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    POIPOI 293

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    「なんだか分からないけど、呼ばれたような気がした」

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    『誘引』「何やってんのこれ」
    高校が終わって絵梨佳ちゃんと一緒にアジトにやって来たら、みんなが机に向かっていて周りには本とか書類とか散らかってた。
    「調べもの」
    「進捗は無し」
    KKさんとお兄ちゃんが口を揃える。麻人くんは床に寝っ転がってお絵かきしていて見向きもしなかった。
    「これ読んだっけ?」
    「知らんがな」
    《近畿地方の────》
    「そこはもう調べたけど」
    「まーまー」
    「今行くから」
    「これは近くないか?」
    「お前なぁ」
    「なんだとぉ?」
    KKさんと絵梨佳ちゃんのお父さんが睨み合う。相変わらず仲は悪かった。
    「かけたよ」
    麻人くんはお兄ちゃんに描いた絵を見せる。黒い何かを描いているがやっぱり気味が悪い。
    「て、つめたい」
    お兄ちゃんの手を触った麻人くん。まあ2月だしね。
    「麻里、麻人の面倒見てて」
    「え? うん」
    いきなり押し付けられた。
    ****
    「お兄ちゃんまだー?」
    「んなこと言われても」
    麻人くんを膝の上に乗せて早数十分、調べものは未だに進んでなかった。
    「そもそも何調べてるの」
    「暁人に憑いたやつ」
    その言葉を聞いて、気分が沈んた。
    「まだ、気にしてる?」
    「そりゃ、まあ」
    きっと私もそうなんだろうな。本当はもう気にしないでいたいんだけど、でもやっぱり。
    「麻里もか」
    「・・・うん」
    「あ」
    「暁人、どうした?」
    お兄ちゃんが急に声を上げた。パソコンの画面をこっちに向けると、そこにはかつてあった村の因習が載せられていた。
    「これ」
    「え?」
    「これ、なんか気になって」
    「場所は分かるか?」
    「・・・三重県の山奥のあたり」
    スマホの地図アプリをお兄ちゃんは見せる。
    「遠いな」
    「お兄ちゃん、そこに行くの?」
    「うん、まあ」
    「じゃあ俺もついて行くよ」
    「え、でも」
    「お前だけ行かせたら何調べるか分かんねーし。それに暁人を一人にさせられないからな」
    「・・・うん。分かったよ」
    お兄ちゃんは諦めたように笑った。麻人くんは不思議そうに首を傾げたけど何も言わなかった。
    ****
    「麻人大丈夫かな」
    「凛子達がいるから大丈夫だろ」
    新幹線の中でKKと二人、話をする。窓の外を眺めていると東京の街並みは見えなくなり、山が目立ってくる。
    「あいつらには懐いてるしな」
    「そうだね」
    「思うともう今年で麻人も小学生か」
    ランドセルを背負った麻人の姿を思い浮かべる。きっと可愛くなるんだろうな。そう想いを馳せていると
    「・・・あ」
    腹の虫が鳴ってしまった。KKに聞かれたかと思うと恥ずかしさのあまり赤面する。
    「駅弁食べるか」
    「うん」
    新幹線には予め駅弁を二人分頼んである。
    「KKはこれでよかったよね」
    「ああ、ありがとう」
    僕が買ったのは海老天の入った駅弁で、KKが買ったのは唐揚げ弁当とおにぎり二つだった。それぞれ蓋を開けると、KKはおにぎりにかぶりつく。それを見て俺も食べ始めた。
    「買っといて正解だったな」
    「結構距離あるから途中でお腹減るかもって思って」
    「おかげで助かるよ」
    「そう言ってくれると嬉しいな」
    2人とも弁当を食べ終わると、再び窓の外を見る。トンネルを通る度、自分の影が大きくなっていく。トンネルを抜けると、田舎の風景が広かっていた。
    「KK、もうすぐ降りるから準備して」
    「ああ」
    自分の弁当を袋に入れて荷物をまとめると、降りる準備をした。駅に着くとすでに日は暮れていて、冷たい風が体に当たる。
    「寒いね」
    「そうだな」
    吐く息が白くなるほどの寒さだった。あらかじめ予約した宿にタクシーで向かう。宿に着いてからはチェックインを済ませて、部屋に入った。
    「やっと着いたー」
    「長かったもんな」
    「とりあえずお風呂入ろう!お風呂!ここ露天風呂あるし!」
