【独二】ぜんぶ夏のせいにして 蝉の鳴き声がいつからか生活音の一部になり、気にもならなくなったころ。拭っても拭っても湧き水のように溢れ出る汗をハンカチに吸い込ませてゆく。
営業成績が特別良いわけでもなく、かと言って全然ダメというわけでもないと自負している平凡な営業社員に営業車など与えてもらえるはずもなく、こうして汗を流しながら外回りをしている。
「……少し休んでも良いんだぞ」
嫌になるほど照りつけてくる太陽に向かって何となく呟いてみるけれど、こんなちっぽけな声が届くはずもなく、肌をじりじりと焦がす。
次のアポまで少し時間があったので耐えきれずコンビニに駆け込むとアイスコーナーの前で見覚えのある後ろ姿を見つけた。
暑くて一刻も早く冷たいものを摂取したかった俺は、知り合いに構っている余裕などなかったので、気付かないふりをしてアイスコーナーの一番端にあった良心的な価格のソーダのアイスを手に取った。
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