誰も知らない。「伊月さぁ、誰かと付き合ったりしねえの?」
大学のカフェテラス。昼食を共にしていた友人からの取り止めのない一言に暁人は思わず顔を上げた。
「…なんで?」
質問に質問で返すのはアレだな、と思いつつもそう返すしかなく。パスタをフォークで巻き取る手を止めてしまった以上、その話をそこで遮ることは出来なくなってしまった。
「聞かれんだよ女子達に。『伊月くん彼女いないの?』とか『合コン呼んでよ』とかしょっちゅう。…いや、まぁ伊月もそんな事まだ考えられないだろうなって思ったから適当に流しといたけど…お前のこと良く思ってるヤツ結構居るんだぜ?今じゃなくても少し先に、って話」
「あぁ…そういうこと」
この友人は唐突なところもあるけれどとても良い人物だと暁人は分かっている。そうやって周囲からの防波堤にもなってくれていたり、自身を気にかけてくれていることにも感謝すら覚えてしまう。
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