョロ松の真横へ乱雑に靴を並べており、ちょうど反対側の空間がすっぽり空いていたから、そのスペースへ吸い込まれるように置いてしまっていた。頭が空っぽのカラ松はともかく、泣き虫の十四松とのんびり屋のトド松だって見事に危険を察知して、チョロ松の靴を遠巻きにしている。そうか、僕も多少は不注意だったな。五人の敵、それも上位の敵を相手に危機管理能力を著しく欠いていた。夏休みも昨日で明けたことだし、長期休暇で緩んでいた気を引き締め直す良い機会だ。
     自分を説得出来そうな理論を組み立てることで憤りを治めた僕はようやっと引き下がり、翌日からは気をつけて遠くに離して置いてみた。悪名高い六つ子の中でも札つきの悪童コンビを警戒して一番遠くに置いてある、十四松の靴の脇にひたりと近寄せる。寄り添う二足は危険性を最大限に排除した安堵から、互いに胸を撫で下ろしていた。これで一安心だ。大丈夫。明日僕の足は、僕の靴に正しく包まれている。
     ところが翌朝、登校しようと鞄を引っ提げ玄関に赴けば、僕の靴は見事になくなっている。チョロ松はおそ松と先に家を出ており、呼び戻すにはタイミングが微妙に遅かった。ちゃんとチョロ松の置き場の近辺を避けても、あいつは僕のを履いた。お前の隣の靴はおそ松のだったろうに、なんで僕のをわざわざ履くのか。無意識、それとも故意の仕業。木製の靴箱に残されたチョロ松の靴を見やり、僕は今週何度目か分からぬ溜め息をついた。
     幸い踵は踏み潰されていないものの、靴裏は水溜まりでも踏んだのかすこぶる泥まみれで、裏庭で洗わなければどうしようもないくらいだった。仕方なくチョロ松の靴を履いた僕の姿を見て、学校の昇降口で待ち構えていた奴はにたにた笑っていた。そうして我が物顔で、僕が手入れを施した靴の踵をかつんと軽快に打ち鳴らす。靴裏に擦れるリノリウムの床も、僕を声高々に嘲笑う。これは、やっぱりわざとだ。
     兄弟間で嫌がらせが横行するのはさほど珍しくないが、大抵は仕掛ける側が飽きたり謝ったりしてきて早々に決着がつく。しかし今回は長かった。一週間は容易に経ち、二週間も簡単に過ぎ去り、正念場と思われた三週間目もカレンダーの日数を無意味に潰してゆく。加害者のチョロ松は一向に飽きないし、一言だって謝りもしない。飽きっぽいあいつが、まさかここまでするとは。天地神明に誓って、あいつの恨みを買うようなことはしてないんだけど。どうやらこれは長期戦になりそうだ。
     それなら正々堂々と、僕が決着をつけてやろう。多少の卑怯さだって、僕らにとっては正攻法のうちだ。最後に勝てば、それで良い。勝者にこそ正しさが賦与されるのは、世の理である。そうと決まれば行動は早い。善は急げ、悪はもっと急げ。
     摘まみ食いと盗み聞きを悪癖の代表とするだけあって、チョロ松は目敏い。早速靴の中にいくつか画鋲を入れてみても、すぐに気づかれた。靴裏に鳥もちを貼りつけ靴箱の板にくっつけても、奴は無理矢理剥がして履いた。爪先に忍ばせた画鋲は床に散らばされ、ちょっとした撒き菱になる。半端に剥がされたまんまの鳥もちは、無関係なカラ松の靴と棚板とをしっかり固着する。どうしても履かさない僕と、どうしたって履くチョロ松。
     カラ松とトド松は、この密かな戦いを知らない。ただ互いの相棒、おそ松と十四松は知っていた。おそ松は直接手出しはしないものの、僕らのやり取りを遠目で見ては面白がっている。お前の相棒なんだから、仲裁してやめさせろよ。僕だったら十四松に厳しく注意するけど、そこは兄弟間の民度の差だ。暴君との一進一退の攻防をひやひや見守る十四松には「決着は必ずつける」と断言し、とりあえず安心させておいた。
     六つ子には「母さんに言いつけるのは最後」という、暗黙のルールがある。母さんこと松野松代は大黒柱の父さんを差し置いた家庭内における絶対的な掟であり、松野家のヒエラルキーの頂点に君臨していた。外的世界との交流を半ば閉じた僕らへ明確に干渉し得るのは、母さんのみと言っても過言ではないのだ。
