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    chisaorito

    @chisaorito ヴェランをかきます💛💙

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    chisaorito

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    第21回月イチヴェランに参加しました!
     
    借りたお題は「②どっちにする?」です!

    2024/4/30up

    #ヴェラン
    veranda

    お望みのまま 「……さて、じゃあ、ジャンケンでもするか?」
     ランちゃんに聞かれ、俺の喉がゴクリと音を立てた。緊張で喉はカラカラなのにな!
     いや、緊張とは違うか〜? 期待? 大いに期待して、ソワソワして落ち着かない。
     反対にランちゃんは俺の目前で嫣然と微笑んでいる。余裕だなあ。さすがランちゃん!
     幼馴染みで、親友で、上官で、兄のような存在のランスロットは、つい最近、俺の、恋人になった。
     誰よりも大切な存在であるランちゃんが、俺の恋人になってくれるなんて!
     まだ夢を見てるみたい。
     ふたつ年上のランちゃんに恋心を抱いたのは、うんと子供の頃だ。想いが恋だと忘れるくらい長い間、片想いってやつをしていた。
     ランちゃんへの気持ちは、俺の中で当然のものだったから、恋をしているのも当然で、日常で、片恋も日常で、この想いが成就するなんて考えてもいなかったんだよな。
     それが突然進展して、だから今の状況をまだ信じられずに、夢なんじゃないかと思ってしまう。
     恋人って言える立場になって、まだ一週間だ! 実感がなくても仕方ないだろ〜?
    「ヴェイン?」
    「……ジャ、ジャンケンで、決めて……いいのか? こんな、大事なこと……」
     確認すると、ランちゃんは首を傾げ、俺を見つめたまま微笑みを深くする。
     ――ああ、そんな愛しそうな目を向けられたら、俺、気絶しそうなんだけど


     ――一週間前、騎士団でゴタゴタがあって、俺は解決の為に現場へ急行した。
     国のゴタゴタじゃない。あくまで私的なゴタゴタで――というか、恋愛ごとの諍いだったから、俺なんかが出る幕じゃなかったんだけど、どんな理由であれ、「団員が酒場で殴り合っている」と聞いたら止めに行かねえと!
    「はいはい、暴力は駄目だぞ~」
     白竜騎士団御用達の酒場に集まっていた野次馬の人垣を掻き分け、お互いのシャツを掴んで殴りあっている男たちの間に割り込んだ。
     おわっ、もうふたりとも顔が腫れてるじゃんか! でも騎士が本気で殴れば、意識不明になってるだろうから、一応お互いに手加減はしているらしい。
     取り合えず鎧姿じゃなくて、まだマシだったかも〜!
     国を守る白竜騎士団の団員たちが、酒場で揉め事を起こすなよな~!
    「ヴェインさん……!」
    「お前たち、規律を乱すのはご法度だって知ってるだろ~?」
     騎士団内での揉め事は、団長であるランちゃんがよしとしないことのひとつだ。
     めちゃくちゃ厳しく、謹慎をくらう。
     ふたりの拳を掴んで、シャツからお互いの手を外した。
    「いたた……っ」
    「ヴェインさん、折れる! 折れます!」
    「加減してるから折れねえよ。お互い殴られた顔の方が痛えだろ」
     とにかく、ここでは人目が多過ぎるから、俺はふたりを引き摺って城内まで戻ったんだけど、話を聞いたら、泥沼化していて心が重くなった。
     うう……。人の恋路に首を突っ込むのはニガテだぜ。
     何でも、想い人が二股をかけていたとか。その女性とふたりともが、それぞれ結婚の約束をしたと言う。もう指輪も贈って、プロポーズを受け入れてもらったと。
    「……それって」
    「詐欺」という言葉は飲み込んだ。
     ふたりとも、心から女性に惚れているのが分かったから。きっと今は何を言っても、冷静になれないよな。
     裏切られたという思いと、そんな筈はないという思いとで、ぐちゃぐちゃだろう。
    「俺の彼女にこいつがちょっかいを出してきたんですよ!」
    「何言ってる! 俺が先に付き合っていた!」
     また殴り合いを始めそうだったので、慌てて間に入る。
    「落ち着けって~! 落ち着いていられないのも分かるけど!」
     ――というひと言が余計だった。
    「ヴェインさんに何が分かるんですか!」
     必死に落ち着けようと思っていた俺に、とばっちりが来たぜ。
     まあ、彼女のひとりもいない、モテねえ俺が人の恋路に口を出したら、カチンと来るよな~!


