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    029to5han

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    029to5han

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    道満&小太郎&男マスター(と、マーリン)のエネミーバトル話。

    羅刹の君 風魔小太郎の投げた苦無クナイはエネミーの身に突き刺さる──はずだった。
     しかしその切っ先は別のものを貫き、目的地へ届くことはなかった。邪魔をしたのは宙を舞う一枚の紙きれ。
     刺されたのは蘆屋道満の呪符だった。どうやら斜線上でバッティングしてしまったらしい。苦無を受けたままの呪符は制御の力を失ったのか、きりもみしながら落ちてゆく。
    「なっ──っ!」
     言いかけた小太郎の小柄な体躯は次の瞬間、エネミーの腕を受けて後方に吹き飛んだ。とっさに受け身を取ったが喰らってしまった不甲斐なさにきつく奥歯を噛む。
    「っ、不覚──っ!」
    「マーリン!」
    「おまかせを──」
     マスターの指示を受け、柔らかな声と共に光のヴェールが降り注ぐ。かけられたのは余程の技の持ち主でない限りこれをかいくぐる事は不可能な、攻撃を無力化する魔術。
     即座に飛び起き元の位置まで戻った小太郎の背後から大きな影が飛び出して行った。髪をたなびかせ楽しそうに嗤いながらエネミーの腹を裂き、長い脚から繰り出すハイキックを決めたのは先ほど小太郎の邪魔をした蘆屋道満だった。
     彼が獣のようなしなやかさで身を翻し先程立っていた場所へ舞い戻ると同時に、エネミーの全身が大きく震えた。次の瞬間、猛烈な熱と光が轟音と共に辺り一面を吹き飛ばす。通常ならば三人とも陥落し戦線は崩壊するはずだったが、マーリンの術のおかげで痛くもかゆくもない。
    「小太郎、未だ!」
     今度は小太郎に指示が飛ぶ。小太郎本人は気が付いていなかったが、先ほどの攻撃で十分に宝具を打てるようになっていた。マスターは冷静にサーヴァントの状況を見抜き、それを使えと叫んでいる。
    「地獄の炎を起こす。──全員、鬼と成れ!」
     己を鼓舞するように叫び、ゆらりと足を踏み出す。地面が揺れ、血が燃えた。四肢に力がみなぎり視線がやたらとクリアになる。意識が研ぎ澄まされどこを攻略すればいいのか、筋道が見えた。
    「すなわちここは阿鼻叫喚。大炎熱地獄──......」
     小太郎の宝具をまともに喰らったエネミーがのたうち回るが、まだだ。あと一手足りない。小太郎はそのまま走り込むと弱点となる部分に強烈な攻撃を叩き込み、ついには消滅へと導いた。 
    「終了終了っと」
     気の抜けるようなマーリンの声に脅威が去った事を知ったマスターが駆け寄ってくる。小太郎の肩を掴み真っ青な顔でケガの状況を確認してきた。
    「ごめん、小太郎。オレの判断がまずくて…」
    「いえ、的確なご判断でした」
    「小太郎は優しいな……オレは見誤ったのに」
    「見誤った?」
    「小太郎が吹き飛ばされたあの前にマーリンに無敵を貼ってもらえばよかったんだ。道満が小太郎の邪魔をしてくれたおかげで助かった」
     助かったとはどういう意味か分からずにきょとんとしていると、気恥ずかしそうにマスターが言葉を続けた。
    「あの状況であと一手、小太郎の苦無が刺さったら間髪入れずにエネミーの宝具が飛んでくる所だったよ。オレがダメージを計算できてなかったんだ。後で道満にはお礼を言わないとな」
    「では......」
     長い前髪のせいで余人には見られる事のない小太郎の目が丸くなる。じゃああの妨害は、結果として全員を救ったことになるのか。まさか、あの男はそれを見越して小太郎の刃を届かせないようにしたというのか。
     そして気が付いた。宝具の前の高揚は、彼の術によって自身が強化されたものだと。
     あまり歓迎したくはないが、道満の強化術は小太郎との相性がすこぶる良い。だからあのエネミーを削りきれたのか。
     小太郎は弾かれたように蘆屋道満を振り向いた。視線の先の彼は何事もなかったように宙に舞わせていた呪符を迎え入れる為に胸の辺で手を大きく広げ、顔を空へと上げていた。
    「次は気を付ける。──道満も大丈夫だった?」
    「ええ、拙僧は問題ございません」
     こちらを見つめ微笑む道満。
     その笑みはいつもの不穏そのもので、小太郎は反射的にマスターの腕を掴んで歩き出した。ついでに腰を叩いていたマーリンの腕も引っ張り、もりもりと歩いてゆく。
    「先を急ぎましょう、マスター」
     なんとも言えない気持ちを誤魔化すように、小太郎は離れて行く。
     その後ろ姿を見送って、道満は手元に帰還した最後の呪符を指に挟んで捕まえると、口元に宛て嗤った。そこに浮かぶはおぞましいほど残忍な美しさ、口元からは鋭い犬歯が隠しきれずに覗いていた。
    「ンンンン……おやおや、これは随分と嫌われたものですねェ。拙僧としてはぜひとも仲良くしたいのに。ええ、素直で穏やかな心を持ちつつも、なぜか混沌悪である貴方と、ね......。
     一体全体、あの御仁はいつになったらその本性を現してくださるのやら。
     鬼になるという第二宝具『果てぬ羅刹に転ず』。あらゆる鬼畜と悪徳が可能となるというその姿を、拙僧は期待しておりますぞ」
     一人呟くと道満は歩き出す。長い脚だ、離れていても焦るまでもなくすぐに追いつく。
     ええ、ええ、すぐにでもその背は射程距離に入りましょうぞ──。

