この後どうしたら…いい?「第一部隊加州清光中傷、早く手入れ部屋へ。」
第一部隊の帰還と共に俄かに騒がしくなった玄関へ急いで向かう。
聞こえた言葉に不安と焦り。もつれそうになる足を何とか動かしてたどり着いた先、その姿を見た瞬間に自身の胸の内に沸き起こった感情に、私は動揺した。
「主!」
「うん。清光を、手入れ部屋へ」
しかしその動揺を隠してそう告げる。
「歩けるから。平気。」
手を貸そうとした男士の手を断って、目の前にきた清光に私はそっと目を伏せた。それに何を思ったのか、
「見た目より平気。」
と私の肩をポンと叩く。
「でもさ、修理、してほしいな。」
そういうと、私の手を引いて手入れ部屋へと向かっていった。
そんな私たちを追う男士はいないので、必然的に二人きりになる。
私の手を握ったままどんどんと進む清光は、なぜか手入れ部屋を過ぎていく。
「…あの、…清光?」
不思議に思って顔を上げるけど彼の歩みは止まらず、私はぐいぐいと腕を引かれるままでこれじゃまるでどっちが怪我人かわからない。そうしてたどり着いたのは審神者部屋でそこに入り扉を閉めたところでようやく清光の手が離れていった。
「…清光…怪我見せて。」
手を伸ばしてこちらを向いた清光はやはりそれなりの怪我を負っていた。
修行を経て極みになってしばらく。極みとしての練度も高いものになっていた清光が怪我、しかも中傷を負って帰ってくるなんてそうそうない。以前にこんな状態までなったのはもう半年以上も前かもしれない。
あまりに久しぶりすぎる初期刀であり恋刀の怪我に動揺しているんだ。私は。きっと。
そう怪我をした彼を見た瞬間、胸に沸いた感覚に蓋をする。
「…ぃって…やっぱ怪我ってろくなもんじゃないよね。服は汚れるし、」
言いながら座り込んだ清光の前に自分も座り、彼の傷に触れた。
刀剣とはいえ、身体は人間と同じ。
赤くて温かな血が通っていて、怪我をすれば血を流す。
「すぐ、手入れするから。」
「ん…。」
どくん、どくん。
そう心臓が鳴っていた。
そのせいで手が震えてしまっていたんだとおもう。
「ん?主?」
清光が動きを止めてこちらを覗き込んだ。
「…いや、何でもないの。ごめん。なんか、久しぶりだからからな。」
一個一個の拍動が大きくて深くて身体中に響くような感じ。この感じを私は知ってる。
不安とか恐怖とかそんなんじゃなくて、もっとーーー
「主、気づいている?」
私の震える指先に清光の赤い指先が絡みつく。そして覗き込む赤い瞳。
「……すんごいえっちな顔してる。」
「………へ…っ!?」
ほんのり自覚していた感情をズバリ指摘されて飛び上がるほど驚いてしまい、咄嗟に逃げようとしたけれど絡み合った手は逃がしてくれるほど甘くない。
「最初は心配させちゃったかな、って思ったけど、違うよね。それ。」
赤い瞳が正直に言えと責め立てる。
でも私は自分に沸いたこの気持ちに名前をつけたくなくて、気のせいだって思いたい。
「シてる時の顔んなってんだけど。」
清光の言葉にバッと顔が熱くなる。