     母さんへの密告という最強のカードを切るには時期尚早との判断を、僕は持ち前の理性で冷静に下す。次々に繰り出す多種多様な攻撃を軽くかわされても不思議と仕返しはされておらず、自分一人で十二分に対応可能な範囲内だ。最終手段は慎重に取っておこう。おそ松が絡めば事態は一段とややこしくなるが、チョロ松との一対一なら何とかなるし、何とかさせる。決意を新たにした僕はトド松から取り上げた夕飯の唐揚げにしたたか食らいつくチョロ松を横目に、淡々と白米を口に運ぶ箸を進めた。





     最悪な始業式の日から、そろそろ一か月が経過しようとしていた。穏やかな木曜日の午後、三十人もの生徒を詰め込んだ教室はしんと静まり返っている。四時間目の体育の疲労と昼休みの憩いとの激しい緩急で、多数の生徒が四角い机上に重苦しく沈んでいた。国語教師がチョークで黒板に古文の一節を刻みつける硬質な音が規則的に響き、それがまた生徒達の眠気を否応なく加速させる。瞼に加わる重みは僕も同様で、僅かな抵抗の証と二三度大きく瞬かせた。
     比較的後ろの方の席であるのを良いことに、堂々と舟を漕ぐクラスメイトの後ろ姿から視線を左側に転ずる。埃にくすむ窓の外に広がる、体育祭の準備で日毎華やかに秋めく運動場をぼんやり眺めた。一年の教室は一階に設けられており、ちょうど運動場に面している。しかも僕のクラスは運動場に散らばる生徒一人一人の顔を識別しうる、絶妙な立地であった。
     窓際の席をくじ引きで割り当てられた僕は彼らの人相を、はっきりと把握した。同じ小学校出身の生徒に、別の小学校から来た生徒。図書委員会で話したことのある生徒に、クラスを越えて出来た友人。そして──あっ、あいつがいる。ドッペルゲンガーより見慣れた、そして今現在最も憎らしい顔だ。五時間目はちょうど、チョロ松のクラスと隣のクラスが、合同で体育の授業を受けているところだった。
     普段の授業では眠ったりノートに落書きしたりして時間を潰しているらしいチョロ松も、体育だけは真剣そのものだった。体育の授業って、遊びと授業の中間みたいなところがあるからな。昔から、遊びには本気を出すチョロ松だ。野球、サッカー、バスケットボール。六つ子の僕らでも人数集めに苦労するゲームを、授業でやってくれるんだから大助かりだよね。
     体育のある日は履き慣れた靴でないとさしもの暴君でさえ調子が出ないらしく、週に三日だけは僕の靴が履かれることはなかった。そんな日はすごく楽だ。持ち主が自分の持ち物を使っている、物事のごく正しい在り方をひたすらに噛み締める。これだよ、これ。夏休み前は、こうだったんだよ。僕は僕の靴、チョロ松はチョロ松の靴。あーあ、体育の授業が毎日あれば良いのに。
     一度や二度の失敗でめげる僕ではない。あの後も趣向を凝らした様々な手立てを連日講じ、続けざまにぶっつけた。朝と夕方、靴が盗人の足を離れる時刻を見計らっては、新規に打ち立てた策を慎重に仕込んだ。今度こそチョロ松をぎゃふんと言わせてやると意気込み、僕にしては力強い足取りで玄関に向かった。
     が、どれもこれも無駄に終わった。綿密に張り巡らされた罠はいっそ清々しいほどに見抜かれ、ことごとく無効化される。これが暴君と一般市民との間に広がる、歴然たる差だというのか? そんなの、絶対に許す訳にはいかない。市民が初手で悪政を諦念してしまうから、それを許容と勘違いした君主によって恐怖政治が蔓延るんだから。
     前述したように、一度や二度の失敗でめげる僕ではない。生まれてこの方兄弟喧嘩の絶えぬ家庭で十数年鍛えられたお陰で、精神面ではかなりタフな部類に属している。三度や四度、五度や六度の失敗でも、もういいやと弱音を吐き、諦めてしまう僕ではない。絶対にない。ないんだけど、そろそろ被害者の僕の方が投げ出してしまいそうなくらい、長年培った忍耐力が疲弊しきっていた。
     だって、もうすぐ十月だよ。あの手この手で無理に返却を迫るより、母さんに買い替えてもらえる日をおとなしく待ってた方が早いんじゃないかな。最悪、お年玉をこつこつと積み立てた貯金をちょっとばかり崩したって、無駄遣いには当たらない。靴は外出の際に必ず用いる、生活の必需品なんだから──いけない、こんな考えでは。