    「うえ~、疲れたー」
    「おかえり、ヴェイン。団員が揉めてたって本当か?」
     玄関の扉を開けると、眉を寄せたランちゃんが出迎えてくれた。騒動が伝わっているらしい。
     眉を寄せていても、ランちゃんはカッコイイし、綺麗だなあ。一瞬、見惚れちまった。「憂いを帯びた麗しい瞳」とか、城の侍女たちに噂されそう!
    「ただいま、ランちゃん!」
     とても疲れていたけど、ランちゃんに出迎えられて、単純にも俺の疲れは吹っ飛び、滅茶苦茶元気に挨拶をしてしまった。
     やっぱり、ランちゃんの存在は俺にパワーをくれるよなあ〜!
     ランちゃんとは、二年前から城の近くに家を借りて一緒に住んでいる。騎士団長の住む家だから、それなりに立派な邸宅だ。
     一緒に暮らし始めてから、毎日パワーを貰ってるんだ。俺だけがパワーを貰って申し訳なく思うけど、ランちゃんは「お前と暮らし始めて、体調が良くなった」って言ってくれる。
     ランちゃんの栄養士になったつもりでメニューを考えていたから、役に立ててすっげえ嬉しかった。
     ホント、ランちゃんと一緒にくらせるようになって良かったよな~、俺!
     片想いをしている相手との同居に悩まなかったかと言えば、すっげえ悩んだぜ
     何かの拍子にランちゃんを押し倒すかもしれないって! でも、心配よりランちゃんの傍にいたい気持ちが上回ってしまった。
     お互い別々の任務に就いてる時は、城内で顔を合わせない日だってあった。ランちゃんを支えたくて騎士になったのに。
     だけど一緒に暮せば、格段にランちゃんの顔を見られる機会が増える。そう思ったら、どうしてもランちゃんと同居したくて、お願いしたんだ。
    「もちろん、いいぞ」って快諾してくれた時は、思いっ切り自分のほっぺを抓って、ランちゃんを慌てさせた。
     快諾してくれたランちゃんを裏切る真似はしない! って痛む頬を撫でながら誓ったんだよな。
     まあ、一緒に暮らしても当然寝室は別なんだし、これまでだって隣で雑魚寝をした夜もあるし、ランちゃんはよく泊まりに来ていたし、一定の距離を保っていれば大丈夫だろう――っていう妙な自信もあったけど。
     だってなあ。今まで長い間傍にいて、衝動に負けたことがねえし。
     そりゃあ、ランちゃんが艷やかな唇を薄く開いて眠っている姿に、ムラムラしちゃった夜もあるけど!
     でも俺はランちゃんを傷つけたくないから。
     その気持ちを俺自身が裏切ることはない。絶対。
     ランちゃんと一緒に暮らすのは、ランちゃんを公私ともに支える為!
     プライベートでも職場でも、ランちゃんの傍にいられるなんて、これ以上の幸せはないぜ。
     自分からその幸せを壊すことはない!
     固い意志で同居生活は順調だった。
    「聞いてくれよ、ランちゃん~! 団員たちが詐欺にあってるかもしれなくて~!」
     俺は団員たちが殴り合いをしていたのは伏せて、ことの顛末を説明した。
    「そういえば最近、城下で結婚詐欺があったと聞いたな」
    「えっ、同じヤツ」
    「いや、その詐欺師は男だったはずだ。現在逃走中で、近隣国にも触れが出てる」
    「そっか……。人の気持ちを騙すなんて許せねえよな」
     純粋に相手を想う心を騙そうなんて。
     もし万が一、ランちゃんに「好きだ」って言われて、想いが通じたと思った後にそれが嘘だって分かったら、悲しくてワンワン声を出して何日も泣くだろう。
     ランちゃんが俺を好きになるなんて想像もつかないし、裏切られるのも想像出来ないけどな~!
    「なんにしても、とばっちりは災難だったな」
     ランちゃんがキッチンへ向かい、シチューを温めながら言う。
