嫉妬途中まで。これ以上書かないです。自分の番が終わり、タオルで汗を拭う時にピリリと頬に痛みを感じた。どうやら少しかすり傷を負ったようだ。でもまぁ禪院先輩相手にその程度で済んだのだから良しとしたい。前回は背中を強く打ち付けたせいで、呼吸が苦しかったのを思います。あれは結構辛い。
目の前で今やり合っているのは虎杖と五条先生だ。虎杖のスピード余裕でついて行く五条先生。あそこで左足を振り上げてくるのは虎杖の癖みたいなもので。あー、やっぱり五条先生には読まれていて捕んだ足を払いながらひっくり返そうとした。ーーだけどそれで倒れておしまい、なんてならないのが虎杖だ。次々に繰り出される拳と膝。それを躱しながらも適切な隙を突く姿に、なんだかとても『先生』っぽい、なんて思ってしまった。汗ひとつ、呼吸すら乱さない姿に俺ならどう隙をつくか……いやそもそも隙なんてあるのか?
「なーに、難しい顔してんの」
「釘崎、……それ平気か?」
右手の手首に貼られた湿布に視線をやれば、左手で手を振られた。
「平気よ。ちょっと捻っただけだもの」
そう言って隣に腰を下ろした気配を感じながらも、俺の視線は真っ直ぐまだ手合わせ中のふたりへと向けた。とても楽しそうに見える。羨ましい、なんて思ってしまうが、誰に、何が羨ましいのかがわからない。
「で、付き合ってんの?」
「……誰がだ?」
突拍子のない問いかけに首を傾げた。
「アンタと五条よ」
途中の自販機で買ってきたであろうスポーツドリンクに口に運びながら、こちらも見ずに言われた言葉に驚いた。
「は?」
「この前から雰囲気違うじゃない、アンタたち」
「そ、うか?」
心当たりがない訳では無い。あの自覚した日以降のことを言っているのは分かるのだけれど、そんなにわかりやすいかと膝に顔を埋めてしまう。
「今更照れるんじゃないわよ、キッショ」
「キショいとか言うな、こっちはあの日自覚させられたんだぞ!?」
「はぁ~自覚すらしてなかったの!?ふざけんじゃないわよ。ふたり揃っていても、居なくてもアンタたち鬱陶しいのよ」
そんなにかよ、と思うも口を噤む。言い返したところで二倍どころか五倍くらいで言い返されそう。
「その様子じゃまだみたいね」
「……付き合うとかよくわかねぇし。相手の気持ちはなんとなくわかってっし、それで良くねぇか」
そういう俺に釘崎は肩を竦めてグランドの方へと顎でさし示せば、いつの間にか座り込む虎杖と、こちらをじっと見る五条先生が居た。
「相手はどう思っているのかしらね」