     ここで白旗を上げては、あいつの思う壺だ。振るわれる鉄槌をかわして逃げて、僕の心が弱った頃を狙っているんだ。重々しく交わされた、十四松との会話を思い出す。僕は実に兄らしい口ぶりで、弟の十四松の前で高らかに宣言したのだ。僕の自尊心にかけ、必ず靴を取り戻すと。たかが靴、されど靴だ。そうじゃないか。そうだろう? 自問した僕は消耗した理性の代わりに知性で己を叱咤し、隙をついて増長しかける惰性に抗った。
     雑念を払うべく軽く頭を振り、再び窓外の景色を注視する。今はちょうどリレーの練習で、第三走者が第四走者にバトンを手渡しているところだった。その慌ただしい交錯の中にチョロ松はいない。教科書の陰で頬杖をついた僕は視線をじぐざぐに走らせ、地べたに三角座りさせられている集団の先頭から順番に数え、チョロ松の走順を確認した。チョロ松はアンカー、第六走者だ。
     校庭を一周した第四走者から第五走者にバトンが移ると、とうとう第六走者たるチョロ松の登場だ。砂上に引かれた白線にずらりと並び、それぞれ屈伸して準備するアンカー達の真ん真ん中で、チョロ松がただならぬ威風を吹かせている。
     チームで一番の俊足が選出されているのは、それぞれの浮かべる誇らしい表情で分かった。彼らが体育系の部活動に所属しているのは、醸し出す特有の雰囲気から想像に難くない。なのに突出して偉ぶった顔つきのチョロ松はおそ松に倣った立派に暢気な帰宅部で、体育会系のそうそうたるメンバーに混じって一人だけむやみに発している違和が、たまらなくおかしかった。
     一番にゴールする使命を帯びた他の四名はバトンを受けるや颯爽と走り出したのに、チョロ松だけは些か遅れた第五走者を待っている。事前運動も兼ね、ぴょんぴょんとその場で数回跳躍していた。チョロ松に履かれたチョロ松の靴が、足の動きに合わせて伸び縮みする。母さんの洗濯した清潔な白い靴下は、チョロ松の足を踝の上までぴったり覆っていた。
     ようやく現れた第五走者が、受け渡しに適切な距離を保ちつつ先行するチョロ松に、爪が白むほど強く握り締めたバトンを差し出す。その仕種は差し出すというより、突き出すとの表現が相応しい。刃物の鋭さで大気を切り裂くバトンは、チョロ松の手に難なく収まる。チーム全員の想いを託されたバトンは癖の悪い手のひらにすんなり馴染み、初めっからチョロ松に独占されていたみたいに、プラスチックに施された塗料を人工的に発色する。
     後ろ手でバトンを受け取ると即座に左手に持ち替え、アンカーを任されたチョロ松がわざと緩めていた足をフル稼働させる気配がした。ここからだ。リレーに徒競走、パン食い競争に障害物競争。足の速さを競う種目は、チョロ松が走り始めてからが本番だ。つい身体を捻って窓の外へ乗り出しそうになり、左半身は体育の喧騒に包まれる校庭に集中したまま、右半身を退屈な国語の授業に押し込めてぐっと堪える。
     クラスメイトの不規則なイビキを「天国と地獄」の代替としたバックミュージックに、チョロ松が快走している。きっちり脇を締めリズミカルに両手を振り、左右の足を全速力で回しては、先行していた走者をその健脚で次々に追い抜いていった。破竹どころか爆竹の勢いだ。今日も絶好調だな。
     チョロ松は六つ子の中で一番足が速いが、校区でも一等速い。小学生の時分には地域のかけっこ大会を荒らしまくり、ささやかながらも文房具や駄菓子などの賞品を片っ端からせしめていた。走りすぎてオンボロなチョロ松の靴は、赤塚に住まうどの少年よりもうんと遠くに連れていってもらえる。それは悲しき消耗品たる靴にとっては、きっと飛び抜けて幸せなこと。
     真っ赤なバトンを握り締めたチョロ松は、最後まで快調だった。教科書のお手本からちょっぴりずれた我流のフォームが、チョロ松の猛烈な前進を強力に促す。砂埃を旋風に巻き上げて、望んだゴールラインにその身を最速で到達させる。コマ撮りフィルムにでも録っておきたい、一瞬一秒たりとも見逃せぬ、両足の上げ下げが象る黄金の輪の流転。
     相変わらず、速いなあ。他の競争者を追い抜いた後は、決して自分の影を踏ませなかった。誰が呼んだか、赤塚の韋駄天の異名は伊達じゃない。みんな、チョロ松の走ってるところを見る機会があれば是非見てよ。脳に詰まった語彙をいっぺんに失って、とにかく速いとしか言いようがなくなるから。みんなも、僕と一緒の感想を抱くはずだよ。チョロ松は速いなって。
