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    ちょりりん万箱

    陳情令、魔道祖師にはまりまくって、二次創作してます。文字書きです。最近、オリジナルにも興味を持ち始めました🎵
    何でも書いて何でも読む雑食💨
    文明の利器を使いこなせず、誤字脱字が得意な行き当たりばったりですが、お付き合いよろしくお願いします😆

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    ちょりりん万箱

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    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation

    誕辰藍氏双璧は、黙った。
    「……何、その無言の反応」
    腰に手を当てて、仁王立ちする魏無羨が目を細める。
    「疑ってるのか?」
    魏無羨の低い声に藍忘機はゆっくりと首を振る。
    「疑ってはいない。信じられないだけ」
    「それを疑っているというんだ、藍湛」
    びしっ、と人差し指で藍忘機を指した魏無羨はふん、と鼻息荒く告げる。
    「この思念紙人形、名付けて『気持ちわかる君』は凄いんだぞ!!」
    その名前からいって怪しいのだ、と藍忘機の目が訴えている。藍曦臣に至っては無言のまま、笑顔だ。
    「久々の俺の発明品!これをぺたりと貼れば、その物に残っている思念を20秒だけ、語ってくれる紙人形だ!」
    じゃーんと見せられた紙人形には赤い色で書かれた呪文と顔の真ん中に口が描いてある。
    「魏嬰……まさか、この口から喋るとか……?」
    「藍湛、紙は喋らない。思念を送ってくるんだ。ただし、口を書いた者とすぐ近くにいるある程度の霊力ある者しか思念を捉えることはできないけど」
    キョロキョロと周りを見回し、座卓の上に置かれていた箱を見つけた魏無羨がぺたりと紙人形を貼った。
    「魏嬰、何を……」
    「しっ!」
    小さなボソボソとした話し声が、段々と人の声を形づくる。
    『今年の贈り物は気に入っていただけるだろうか』
    男にしてはやや高い声が頭の中に響き、藍忘機も藍曦臣も瞠目した。
    『曦臣兄のお心を少しでも慰めてくれたらいいな』
    「この声、聶懐桑か……」
    「懐桑だね……」
    『まだ謹慎中だと聞いているし、お元気なのだろうか……』
    心配そうな声は段々と小さくなり消えていった。その箱は今朝、清河から藍曦臣へ届けられた物である。
    箱に貼り付いていた紙人形は役目を終えるとぱらりと箱から剥がれ落ちた。
    魏無羨は自信満々でにやりと笑う。
    「どーだ!聞こえただろう?あ、ヤバイ!」
    急に焦りだした魏無羨に藍忘機と藍曦臣は何事かと身構える。
    剥がれ落ちたはずの紙人形が勢いよくピョーンと跳び跳ね、座卓からジャンプした。
    「藍湛、捕まえて!」
    「ん!」
    魏無羨が叫ぶと同時に、藍忘機が紙人形を両手でバシッと捕まえた。
    藍忘機の手の中で紙人形はジタバタと手足をばたつかせ暴れている。
    「またか~」
    「魏嬰、これは…?」
    うーむと考え込む様子の魏無羨に藍忘機はため息をついた。
    「術が済んだら何故かわかる君が跳び跳ねるんだよな~、おっかしいな~」
    「どうしたらこれを止められるのだ?」
    「首と胴体を切り離したら止まる」
    「………………」
    あまりに酷い対処法に藍忘機は眉を寄せ、黙って見ていた藍曦臣は複雑な表情を浮かべた。
    「口に✕をしてみてはどうだろうか?」
    藍曦臣が筆架から筆を取り上げた。藍忘機を手招きし、その手から紙人形を受けとると素早く口に✕印をつけた。
    バタバタと動いていた紙人形はぴたりと動きを止め静かになる。
    「おおお!さすが沢蕪君!」
    魏無羨が藍曦臣の手元を覗き込んで声を上げた。静かになった紙人形を藍曦臣から受け取るとえへへと作り笑いを浮かべる。
    「えーっと、これを沢蕪君にお誕生日の品として渡そうかなと思ったけど……さすがにいらないよね?」
    「貴方はこれをあといくつ作ったのかな?魏公子」
    にっこりと微笑んでいる藍曦臣だが、嘘は許しませんよと言われているようで、魏無羨は素直にあと2枚あると答えた。
    「誕生日の品として残りの2枚をいただくよ。ただし、これは貴方も認める改良の余地がある代物だ。しかも悪用されれば混乱は間違いない。これ以後の作成は控えてほしい」
    「……はーい……」
    懐からまだ口を書いてない思念紙人形・気持ちわかる君2枚を藍曦臣に渡した魏無羨はにっこり笑う。
    「お誕生日、おめでとう、沢蕪君」
    「兄上、おめでとうございます」
    「ありがとう、魏公子、忘機」