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    kanamisaniwa

    MAIKING晴道+息子(吉平)+息子(吉昌)『アー、てすてす!こちら安倍晴明の座経由で通信中!安倍吉平の弟吉昌ですがー!兄さーんまたへんな男ひっかけてないよなー?』
    「……突然の情報過多に色々と追い付けない僕マスター。誰かヘルプ…!!」

    ふいにノウム・カルデアの食堂に現れた五星が描かれた掌大の人形の紙がそんな声を発して、立夏は盛大に頭を抱えた。
    いきなり未召喚ならぬ未実装の英霊から通信が飛んできたことも異常だし、それが安倍晴明の息子で吉平の弟というのも驚くしかない。そして、その紙が飛んできた食堂の状況もまた悪かったのがいただけない。

    「んお?なんだなんだまた日本の魔術師かぁ?」
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    「ついさっきま 1690

    nicola731

    TRAINING晴道の練習。明るくポップな話とか、優しくて可愛い話とか思い付けたら、良いなって思ったんですよホント・・・。

    こあら「球体関節人形!ちょっと難しいけどまともな晴明さんを練習したいから考えてみるぞ!」
    企画こあら「はいネタ」
    脚本こあら「はい書いた」
    こあら「なんでだよ!なんでこんな感じなんだよ!」
    晴明はついうっかり道満を殺してしまったので作り直すことにした。術比べで事故死してしまった道満の残骸を集め、自宅に持ち帰った晴明は自分で組んだ人形にそれを納めた。名を三度呼び、魂を吹き込めば血が通う。
     出来上がったのは完璧な人形だった。可愛い弟子の生き写し。寸分違わぬ麗しい拵え。晴明は暫く自画自賛していた。だが現在進行形の問題は、それでは解決しない。
    「うーん、余った」
     何故か部品が余った。腑が幾らか、肉が幾らか、皮が幾らか、髪が幾らか余った。はみ出た分を切り取ったら余った。骨は全て外して綺麗に取ってある。腹が減ったら舐める用に。
     仕方が無いので人形を作成する際に出た端材を使い、七歳程度の大きさでまた別に人形を拵えた。足りていない部品は輝石を削り出して充てがった。
     出来上がったのは輝くばかりの美童だった。
    「うーん、端材だけで傑作が出来てしまった。さすが私」
     子供の顔は現在固定している自分の顔に寄せてみた。絹のような肌に映える濡羽色の髪。所々に月白の色が混じっていて雲母のようだった。魂を調達するのは面倒なので自分の尾を一本を裂いて入れてみた。己の中では比較的素直で大人しい側面な 1652

