【独二】約束のない待ち合わせ「俺、ちゃんと普通に出来てたかな」
肌寒い秋風が彼の少し震えた言葉を運んできてくれたのは、もう三年も前になる。
傍に居るのが当たり前で、どんなに忙しくても、どんなに疲れていても、彼の笑顔ひとつでどこまでも頑張れるような気がしていたあの頃。
年齢だって一回りも違う。趣味も、交友関係も、好きな音楽も好きなテレビ番組も、何もかもが違っていた俺たちだけど、その間には確かに存在していた。恥ずかしいけれど、それは愛とか、そういう類いのものだ。
俺は彼が好きだった。三年前のあの日も、きっと心の奥底では「離れたくない」と声にならない声で叫んでいたはずだ。
しかし、俺たちが別れたのはお互いに話し合って納得して決めた別れだった。喧嘩したとか、どちらかに好きな人が出来てしまっただとか、そういう感じではなく、これ以上一緒に居ても何にもならない、と分かってしまったからだった。
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