     同じチームのメンバーがわっとチョロ松の側に駆け寄り、一斉にチームメイトの活躍を称えた。短時間で四人抜きした直後だというのに、約一週間後の一等賞が既に確約されたも同然のヒーローは息切れの素振りすらなく、自分では爽やかかつクールだと思い込んでいるであろう笑みを振り撒く。ついでに体操服の袖で軽く額を拭っては、まだまだ充分な余裕の保持を演出する。リレーを己の独壇場と見なし、女の子にモテようとしてるのは見え見えだった。
     あいつ速い割りに意外と転びやすいところもあるけど、転倒のミスが三回あってようやくハンデ一つだもんな。最後にスタートさせられるくらいじゃ、全く足りやしない。いつだって一位が順当なチョロ松の背中を、僕は幼少の頃から追いかけさせられてきた。はたまた、率先して追いかけていた。僕は拍手の代わりにと、底が擦れるときゅるきゅる鳴る上履きを履いた爪先で、とんとんと控えめに床を小突いた。
     銀色に輝く飛行機が、澄み渡る空に長い長い雲の線を引く。その下には止まない歓呼を快活に上げる、極めて健やかな生徒達。紅白の祝福された色合いは、体育祭までの日数を華美なコントラストで埋めてゆく。チョロ松の背後で、当日には燦然とはためく予定の一等の旗が、金の縁取りを幻視させて麗しく靡く。いかにも秋らしい授業風景を眺めていると、なんとはなしにチョロ松の真意が見えてきたような気がした。



     二階の子ども部屋に居合わせるメンバーは、基本的にはランダムだ。一人っきりは珍しいし、六人大集合というのは中学に上がってからめっきり回数が減った。しかも僕らは六人の団体行動を好む一方、特に親しい兄弟との二人組で行動することがしょっちゅうであるため、移動する際の人数は偶数が多い。自分達で選んだペア以外の兄弟と二人きりになるのは、ごく稀な事象である。
     今日も今日とて遠回しに履かされたチョロ松の靴を脱ぎ、子ども部屋に続く階段を漫ろに上がる。やれやれ、あいつの気まぐれに付き合うのは骨が折れる。あんな横暴な性格の奴をおそ松はやたらめったら気に入ってるんだから、あいつもあいつでどうかしている。ほんと、趣味が悪いよ。チョロ松の盗人猛々しさは、一周回って感心するレベルだ。
     最後の一段を踏みしめ、蛍光灯の差す狭い廊下へと進み出る。景気良く開け放たれた襖の向こうには、部屋着に着替えたチョロ松が自由気ままに寝転んでいた。教科書でいっぱいの鞄を下げた僕は、ページを捲る片手間に何となく漫画本から顔を背けたチョロ松と目線が重なり、あ、と間抜けな声が漏れる。
     チョロ松、帰ってたのか。おそ松が担任から居残りを命じられたのと、十四松がトド松と放課後遊ぶ約束をしていたのとが偶然今日の予定に収束した結果、うっかり鉢合わせてしまった。その上、僕らは六人でささやかな小遣いを出し合い、月刊の漫画雑誌を買っている。足が速いという理由だけでチョロ松が買い出し係を請け負ったのだが、その代わり最初に読む権利を得ていたことを失念していた。だから雑誌の発売日には帰宅すると必ずチョロ松がいて、それはたまたま今日だった。
     僕が「あ」の音ならチョロ松は「お」の口で、続いて発する台詞が「おかえり」なのか「おそ松」なのかは、本人にしか分からない。腹這いのチョロ松は半分に折った座布団を肘置きにしてページを捲りかけていたが、襖の間に佇立する僕を視認するや否や、弾かれたように立ち上がる。兄弟で回し読みする協定を結んだ漫画雑誌のざらついたページの端に、真新しい折り目がつく。
    「ちょっと待ってよ」
     さすがに気まずいのか、入れ違いに出て行こうとするチョロ松を慌てて呼び止めた。粗暴な素振りにもほの見える、やましさの疼き、良心の咎め。それらがお前にもあるんなら、謝罪の一つや二つ出来ないものかな。胸中で呟く小言の山積を平気で蹴散らすこいつに、先日の授業中に閃いた僕なりの回答を伝えてやりたい。
     去りゆく手首を思わず掴み、我ながらその強度に驚いてすぐに放した。僕に捕まえられる原因に思い当たる節しかないチョロ松は、眉を微妙に歪めて不服の意を示し、すぐさまこちらを振り返る。
    「なに、いよいよ母さんに言いつける?」