    nicola731

    DOODLEhttps://twitter.com/nicola731/status/1374684085319168000?s=21
    晴道ハッピーゆるゆる結婚生活だよ。ホントだよ。
    ふと、書き付けを捲る道満の指が止まる。自分が書き留めたはずの術式がまるで目新しく見えた。自分の屋敷から運ばせた書物の内に紛れていた一片の書き付けを、道満は思い出すことができない。なぜ自分が書き留め、なぜこのように術を構築したのか。道満は考え込んでしまう。
     晴明の屋敷の奥、その御帳に囲われている道満は外へ出ることもできないため、自邸から自身の蔵書を運ばせた。一度死んでしまい、晴明の手によって人形の体に魂を移し替えられてしまった道満にはできることが少なかった。与えられる衣服が小袖のみなので人前に出ることもできない。仕方なく畳の上に座って自分を囲む書を読むか、不本意ながら夜伽の真似をするか、まことに不本意ながら子の世話をするぐらいしかない。
    「ンン、ンンンンン? なぜこのように……いや、効果的ではあるが、こちらではむしろ、ンンン、検証済であるか…………」
     紙片を前に悩む道満の背に勢いの付いた何かがぶつかる。道満が振り返ると七歳ぐらいに見える、夜の海に幾つもの白波が立っているような、白髪の混じる黒髪の子供がいた。
    「おや吾子、腹でも空いたか?」
    「かかちゃまー縺ェ縺ォ繧偵@縺ヲ繧九」
    1822

    nicola731

    DOODLE「罪深き墓前まで」
    思いつきの時代物パロ晴道。多分この後二人で共謀して旦那を始末します。
     晴明の兄が妻を娶ったのは彼が十五の時だった。付き合いのある旧家の長子で、美しいことで評判だった。まだ十八になったばかりだった。晴明の幼馴染だった。
     晴明は義姉になる前まで兄の結婚相手を「道満」と呼んでいた。義姉になるまで兄の結婚相手を抱いていた。去年の盆に宴会があり、その裏で二人は体を繋げた。お互い初めての相手だった。晴明にとっては初恋だった。
     道満は自分の妻になるものだと信じ切っていた彼は、夏の盛りを過ぎた頃に兄から婚姻のことを聞かされて、がらがらと全てが崩れていくような心地になった。美しい上に賢い道満は詩経さえ誦じてみせる。対して夫となる晴明の兄は凡庸で家柄ばかりが取り柄の役人だった。幼少のみぎりから才覚を発揮していた晴明とは大違いだった。
     晴明は兄が何処か勝ち誇ったような顔をして自分を見ていることに気付いた。兄が自分を打ち負かしたいがためだけに、道満を妻に迎えたのだとすぐに理解した。殺してやろうかと思った。
     道満は家庭に入ると頗る良妻で、よく躾けられた奥様になった。夫の父母に気に入られ、夫の床屋政談にも美しい笑みを浮かべたまま付き合った。晴明が「義姉さん」と呼んでも笑み 1027

    キビ○

    MAIKING晴明さん実装してくれないので、我慢ならず溜まったネタをこちらに吐き出したく思います!ふるみ先生がセンペルビウムを育ててるツイしてましたので、それで思いついてしまった現パロオフィスラブ晴道+リンボ。多肉植物の妖精?悪魔?のリンボとそれを飼う晴明さんと職場の同僚の道満のドタバタオフィスラブ。頑張って続き書けるといいなぁ。
    多肉植物を飼う晴明さんのお話いつもの帰り道。毎日通る高架下に怪しげな露店が出ていた。繁忙期であったので定時を大幅に過ぎての帰宅だった為、駅の線路下のこの場所はオレンジの蛍光灯がじりじりと音を立てているだけで人気はない。そんな不気味な所に如何にも怪しい露店がひとつ。いつもなら気にも止めないだろうが今日は何故か立ち止まってしまった。簡素な机の上にケミカルな色合いをした謎のキラキラした液体が満たされたガラスのティーポットやら、虹色に輝く刺々しい石など、よく分からない物が色々と並んでいる。その中でやけに目を引いたのが小さな植物だった。
    「やあ、このセンペルビウムが気になるかい?」
    白いローブを羽織った露天商が声をかけてきた。ローブの影から除く瞳がきらりと輝いており、その声は人当たりの好さそうな感じがするがどうも胡散臭い。
    2025