     シチューは前日の残りだ。俺と暮らし始めて、シチューはミルクを足してから温め直すと覚えたランちゃんだ。
     俺の帰宅が遅い日は、こうやって夕食の準備をしてくれる。
     俺は保冷庫から下準備をしておいた材料を手にランちゃんの隣へ並んだ。メインの肉料理を炒める。今夜は簡単メニューだ。
    「しかし、その女性は本当に詐欺師なのか?」
    「……えっと? ランちゃんは詐欺じゃないと思うのか?」
     ついランちゃんの優しい手の動きに見惚れて、反応が遅れちまった。
    「だってなあ、話を聞く限り、ふたりとも金品は要求されていないだろ?」
    「……そっか」
     そういえばそうだ。詐欺師って、どこかで必ず金品を要求してくるものだよな 家族が病気で治療費が掛かるとか、お金に困ってるとか言って。
    「え どーゆーこと どっちとも結婚するつもりなのか」
    「確かに二股はしてると思う。けど、決められないまま現在に至るんじゃないか?」
    「ええー……」
     そんなことがあるか?
     同時にふたりを好きになるなんて?
    「重婚が出来る島もあるというから、もしかしたら女性はその島の出身かもしれない。なんにしても、本人を交えて話すべきだろうな」
     温めたシチューを器によそって、バケットやサラダを用意してくれた。俺は炒めた肉と野菜を大皿へ移して運ぶ。
    「へー……、好きな人がふたりなんて、俺は考えられないなあ……」
     団員たちが聞いたらどう思うだろう。
     想い人が、同時に複数人を愛せるなんて。
     俺はずっとランちゃん一筋で、他に想いを向けたことはねえから、何人にも恋をするっていう感覚は理解が及ばないぜ。
    「ふーん。ヴェインは一筋派か」
    「うん、俺はランちゃん一筋派。ランちゃんは……」
    「ふふっ、俺もヴェイン一筋だな。良かったな。俺たちは重婚にならないぞ」
    「――へ?」
     あれ? なんか今、滅茶苦茶重要なこと聞いたような――っていうか、その前に俺がなんか言った
     ぼんやり考えていたから、うっかり全部口に出てなかったか
     俺の手から大皿が滑り落ち、あわや肉料理が全滅かと思ったけど、運よくテーブルの上だった。ランちゃんがほっとしたのを感じる。
     だけど、それどころじゃない!
    「ラ、ラ、ラ、ランちゃん……!」
    「ん?」
    「あの! あの」
     裏返る俺の声を聞きながら、ランちゃんが微笑んだ。
     それは今まで見てきた笑顔とは全然違う。
     幼馴染みの笑顔でも、親友の笑顔でも、騎士団長の笑顔でもない。
     とろけそうな、甘い、甘い笑顔だった。
    「うん、しっかり聞いたぞ。まあ、お前が俺一筋なのは、ずっと知ってたけど」
     知ってたって? 何を
     俺がランちゃんを好きなこと
     いや、そりゃバレるか 分かり易いって言われるしー!
     ランちゃんは微笑んだまま俺に近づいてくると、細い指で俺の頬を撫でた。
     心なしか、指先が震えているみたいだ。
    「お前が隠すつもりでいるから、俺も言わないでいたけど、――ヴェイン」
    「ランちゃん」
     見つめ返すと、ランちゃんの瞳が細められる。目尻が緩んで、碧い瞳は愛しさを湛えていた。
     それって、俺に向けられてる?
     ランちゃんが、俺を?
     そんな世界中で何より愛しいものを見る目で、俺を見てくれるのか?
    「もうずっと、お前を想ってるよ、ヴェイン。恋以上に」
     ランちゃんがはっきりと告げてくれて、俺たちはその瞬間に、恋人という関係を手に入れた。


