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    Jeff

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    お題:「ひとりじめ」
    たまにはスポイルされた子どものように
    #LH1dr1wr
    ワンドロワンライ参加作品
    2024/09/15

    #ラーヒュン
    rahun
    #LH1dr1wr

    Rosegarden 勘違いしていた。自分に、執着心などないと。
     と、ヒュンケルは思う。
     
    「この前話しただろ、やっと咲いたんだ。自信作だから――」
     興奮気味に言うと、ラーハルトはあくび混じりに、
    「また今度な」
     今日も忙しい、と言い捨てて、いつものように出勤していった。
     
     ラーハルトの主君であるバランの息子、希望の勇者ダイが帰ってきてから。
     彼はずっとこんな調子だ。
     ――仕方ないだろう、生きていくための仕事は要る。
     などど言い訳しているが、勿論「ダイ様」のためだ。
     分かっている。ラーハルトの邪魔はしたくない。
     けれど。
    「今は俺の方が稼いでるぞ、結構」
     ぶつくさ呟きながら、秘密の薔薇園へと向かう。

     たわむれに魔界から持ち帰ったその枝は、伝説的希少種だった。
     しらみつぶしに文献を漁り、ようやく開花に漕ぎつけた。
     一本の薔薇から交配を繰り返し、色とりどりの楽園と化したヒュンケルの庭には、マニア垂涎の花々が咲き誇る。
     今や、全世界の富豪と王族が待機リストに名を連ねる花農家だ。
     
     『作品』をひとつひとつ吟味したのち、ヒュンケルはくだんの新作に顔を寄せる。
     まるで太陽のよう。ラーハルトの瞳のよう。
     照りのある黄金色は、世界中の園芸ファンの憧れだ。
     ようやく完成したと言うのに。
     ラーハルトは彼の趣味を邪魔しないが、大した興味も示さない。
     唇を尖らせながら、ヒュンケルは内省する。
     よくよく考えれば、自分はいつも独り占めしてきた。
     父も、アバンも。
     ……ミストも。
     全ての視線は、異端の子ヒュンケルだけに向けられていた。
     自分に注がれる関心と愛情と憎悪とを、欲しいままにしてきたのだ。
     ラーハルトは似ているようで、決定的に違う。
     彼は甘やかされてこなかった。ヒュンケルのみじめな渇望など、きっと一生理解してくれないだろう。
     だから。
    「俺だけを見ろ」
     笑ってしまうような愚かな願いを、黄金の薔薇に吐露する。
    「見て、くれないか。頼むから」
     小さな、情けない問い。
     薔薇は笑ってくれなかった。
     かわりに、硬直した視線を寄越した。
     氷のように冷たい。
     ああ。
    「そうだな」
     と、ヒュンケルは苦笑する。
     ――昔は、俺だけを見てくれたのに。
     かつてはたった一本だった花が、創造主を見上げて文句を言う。
     ――こんなに増やして。
     ――お前の愛は、どこに行った。
     ――俺には、お前しかいなかったのに。
    「悪かったよ」
     ヒュンケルは微笑して、ビロードみたいな花弁を撫ぜる。
     素手のまま、ぶちりと手折った。
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