    「落ち着け」
    ****
    宿に着いて早々、暁人が風呂に入りたいと言い出した。座り続けて凝り固まった身体を解すのに丁度良いと思い、俺も入ることにする。
    「先に入ってるよ」
    暁人は露天風呂から見える景色に釘付けになっていた。俺も裸になって露天風呂に入る。少し冷えていたので湯はとても気持ちが良かった。
    「あー・・・気持ちいい」
    暁人が隣でゆったりと湯に浸かり、俺に微笑む。
    「そうだな」
    湯の心地よさに酔いしれながら、俺は暁人を見つめる。
    「どうかした?・・・っ」
    誤魔化すようにキスをする。すると顔を赤くする暁人が可愛いくて、何度もしてしまう。
    「KK、ここ外だよ」
    「誰もいないからいいだろ?」
    「・・・うん」
    まだ明るい時間帯だと言うのに、俺達は再びキスをしていた。すると俺の身体を軽く押して風呂から上がるように言ってくる。少し残念に思いながら俺も上がると、顔にタオルを押し付けられた。
    「背中流して」
    照れ隠しのつもりなのか、そっぽを向きながら暁人はそう言う。可愛いと思いつつ、タオルを受け取った。
    「痒いところはないか?」
    「大丈夫」
    背中を終えると次は腕だ。泡で汚れを落とすと暁人が気持ち良さそうにする。全ての箇所を洗い終わると泡を流してやった。
    「KKもする?」
    「俺は自分でできる」
    「でも僕の背中流したんだしさ」
    俺から強引にタオルを取り上げた暁人は、俺の背中を流していく。洗っている途中で後ろから抱きついて、身体に触れてくる。
    「なあ、暁人」
    「え?」
    惚けたように答える。その顔はいつもの暁人ではなく、別人のように艶めかしかった。
    「なんでそんなことするんだ?」
    「KKのことが好きだから」
    暁人がそう言う。俺はその言葉を聞いて顔を手で覆った。
    ****
    「ご飯おいしいね」
    「・・・そうだな」
    温泉から上がり、夕食を食べる。部屋に戻ったときには既に用意されており、暁人がそわそわしながら食べたそうにしていたので、そのまま食事にした。暁人の美味しそうに食べる姿は見ていて飽きなかった。すると急に手を止め、俺の目を見る。
    「KK、あーんして」
    「・・・恥ずかしいから嫌だ」
    そう言うとむっとした顔をする。機嫌を損ねたかと心配したがそうでもなく、再び箸を持って食べ進めた。そのときの笑顔が可愛くてたまらなかった。食事を終えると少し横になる。
    「明日か・・・」
    「怖いか?」
    「・・・うん」
    俺の横で座る暁人が弱音を吐く。
    「無理しなくていいんだ」
    「・・・ごめん。ねえKK」
    「なんだ?」
    「甘えていい?」
    「もちろんだ」
    そういうと嬉しそうにして俺に抱きついてくる。胸に頭を埋めて、猫みたいにすり寄せてきた。こんな風に甘えるのは珍しいと思いながら頭を撫でてやった。ふと顔を上げた暁人と目が合うと、どちらともなく唇を重ねる。
    「KK、好き」
    「ああ」
    そう答えると、暁人の顔は赤くなっていく。恥ずかしそうにするその姿が可愛くて仕方がない。暁人の頬に手を当てると顔を引き寄せてもう一度キスをする。最初は唇に触れるだけだったが次第に舌も絡めていった。俺の唾液を流し込む度に飲み込む音が聞こえる。口を離すと銀糸が伸びていて淫靡だった。息を整えながらお互いに見つめ合う。
    「・・・KKは僕のこと嫌いにならない?」
    不安そうにそう言う暁人を俺は抱きしめる。自分がどうなってしまうのかという不安を少しでも和らげてやりたかった。
    「嫌いになるわけないだろ」
    「・・・そっか」
    安心したように笑う暁人に、思わず胸が締め付けられた。
    「一緒に寝よ」
    布団を敷いて二人で同じ布団に入る。
    「おやすみ、KK」
    お互いの温もりを感じながら眠りに就いた。






































































    「なんでだよ」
    一人で起きた俺は、机に置かれた紙を見ていた。
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    せめて飴くらいは手元に置いとけばよかった!「ご飯? お風呂? それとも僕?」
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    「なんなんなんだよだよだよ」
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