※付き合ってる&学院卒業済
※Y〇u Tubeのトリスタチャンネル(仮)で配信予定のバレンタイン企画「Trickstarがスイーツづくりに挑戦☆」動画の練習中@誰かの自宅orレンタルキッチンというイメージ(説明長)
「……これくらいだろうか」
じいっと見つめた先、手元の鍋の中の生クリームとチョコレートは、十分に融けあい、混じり合っているように見える。
(しかし、ここからしばらく寝かせるとなると、全体の撮影時間は案外かかりそうだな……)
「ねえねえ、ちょっと味見していい?」
「おい、こら」
ひょいと横から腕が伸びてきて、小指の先が茶色い液体を掬い上げた。
「ん! 何かとろ~ってしてていい感じだねっ」
「せめてスプーンで掬え。行儀が悪いぞ」
「そんなこと言わずにさ、ほら、ホッケ~も」
「……っ」
完全に、不意打ちだった。
柔らかいものが唇に触れたかと思うと、その隙間からぬるりとしたものがねじ込まれた。北斗の舌先になまあたたかい熱が絡みつく。
自分ではない人間の舌。そのざらついた粘膜を、はっきりと口腔に感じた。
「……なんのつもりだ」
反射的に口を抑え、それを与えた張本人を睨みつける。
「何って、味見だよ☆」
ぺろりと小さく舌を出し、美味しかったでしょ?、と問う無垢な微笑みは、つい先ほど北斗に残した口づけの後味と完全に相反していた。
「何を考えているんだ、おまえは」
「急にしたくなったんだからいいじゃん別に」
「ふざけるな」
いくら身内しかいない場所とはいえ、時と場合を考えろ。やや本気で怒りを露わにしようとした北斗に対し、スバルはむう、と拗ねたように返した。
「だってホッケ~、いっつもふわっとしたのしかしてくれないんだもん」
「は?」
言葉の意味を追求しようとして、不意に別の方向から遮られた。
「お~い、スバル、北斗。そっちはどんな調子だ?」
「あ、サリ~! こっちはいい感じだよっ。サリ~たちは?」
何も気づいていない様子の仲間からの声に応え、何事もなかったかのように、オレンジ色の髪が北斗の横を通り抜けていった。
「こっちも問題なさそうだ。これで本番で失敗したら笑えるけどな」
「うわあうわあ、いい匂いっ。大丈夫だよっ。そうなったらウッキ~が眼鏡パワーでなんとかしてくれる!」
「ええっ? 僕をなんだと思ってるの⁉」
無邪気にいつものやりとりを始める仲間たちの声を背に、何故だか先を越されてしまったような悔しさがこみ上げてくる。
初めて味わう『恋人』の舌は、甘いあまい、チョコレートの味がした。