    藍氏宗主の誕生日となると各地各仙家からお祝いの品が大量に届く。
    祝いの品は殆どが付き合いの上でとしての意味しかないが、それでも祝ってくれる気持ちはありがたい。
    藍曦臣は贈られてきた品々を眺めながら、お礼状を書かねばとぼんやりと思っていた。
    「沢蕪君、雲夢の収穫祭に行きましょうよ?」
    この頃、会えば必ず魏無羨が雲夢で行われる収穫祭への誘いをしてくる。
    藍曦臣は苦笑した。
    「魏公子、何度も言うが私は未だ謹慎中だよ」
    「わかってます。でも、宗主として復帰された後は遊びにはいけないでしょ?」
    足を投げ出して座り、お菓子を口に入れながら魏無羨は茶を飲んでいる。
    隣で藍忘機は行儀よく座り、同じく茶を飲んでいた。
    「それはそうだが……」
    「こっそり行きましょう?ね?ね?」
    こっそり、というのも怪しいところだ。
    絶対にこっそりにはならないだろうと、藍曦臣は思う。
    それに、雲夢江氏の宗主は恐らく収穫祭にこちらが行くことを予想している。
    雲夢に入れば速攻で捕まるだろう。
    「2日間しか開催されないし、最後には奉納楽もあるんですよ」
    「ああ、聞いたことがあるよ。湖の畔に舞台を作り齢13の子供たちが舞と楽を披露する。確か笛を吹くのは女の子1人だけでその子を芙蓉と呼ぶそうだね」
    「そうです」
    さすが、沢蕪君!と魏無羨は誉めた。
    「君は?」
    隣から藍忘機が話に加わる。
    「え?」
    「君は13の歳に参加したのか?」
    「したよ。……舞手で」
    懐かしいなあと、魏無羨は小さな干菓子を口に入れた。
    「江澄も一緒にやったんだ。舞手は全員江氏の弟子だったから練習も楽しかった」
    「その舞台を是非とも見てみたかったね、忘機」
    「……そうですね」
    江晩吟の名に反応した弟の様子に藍曦臣は少し微笑み、ふと弟である藍忘機と旅をしたことがあっただろうかと考えた。
    幼い頃は何度かあったが、宗主になってはほとんど記憶にない。一緒に動く時は公務であり、それで旅をしたつもりになっていた。
    「もし雲夢に行くとしたら忘機も行くのかい?」
    「はい、兄上」
    「ええっ!藍湛も行くの!?」
    兄の問いかけに即答した藍忘機に、魏無羨が驚きの声を上げた。そんな話は初耳である。
    「私が一緒では何か不都合が?」
    「いや、そんなことはないけど、お前、忙しいから無理だと思ってた」
    「雲深不知処には叔父上がいらっしゃる。普段の公務も緊急なものではないかぎり、大丈夫だ」
    茶を飲みながら飄々と言う藍忘機がはじめから一緒に行く気でいたことを知った魏無羨は口を尖らせた。
    「なら最初から意地悪言わないで一緒に行こうって言えばいいのに」
    ぶつぶつ言う魏無羨を無視して、藍忘機は兄を見た。どうですか?と目で訴えている。
    本心は雲夢に魏無羨を連れて行きたくないのだろうが、それを曲げてでも外に出てほしいと願う弟の気持ちが藍曦臣には痛いほどわかる。
    茶の入った杯を持ち上げ一口飲んだ藍曦臣は、
    ふぅとため息を吐いた。
    「わかったよ。雲夢の収穫祭に行こう」
    「ええっ!!沢蕪君、本当に!?」
    先程の紙人形に負けない勢いで魏無羨が飛び跳ねた。
    「ただし、江宗主にはご迷惑をかけるわけにはいかないから、騒ぎを起こさないように」
    「大丈夫です!あいつ、忙しいから!」
    忙しいから迷惑をかけてはいけないのだ、と多分藍曦臣が注意しても今の魏無羨には聞こえてないだろう。
    「よーし!それなら準備しなくちゃ!」
    「魏嬰、収穫祭は月末だ。まだ時間がある」
    「そんなことを言ってたらあっと言う間に月末になるんだぞ!沢蕪君、お邪魔しました!」
    礼もそこそこに魏無羨は寒室を出ていった。
    「お騒がせして申し訳ありません、兄上」
    藍忘機も立ち上がると藍曦臣に礼をし、足早に魏無羨の後を追いかける。
    2人が立ち去った寒室は文字通り寒く感じられ、藍曦臣に季節の移り変わりを感じさせた。
    窓の外にあったピンクの花は枯れ、今は根である蓮根が土の中に埋まり、水が冷たくなりやや動きが鈍くなった魚が鉢の中に残っている。
    「あっと言う間は本当かもしれないね」
    雲夢の秋は姑蘇の秋とは違うだろうと、遠い土地に思いを馳せながら手元の温くなった茶を飲み干した藍曦臣だった。

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