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    Hakuaisan(GWT)

    @Hakuaisan

    二次創作てんこ盛り野郎

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    Hakuaisan(GWT)

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    墓参り

    「KK、麻人、出かける準備して」
    リビングでくつろいでいると突然暁人が言い出した。
    「え?」
    「いいから」
    そう言うや否や玄関に向かいだす。俺も麻人もわけがわからないままついていくしかなかった。12月にも入り、気温が急速に下がっているため上着を羽織った。
    「どこにくの?」
    「おじいちゃんのところ」
    麻人が訪ねると暁人は簡潔に答えた。麻人の祖父。つまりは暁人の父。
    「墓参りか?」
    「そう、今日が命日だから」
    麻人の手を引いて家を出る。外は寒く、上着を羽織っていてもまだ寒い。
    「麻人は寒くない?」
    「だいじょうぶ」
    やはり手は冷たい。暁人と繋いだ手も冷たかった。途中で花屋に寄り仏花を買う。あるお寺に着くと墓地の中を歩きとある墓の前に着いた。墓は綺麗に手入れされており、花が添えられているが、月日が流れたのか萎れていた。その墓石には伊月家之墓と書かれていた。
    「6月は行けなかったのか?」
    「まあ・・・」
    暁人は顔をそらしながら仏花の束をばらしていく。水を入れたバケツと柄杓も用意していた。
    「父さん、母さん、久しぶり」
    水をまきながら暁人は墓に話しかける。
    「ちょっと留年しちゃったけど無事に大学に卒業できたよ。麻人も元気にしてるし、僕も元気だよ」
    話しながら慣れた手つきで掃除をしていく。掃除を終えると持ってきた花を供える。暁人が静かにしゃがみ込むと、お線香をあげ、目を瞑り手を合わせた。俺もその後ろで同じように手を合わせる。
    「ちゃんと幸せになるから・・・」
    暁人の声が震える。早くに父親を亡くし、それに続いて母親も亡くし、妹と二人だけになってしまった暁人。精神的にかなりきついだろう。暁人は立ち上がり、俺の方に振り向く。その顔はまだ辛い表情をしていた。俺は暁人の体をそっと引き寄せた。驚いたように俺を見るが抵抗せず素直に体を預けてきた。頭を撫でると我慢できなかったようで肩が震えだした。泣いているのか?そんな姿は見せたくないだろうと思い暁人の顔を自分の胸に押し付けた。暁人は声を押し殺して泣いていた。
    「ありがとう、もう大丈夫だから」
    しばらくして暁人が顔を上げたので手を放した。涙で目が赤くなっている。目も少し腫れているようだ。
    「麻人、心配させてごめんね
    麻人は暁人の手を握っていた。頭を撫でながら言う。
    「父さん、母さん、また来るね」
    それだけ言うと墓を離れていく。一瞬、麻人が立ち止まって振り返ったが、すぐに俺達のところまで駆けてきた。
    「またくるね」
    墓に向かって言うと俺達の手を握ってきた。
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