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    倉庫です

    ☆quiet follow

    こうやって人間と・・・

    終わり

    「まさかお兄ちゃんがKKさんに助けられるなんて思わなかった」
    「私もKKが麻里ちゃんのお兄さんと親しくなるなんて思わなかったし」
    「「ね~」」
    二人で歩きながら仲良く言い合う。最近やけに兄が明るくなり何があったのかと思い問い詰めたところ、人間の男と仲良くなったと言って紹介して貰ったところ、絵梨佳ちゃんの知り合いだったことが判明して今に至る。あれだけ内向きになっていた兄があそこまで肯定感を持てるようになるなんて。
    「麻里ちゃんが人魚だったなんて知らなかった」
    「言ってなかったからね」
    「でも暁人さんはクラゲだよね」
    「それは永遠の謎。お兄ちゃんと300年近くいるのに未だにわからん」
    「・・・待って麻里ちゃんいくつ?」
    ****
    「どう?」
    「似合ってるぞ」
    洋服店でコートを試着したところをKKに見せる。似合っていると言われたのが嬉しくてその場で一回転した。
    「こういうのもいいなあ」
    「着て帰るか?」
    「せっかくだから着て行く」
    店員さんに値札を切ってもらいコートを受け取るとKKはまじまじと見ながら口を開いた。
    「暁人はなんでも似合うな」
    「言いすぎたよそれ」
    二人で歩きながら話をする。こうやって人間と付き合うとは自分でも思わなかった。KKは僕の知らないことを沢山知ってて、逆に僕はKKの知らないことを沢山知っている。
    「それで暁人」
    「うん?」
    「お前最近バイト始めてなかったか?」
    「あ、うん」
    「今度行くから日時連絡しろ」
    「・・・え?今なんて?」
    「だから、今度行くから日時連絡しろって」
    「なんで来るの!?」
    「俺がバイト先に行くのに理由がいるかよ。前々から考えてたんだぞ」
    「やめてよ怖いんだから!」
    あ、本当に恐ろしい顔をしてらっしゃる。目がガチだ。
    「なんつう顔してんだお前」
    「KKが変な事言うからじゃん」
    「好きなんだから見たいだろ普通」
    「普通じゃないし」
    「前にも言ったろ、綺麗だって」
    KKは時折ストレートに褒めてくるので怖い。
    「で、何のバイトだ?」
    「最近モデル始めた」
    「モデル?」
    KKの声色が変わる。どこか嬉しそうだった。
    「なんでまたモデルなんかに」
    「スカウトされて、いろんな服着れて楽しければいいかなって」
    「楽しいか?」
    「うん。楽しいよ。色んな服着て、色んなポーズ取って写真撮るの」
    「それもうバイトじゃなくてモデルの仕事じゃねえか」
    「あ、本当だ」
    KKに指摘されて気づいた。でもなあ。
    「まあいいか」
    「いいんだ」
    KKが僕を抱きしめて頭を撫でてくる。僕は特に抵抗せずそれを受け入れた。
    「お昼にするか、何か食べたいか?」
    「KKの食べたいものでいいよ。最近大きな獲物取ったからお腹減ってないし」
    「いや、前から思っていたがお前のその生活どうなってるんだ?」
    KKが若干引いている。でもお互い様だよね。僕もKKの生活には引いてるもん。
    「とりあえずラーメン食うか」
    「KKラーメン好きだよね」
    「そこに餃子合わせてビール飲むと旨いんだよ」
    「僕はお酒苦手だな~」
    「飲めないのか?」
    「飲めるけどフラフラしちゃって」
    「弱い方か」
    「それで前に派手にこけてさ~」
    「中身見えなかったか?」
    「大丈夫!下にパニエ穿いて誤魔化してるし」
    「堂々と言うなよ」



























































    「あの人間美味しかったな・・・」
    「ん?」
    「別に、ただの独り言」
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    recommended works

    りんご

    DONEK暁デー、初デート。K←暁のようでK→〈超えられない壁〉←暁です。
    理想のデート像を黙って実行するおじと、訳も分からず振り回されるあっきーの話。
    過去それなりに色んな話を書いてきましたが、ぶっちぎりで砂糖吐きそうな話になったと思います。けけは所々横暴だしあっきーはちょっと暴走気味です。そんな二人の初めてなんて、絶対事件になるに決まってるじゃないですか(笑)
    閻魔帳のきれはしには(1)


    待ち合わせは、やっぱり駅前かなあ
    ベタなのは分かってるよ! でも後に来る僕が気になって、その後ろ姿がどこかそわそわしてるの、きっとかわいいなって思うんだろうな


    ◆◆◆◆◆


    『KK

    今日午前11時。渋谷駅北側に集合。』


    凝り固まった肩を回しながら、ネオンが薄まりゆく都会の路地を暁人はゆったりと歩いていた。長期の仕事が終わって漸くまともな寝食にありつけると思えば、心も穏やかになる。
    こんな職業なので、どうしても一日の行動が普通のそれとは大きくずれ込む時がある。今日はそういった日で、数日掛かりの依頼を何とか終わらせたときには、すっかり空が白み始めていたのだ。

    自分の名前をした空を背にしながら、暁人は連絡のためにスリープモードにしていたスマホを起動させた。そこに表示される、送り主と簡素な一文。暁人が首をひねるのも無理はない。めったに文字でのやり取りを行わない人物から突然こんなものが来たら、誰だって困惑するだろう。自分がいない間に向こうで何かあったのかもしれない。それにしても……メッセージ? 凪いでいた心情の波が僅かに揺れて―――まあいいか、と持ち直した。暁人が暁人たるゆえんは、この微妙な状況に対しての構えがやたら大きいことである。波乱万丈な生い立ちのせいで大概のことは受け流せるようになった結果だった。
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