    「お前、体育祭までもたせるために僕の靴履いてるんだろ」
     ゆるり開くチョロ松の瞳孔とやや下がった下瞼が、午後の微睡みに打ち勝ち導き出した僕の答えは花丸ぴっぴの正解なのだと高らかに告げていた。やっぱり、そうだった。毎年十月に開催される運動会および体育祭は、松野家の六つ子の筆頭イコールおそ松というイメージを払拭し、リレーの花形になったチョロ松の名前が喜色を伴い連呼される唯一の祭典だ。六つ子のリーダーの座をおそ松から奪取しボスに成り代わりたいこいつが、その一日に全てを賭けているのは明白だった。
     僕ら六つ子には自分の名前以外に、自分だけ違った特別なもの、個別という概念がほとんどない。安くなるからとダースで服を買われるように、靴もダースで買われていた。兄弟に支給されるのは、同じものを同じ数。それが松野家の平等だ。長男のおそ松でも末子のトド松でも、特別扱いされたりしない。僕らは最小単位を六とする、六束ひとからげの扱いが定番なのだ。
    「まあね。意外と抵抗してくるから、ちょっとびっくりしたけど」
     図星を指されたチョロ松はさしたる反省の色も泛べず、あっさりと事実を認める。満面の不機嫌が霧消したかと思えば、両手のひらを上に向けて肩を竦める、どこか鼻についてわざとらしいリアクションをしてみせた。いかにも芝居じみた仕草は、心に余裕がある証拠だ。前言撤回。こいつにはほんのちょっとのやましさも、良心の欠片さえ残っていない。
     兄弟の中でも個別に活動的なのは、チョロ松、おそ松、カラ松、トド松、僕、十四松の順だ(チョロ松とおそ松はほぼイコールだが、足の速さを加味してチョロ松を真っ先に挙げた)。チョロ松の話すところによると、傷みにくそうな十四松と僕のどちらの靴を拝借しようか真剣に検討した末、十四松を対象にするとすぐ僕に相談するので、問題を自己解決しようとしがちな僕を狙ったという訳だ。なるほどね。
     廊下へ続く敷居を跨ぎかけるチョロ松の足に、注意深い視点を置く。丈長のズボンを纏った両膝は歪みなく、内側がぴったりくっついている。着替えや風呂で瞥見することはあれど、間近で観察することなどそうそうない。男の、しかも兄弟の生足を拝んだって、楽しくもなんともないからね。しかしチョロ松の足には、かねてより興味があった。分岐しつつある六つ子の個性の一端を、身体的特徴から判断出来る可能性を孕んでいる。
    「足、見せて」
     言葉通り、僕に対して片足の裏を向けて寄越すチョロ松に、そうじゃないと即座に手振りで示す。再度のジェスチャーで僕に要求されるがまま、廊下のぼんやりした暗がりの投じられる敷居側から、子ども部屋中央に移動したチョロ松。天井の真下にぺたりと座り込み、うっすら埃の付着した白い靴下を脱いだ。相対する僕も、開いた座布団と漫画雑誌を除けてその前に腰かける。
     するする現れる脹ら脛に、柔軟性のある筋肉がついている。ズボンと靴下に覆われた部分だけは、日に焼けずに生白い。いやに従順な態度で両足を投げ出すこいつに合わせ、僕もちょっとだけ柔和な口調で応じてみる。ここまで来ても一向に謝らないのは、あんまりいただけないけれども。
    「僕の靴借りた分、体育祭頑張ってよ」
    「当たり前だろ」
     こいつら兄弟は五人の敵であると同時に、五人いる別の自分でもある。一人が六倍になり、あるいは一人を六等分する関係性。六つ子は、実に奇妙で伸縮性の高い概念だ。これは実際に六つ子になってみなきゃ分からない感覚だろう。僕らの普通は、六の数字の派生で成り立っている。
     やたら丁寧なマッサージを施すみたいな手つきをし、脚のあちこちに触れてみる。着衣の覆う太腿までは行かず、膝小僧の手前の部分を集中的にまさぐった。これが、赤塚最速を誇る足。遺伝子の微妙な配列差で、速力が倍加されている。母さんの腹にいた時、胎児だった僕達の足にまつわるエネルギーを臍の緒伝いにたっぷり吸い上げて、我が物としていそうなくらいだ。芯の髄まで貪欲なこいつならやりかねない。