     そして一週間が経って、今、ランちゃんは俺の前で拳をゆらゆらと揺らしている。
     ジャンケンをする気満々だ。
    「勝った方の希望を優先する……で、いいよな?」
    「いや、待って」
     止めるようにランちゃんの眼前に手のひらを掲げた。
     明日は休日で、ふたりとも入浴を済ませて、後は眠るだけだった。リビングでハーブティーを飲みながら団らんした後、自室のベッドへ向かう俺の後をランちゃんがついてきた。
     ドキドキしたけど――だって、ドキドキするだろ 恋人になって初めての、「明日が休日」っていう夜更かし出来る夜だぞ!
     でも、ランちゃんがそんな考えを持つわけないよな~! 俺たち、子供の頃から何度も一緒に眠っていたし、まだ話し足りなくて、今夜は一緒に眠りたいのかなあと思い直したんだ。
     でも違った。俺のドキドキは正しかった。
     ランちゃんは恋人として進展するつもりだった!
     それこそ夢かと思ったぜ。俺、もう眠っちまったのか~って。
     ランちゃん、いきなり男らしく「それで、お前は上と下、どっちがいいんだ」って聞いてくるんだもん!
     長い期間の片恋を経て、お互いに想い合っていたと分かったのが一週間前。ゆっくり関係を深めようって考えていた。いや、正直に言うと考えるようにしていた。
     だって、想いが成就してすぐに、その、えっちなことがしたいとか! あんまりにも獣じみてるだろー!
     ランちゃんを怖がらせるかもしれないしさあ。それに、俺、慣れてねえから……というか、ハジメテだし、絶対がっつくし!
     ランちゃんも俺を好きだって知った瞬間、押し倒したい衝動が襲ってきたからな。あの時、ランちゃんの腹が空腹を訴えていなかったら、その場で俺がランちゃんを頂いていたと思う。
     危なかった。
     反省して、ゆっくり、大切に関係を深めていこうって思っていたけど、ランちゃんは潔かった。
    「お前は、触れたいって思わないのか?」
     そう聞かれて、力一杯「抱きしめたいですっ!」と叫んじまったぜ。
    「ふふっ、いいぞ」って両手を広げてくれたから、思いっ切り抱きしめた。
     腕の中で好きな人の体温や匂い、背骨の形まで濃密に感じ、身体が正直に反応したのを見たランちゃんが「ジャンケンするか」と提案してくれたんだ。
     即ち、挿れるか受け入れるかをジャンケンで決めようと。
     同じ男だからな。受け入れるより、挿れたいよなー!
     俺はランちゃんを組み敷く妄想しかしたことがなくて――これって、ランちゃんを大切にしたいと言いながら、自分の欲望しか見えてないよな。本当に反省した。
     ランちゃんも俺を組み敷きたいって思っているかもしれないのに。いや、思うよな。
     お互いの意見を大事にすべきだ。
     それなのにランちゃんは「ジャンケンで決めよう」なんて言う。「手っ取り早い」とか言って。
     そんな風に決めるもんじゃないだろ~!
    「ランちゃん、やっぱりジャンケンで決めるのはナシ!」
    「じゃあ、お前はどっちがいいんだ?」
    「ランちゃんはどっちがいいんだよ?」
    「俺はヴェインの好きな方でいいよ」
    「それなら俺だってランちゃんの希望優先!」
     今現在、ベッドの上で大の男が向かい合って、そんな話をしている。
     ランちゃんの希望を優先したいっていうのは、もちろん本心だ。
     お互い相手を優先したいと思って見つめ合うこと二十秒。
     ランちゃんは眉を下げ、少し困った顔で微笑んだ。
    「……ほらな。決まらないだろ。だから」
    「だからって、ジャンケンで決めていいもんでもねーと思うぜ!」
