我が家のお稲荷さん「けーけー、ぼくのつがいになってよ!」
「暁人…」
この歳でまさか告られるとは思わなかった。見上げた狐の耳を生やした子供が真剣な顔でKKに告白している。気まずそうな顔をしたKKはどうしてこうなったのか、頭を抱えた。
『我が家のお稲荷さん』
木々が騒めく、空から雫が落ちてくる。天気予報で言われていた通り降り出した雨に持っていた傘を差す。草木に覆われた山の麓にある神社へと用事を済ませたKKは、長い階段を下っていく。
「ちっ、結構降ってきたな…」
キュゥーン、何処からか、か細い動物の鳴き声が聞こえてくる。今にも消えてしまいそうな、弱弱しい泣き声に動物が苦手なKKでも無視できるわけがなく。泣き声の方角へと歩き始めた。整備された道から外れ、草木生い茂る道を革靴で歩く。泥濘んだ土の上が歩きにくい。大きくなる鳴き声に近づいてきたことがわかる。
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