     僕の操る指先がくすぐったいのか、チョロ松は時折微かな笑いを零す。繊い産毛が僕の指先に優柔な流れを、皮膚の上に形作った。唇の薄さと皮膚の薄さは比例するのだろうか。生来戯れの軽微な接触に弱いから、おそ松にくすぐられて笑い声を上げているチョロ松という構図は、僕らには馴染み深いものだった。
     一向被害者に謝らぬチョロ松の不躾な脚は、持ち主の性格に似ず真っ直ぐな形をしている。どこにも変な癖のない、無邪気で素直な脚だ。この足を通せばどんな靴にだって羽を生やしてみせるチョロ松は、小学時代に感じていた淡い羨望を抜きにしても、やっぱりすごいと思う。
     親指から小指までの列を成すなだらかな山脈を駆け下りながら、独特な歌詞が印象的な歌を心中でそっと歌う。魔法の指が一本、二本、三本……。さりげなく八本目を抜かすことで、指が十一本あると錯覚させる、アメリカ民謡を原曲とした幼児向けの手遊び歌だ。左足でもう一曲歌い数えてみたら、チョロ松の足指はきっかり十本揃っている。
     足指から下へ辿れば土踏まずに行き着く。そのまま横に滑らせて、砂浜に埋もれ打ち寄せる波に洗われた貝殻の如き、つるつるした質感の踝を撫でた。剥き出しの感触に、人間の身体の四分の一は足の骨であり、両足で五十六個の骨がチョロ松の土台になっているとの感慨に浸る。それから踵を持ち上げ、人差し指で足首のラインをくるりと半周したら、また足裏の触感を確かめに戻った。
     脚に属するパーツ、殊に手近な足裏を隈なく触っていると、突然奇妙な空想に囚われた。古代中国にあった、忌まわしき纏足の風習。それをチョロ松に施したら、どんな気持ちがするだろうか。自然に反した加工を施し、意図的に足を小さくする。押さえつけられ爪先を折り込まれた小さな足は転びやすく、いくら望んでも遠くへ行けない。故意に成長を止め、不健全に育まれた足はゴールテープの晴れやかさから遠ざかり、慎ましく揃えた靴の中に収まる。ちんまりと、実にちんまりとした佇まいで子どもの手のひらの上にさえ乗っかって、天を羽ばたく伸びやかな翼は脆くも剥落する。
     両の翼は純粋無垢な白ではなしに、きっとカワセミの色をしている。右手の巧みな箸捌きで、夕飯の唐揚げを兄弟の皿からかっさらっていくチョロ松には似合いの色だ。鮮やかに川辺を滑る風切り羽を失い、愴然と空を恋うばかりになって初めて、地上の僕はようやくチョロ松と歩幅を合わせられる。
    「一松?」
     不意に沈黙した僕を、怪訝に覗き込むチョロ松。蛍光灯の角度で、漆黒の虹彩が僅かにエメラルドグリーンに光った。このままでは、自分でも不埒極まる想像を見抜かれる。勉強嫌いのこいつは纏足なんていう歴史に属する言葉を知らなさそうだが、六つ子の共感覚で嗅ぎつける可能性がある。これ以上の面倒を起こすのは、なるべく避けたい。
     突き刺さる訝しげな視線をどうにかして誤魔化すべく、ちょうど這わせていた親指の腹で適当な足裏のツボをぐっと押した。引き出されるのは苦痛と快楽、二つに一つだ。
    「ああああああ!」
     苦し紛れに押下したツボは不調の在処にぴったりだったようで、僕に脚を委ねきっていたチョロ松は短い絶叫の後に片膝を抱え、畳の上で身も世もなく悶えては、ひどい痛みにもんどり打つ。まだ若いのに、身体に不調があるのか。そういえばここって確か、胃腸だったよね。兄弟のおかずを平気で横取りするほど、食べ物にがめついからだよ。お大事に。
     畳の上に惨めったらしく転がるチョロ松に対し、相も変わらず冷静に座り込む僕という位置関係で、自然と相手を見下げる格好になる。神経を貫く痛みに左の瞳を潤ませたチョロ松は、弱々しい力で僕を見上げていた。助けを求めているのでも恨みが篭っているのでもなく、とにかく茫然とした目を僕に向けた。こいつなりに今までの報いを甘受してるんなら、少しは可愛いげがあるってものだ。
    「仕返しか?」
     もう片方の足裏も同じようにすれば、両目がきれいに濡れる。左目に次いで右目も水分をたっぷり含み、眼窩の縁に小規模な湖を湛える。左右対称は美の基本だ。しかし瞳が潤めば宝石になるのは我らがマドンナトト子ちゃんにのみ許された特権であり、彼女以外はことごとくイミテーションになってしまう。だがイミテーションはイミテーションでも、上等な偽物なら限りなく本物になれる。
    「……そうかも」
