それは駅から自宅であるアパートまでの道のりを歩いている時のことだった。
久々に仕事を切り上げることができた大和はカツカツと杖を鳴らしながら、夕陽に照らされた道を進む。その足が、アパートを目前にふと止まった。
アパートの前に設置されたゴミ捨て場。そこで、四羽のカラスが何かを熱心に突いていたのだ。
生ゴミの回収は今朝のはず。大方、誰かが遅れて出して、回収し損なわれたのだろう。
そう思った大和は、これ以上ゴミが散乱することを防ぐため、その群れへと一歩、足を踏み出した。
その瞬間、カラス達が一目散に飛び立っていく。近付く人の気配を敏感にも察知したのだろう。
しかし、大和は早々に逃げていったその姿を意外に感じていた。
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