モクチェズ推しの僕が転生したらルーク・ウィリアムズだった件 『前世の記憶』としか言いようのない大量の情報が脳裏にブワッと溢れ出したのは、よりにもよって飛行船の、テロリストたちに一人じゃんけんを披露している真っ最中だった。緊張の糸が張り詰めた状況で、ふと集中力が途切れた一瞬。いったい僕は何をやってるんだろう……と遠くに思いを馳せてしまったそのとき、急激に『思い出してしまった』のだ。
これが失っていた七歳以前の記憶であったなら、唐突ではあるがいつかは戻る可能性のあったものだしなんらおかしなことはなかった。ところが脳裏に甦ったのは、幼い頃の記憶でもエリントンでの思い出でもない、不可思議な記憶。
【ここではない全く別の世界で生きていた人間】の記憶である。
自分が置かれている状況を理解して、サアッと血の気が引く思いがした。まずい、まずいぞ、よりによってこんなときに思い出さなくたっていいじゃないか!
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