     痛む左足の処置にかかりきりで、チョロ松は全くの隙だらけだ。僕はその、いたく無防備な右足へおもむろに手を伸ばした。ひゅっと息を詰め、僕の挙動を祈るように見守るチョロ松の右目が有するであろう表面張力に期待する。派手な兄弟喧嘩でも滅多に泣かないチョロ松が、生理的な涙を流す。底意地の悪い目がしっとり濡れる。だけど一重瞼に挟まれた黒目が映すのは、ぴんと張られたゴールテープの先の、僕もよく知っているにんげん。
    「ねえ、欲しいものがあるんだけど」
     覗き込んだ瞳の裡に一瞬、翡翠の影がよぎった。窓外で揺れる枯葉が季節外れの瑞々しさを取り戻し、頭上を覆う梢に変わる。楕円に宿る水晶に、束の間の五月がはつかに透ける。翡翠、カワセミ、つまりはそにどり。あの日、体育祭のリレーの練習に励むチョロ松を、こちらも授業の真っ最中に観察していた時。チョークの粉を指先にまぶした国語教師が、ただならぬ眠気に襲われている生徒達に追い打ちをかけるようにして、ゆったりとした口調で語りかけていた。「そにどりの」は、「あを」にかかる枕詞。
     中学校に上がってから、ダースはダースでも兄弟で別の色を宛がわれることが少しずつ増えてきた。固有、集団からの緩やかな分離に、戸惑いよりも興奮が上回る。自分で自分の好きな色を選んでも良いなんて、夢じゃないだろうか。環境が環境ゆえに、僕らは幸福のハードルが異様に低かった。
     戦隊ものの影響でリーダーイメージの強い赤に人気が殺到し、案の定おそ松が美味しいところを全部持っていった。六つ子の長男であることを正当な理由づけにして赤を纏いたがる悪童に、僕ら弟達は真っ向から逆らえない。リーダーにはおとなしく従うものと、経験則で刷り込まれている。
     じゃんけんしたら俺が勝ってたと最後まで不服を唱えていたチョロ松は、その補色の緑色だ。主張の強い赤に寄り添うようにして、あくまでも中間を保つ。昔は青とも呼ばれていた、緑は目にやさしい色。周囲の色彩にバランスを引っ張られやすい、控えめで外部と調和したカラー。安心に安定、自然と平和。何もかも本人と反対で、どうしたって似合わないと思っていたのに。
    「ただいまー」
     誰か兄弟が帰宅した物音がして、互いにびくりと肩を揺らして反応する。長いこと二人きりではいられないのは明白だったが、階段を一気に上りきって訪れる玄関の気配で思い出した。チョロ松の涙は既に引き、外界をそっくり写し取る平滑な鏡面になっている。硝子体に満ちていた爽やかな緑は元の枯葉に戻り、日めくりカレンダーをまた一枚乾いた地面に落とした。
     ようよう起き直ったチョロ松は足裏を擦り、痛覚の余韻をしきりに払う。ついでに爪先をきつく反らし、生じてもいない脹ら脛の痙攣さえ止めようとしていた。そうだよね、数日後に体育祭を控えた今、足に何かあったら一大事なのだ。
    「分かった分かった。今度紅白饅頭一個やるから、もうあんなことするなよ」
     何か勘違いしているチョロ松に、あえて訂正はしないでおく。僕が欲しいのは体育祭の参加者へ平等に与えられる砂糖過多の甘ったるい饅頭なんかじゃなくて、もっと、ずっと、良いものなんだけどな。でも、くれるなら白の方をもらうよ。おめでたい赤色は、今の僕にはなんだかとっても癪だから。
     大儀そうに立ち上がったチョロ松は元の通りに靴下を履き、爪先を畳の上につけると足首を数回回して足の様子を確認した。本調子を取り戻したと分かれば、もはやこちらを見向きもしない。染みっぽい壁や白茶けた畳とものの見事に同化した僕を無視し、煤けた敷居を飛び越える。そうして実に軽やかな足取りで階段を下り、彼は彼の相棒を迎えに行った。ああ、あいつは靴下にだって翼を生やせるんだな。
     さっきまでチョロ松がいた場所を見つめて瞬けば、赤い残像が瞼の裏にさざめく。珍しい舌打ちの悪癖が舌に乗りかかるのに気づいて、やっぱり僕はあいつと血の繋がった兄弟なのだと自覚した。こうなれば、取るべき方策は一択だ。僕は赤に色づいては冷たい風に翻る、張り出した枝にすがりつく枯葉に焦点を当て、ゆっくりと瞼を閉じる。