     ランちゃんは子供の頃から、俺を優先してくれる。例えば、チョコレートといちご味のどちらかを選ぶ時、先に選ばせてくれた。
    「俺はどっちでもいいから、ヴェインが好きな方を選べ」って。その時は、お互い半分こして食べたけど――そっか。別に上下も順番ことかにすれば……。
     いや、でも俺が先に挿れる側だったら、次もって思っちまうだろうな~。うん、際限なく求めちゃいそうだ。ランちゃんを優先出来なくなる。それは嫌だぜ!
     こういうのって、よく話し合うべき……それとも勢いが大事だったりする? だから、ランちゃんは性急に決めようとしてるのか?
     俺が腕を組んで唸りながら、ちらりと見ると、ランちゃんはスッと視線を下げた。
     あれ……。
     俺から視線を逸らせた。
     あれ、ランちゃん、なんか傷ついてないか。この顔、何かに傷ついて、でも理由を絶対言わない顔だ。
     ちょっと待ってくれ!
    「ランちゃん! そうじゃなくて! 違うから!」
    「……ヴェイン」
     慌てて叫び、ランちゃんの手を握り締める。
     俺がはっきり告げないと、ランちゃんを傷つけるんだ。迷ったら駄目だった!
     話し合いとか勢いとかじゃねえ!
     俺の本心が聞きたいんだろ!
    「俺はランちゃんに挿れたいっ! 滅茶苦茶奥までっ! いっぱいランちゃんに触りてえ!」
     そう正直に叫んだ瞬間、手を握られたままのランちゃんが、俺を見つめて安堵したのが分かる。
    「触れたいと思う程には、想われてないのか」
     視線を下げたランちゃんが考えたのはきっとこれだろう。
     そんなわけないだろ~! 抱きしめたいって言ったのに!
    「もう……。俺の好きな方でいいなら、ランちゃんを押し倒すからな!」
    「いいよ」
     明るくて、優しい、どこかフワフワと夢心地な返事に、すぐさま身体をシーツへ沈めた。
     勢いに弾んで、ランちゃんが声を上げて笑う。子供の頃、ベッドの上でジャンプして遊んでいた時みたいだ。
     俺を見上げて笑っているランちゃんは、幸せそうに頬を染めている。
     初めて見る顔だ。
     どうしよう。可愛い。
     だって、期待に瞳が煌めいてる。
     ランちゃん、俺に「どっちがいい?」って聞きながら、本当は受け入れる方が良かったのかな。
     俺にいっぱい愛されたいって思ってる?
     シーツの上に散った黒髪をゆっくり撫でて、碧い瞳をのぞき込む。
     逸らされない瞳に、隠せない獰猛さを滲ませた男が映っていた。それから、隠せない欲もその奥に灯っている。
    「……朝まで眠らせなくても?」
    「望むところだ」
     肘をついてランちゃんを囲う。もう逃がせないんだけど。
     自分より、俺を優先することばかり考えてるランちゃん。偶にはランちゃん自身を優先して欲しいのに、やっぱり俺を優先するんだ。
     なんだか悔しくて、愛しくて、目の前の鼻先に噛り付いてやった。
    「――こらっ、噛むならそこじゃないだろ!」
    「首筋とか?」
     もうさっきから、俺の声にも獰猛さが滲んでいる。
     ランちゃんを怯えさせるかと思ったけど、そんなことはなかった。さすが、騎士団長様!
     ランちゃんは、悠然と微笑みながら細い腕を首に回し、俺を引き寄せる。
    「ふふっ、お前は噛みつくのとキスするのと、どっちを先にしたいんだ?」
     も~! また俺を優先する!
     ランちゃんの質問に応える為――それから、ランちゃんの想いに応える為、思いっ切りその可愛い唇を塞いだ。
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