     真っ黒なスクリーンの中央にぽつりと滴る緑の雫が、ゆらゆらした不定形の抽象から徐々に具体を帯びた有形を成してゆく。四方に線を伸長し、次第に細やかな厚みのある層へと変化しては、自身の存在する範囲を着実に増殖させる。広がりきった楕円の内側には繊細な模様が描かれ、それは領域の内部を網羅する葉脈の相を呈していた。
     やがて豊かな切り絵の世界を内包した葉の形が、ふわりと風に舞い上がる。その瞬間、背景が一面の漆黒から純白へと反転した。明暗の逆さになった画面では、周囲の環境が明瞭だ。夏の日差し満ちる長閑な川辺を、葉陰が彩る涼やかな様が見て取れた。あの中のいずれかの梢を旅立ったであろう葉っぱは、もはや何物にも縛られない。
     スローモーションで天に吸い寄せられる葉が、碧水のせせらぎに沿って中空を駆ける。日光が頻りに注ぐことで斑状に形成された彩度の高低を縫い、緩やかな流域の上を一息に滑る。無彩色の虚空に際立つのは、青々とした、うつくしいみどり。
     定点の視界でつと葉を追えば、いつしかそれは一羽の鳥と化していた。青緑の宝石を携えたような羽は風を切ってなお光度を失わず、爛々と照り映え一直線に滑空する。夏の到来を知らせる緑による柔和な小鳥への化生を、僕はひたむきに凝視し続ける。どれほど真摯に見つめても、永遠に手に入らないのに。
     それでも限られた瞳の領域には、容易く囲い込んでしまえる。僕は渓流を真っ直ぐに見据え、小柄な体躯が発揮する敏捷な飛翔を追う。ここには行動を制限する籠も、身体を拘束する縄も、枷も重りも皆無だ。あらゆる戒めから解き放たれた自由奔放の天真爛漫さが、きっと僕には好ましい。
     両翼に挟まれた背中の羽は水辺に氾濫する光を受け、たちまちにコバルトブルーからジェイドグリーンへと新たな彩りを含む。鮮烈な記憶を一方的にこちらへ刻み、自分は忘却の権利ごと与えられた自由を存分に行使し満喫する。いくら望めど得られぬものはみんなみんな果てしなくきれいで、この世は多分それでいいのだ。
     目を開くと瞬時に映像の消えるやるせない瞼の裏にも、水鳥は飛ぶ。手のひらの内に入らぬならばとせめてもの接近を願い、僕は瞼を強く瞑った。上下の瞼の合わせ目に生う睫毛のカーテンをしっかり引き、場内の闇を一層濃くする。途端に若いカワセミの姿が暗幕の上に生き生きと拡大され、翡翠に染めた翼を満天に広げては、憧憬に眩む僕の網膜いっぱいに美しく羽ばたいた。


    (了)

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    Replies from the creator

    norico_nnn

    PAST熊池SS。書いたのはいいけれど、アップする機会を見失っていたもの。誤字脱字衍字を発見した場合、マシュマロ(https://marshmallow-qa.com/norico_nnn)で教えていただけると幸いです。[23.12.31]
    熊なんか恐くない 同僚の池照と付き合い始めて半年経つが、未だキス止まりだ。糊のきいたシャツの裾に手を差し入れ、指を滑らせてもいない。ABCでいうところのAの段階で、長らく足踏みしている。今時中学生でももう少し進んでいそうなものだが、深く口づけた際俺の舌の動きに必死で応えようとする池照の愛らしさに、いつだって軽い懸念は霧消した。
     今晩、池照を俺の家に泊めて映画鑑賞することになっている。学生時代から友人の家に泊まった経験のない池照は、訪問前から今日のいわゆるお泊まりデートを楽しみにしてくれていた。これ幸いと、何も知らない恋人に無理矢理手を出すつもりはない。俺達は俺達の速度で、ゆっくりと進めていけば良いのだ。
    「お邪魔します」と礼儀正しく挨拶する池照を迎え入れ、リビングに通す。酒を飲めぬ池照のために烏龍茶を注いだグラスを並べ、慣れた手つきでDVDをセットする。体大同期の兎原や先輩の裏道さんなら、退屈を極めるB級映画を観せたって平気だ。しかし、恋人同士の親密な時間を過ごすにはそぐわない。なるべく途中で眠られたくないしな。ここは無難に、ファミリー向けの話題作を選んでおいた。
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